トラフィックパターン

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トラフィックパターン

さてS字飛行や失速訓練も終え、飛行場上空まで帰ってきました。いきなり着陸しちゃう方法もあるのですが、本来はいったん周回して周りの飛行機や離陸している飛行機などを確認します。この周回を行う標準経路をトラフィックパターンといいます。飛行場を囲んで四角形の経路となっており、ふつうは左回りですが、地形上の制約などで右回りだったすることもあり。事前に確認しておく必要があります。

トラフィックパターンはプロペラ機で地上500フィート、ジェット機で1000フィート。周回経路の長さ、大きさは「どの点にいてもエンジンストップしたときに滑走路に滑り込める」ものとします。

トラフックパターンの重要性は、多数の飛行機が着陸のために飛行場に寄って来た時に、到着順で一列にパターン上に並ぶことができ、思い思いの方向から鉢合わせするという危険を避けることができることと、単機で飛んでいても周回しているうちにその日の風の状況を体感でき、着陸に大切な最終降下(ファイナル)までのスロットルやフラップのセッテイングがやりやすくなることにあります。

トラフィックパターンの四角の各辺は「アップウインドレグ、クロスウインドレグ、ダウンウインドレグ、ベースレグ、ファイナルレグ」と呼ばれており。ふつうはダウンウインドレグに45度の角度から侵入します。

いったんトラフィックパターンに侵入したら、ちゃくちゃくと着陸準備を始めます。着陸灯点灯、ダウンウインドの間に150フィートくらい降下、速力65マイル、フラップ1。スロットルは3200回転。ベースに入って200フィートくらい降り、速力60マイル、フラップ2、3000回転。ファイナルで最後の200フィート、速力は60で維持してフラップ3(最大)、2800回転。着地時点では速力は50くらい、エンジンアイドルが理想的です。でもその日の風向きなどによって実は全然違い。高度計はあまり見ず(かわりに滑走路を見ましょう)、昇降計で500フィート/分から300フィート/分を保って降りていきますが、ぽけっとしてパターン上空に1000フィート以上の高さできちゃった!という場合はスロットルを絞って800フィート/分でするする降りていくときもあります。

航空計器。上段左が昇降計、右が速度計。下段右が高度計。

スピード調整には細心の注意を払います。ぼくがホームベースにしているSDCB飛行場は、ベースからファイナルにかけてにょきにょき岡が盛り上がっており、気流を噴き上げて機体を持ち上げようとするので、つい機首を下げてスピードが上がっちゃうことがあります。フラップ下げでの許容速度である70マイルを超えないように機首を上げると、今度は機体沈下が止まってしまい滑走路から高くなりすぎてあせったりします。何度も着陸していると、ベースレグではエンジンで吊っておき、ファイナルに入ったら気流で上がる分をスロットルオフで補って降下確度(沈下率)を保つことを覚えたりします。でも慣れると、今度はそういう気流のない素直な飛行場で「ああああ沈む沈む―」なんて慌ててスロットルを入れるようになったりします。ははは。。。

あと注意すべきが風向き。南半球ブラジルの風向きは基本「東から西」、ブラジリア近辺では110度から290度(E6に向けて吹いていることが多く、ブラジリア国際空港もこの風に沿って建設されています。田舎の滑走路は地形のままに作られていることが多く、SDCB飛行場は30度―210度で、つまりいつも横風着陸です。ははは。。。

ブラジル中央高原では、季節は乾季と雨季の二つで、乾季は110度から風が吹き、雨期は290度から、となっていますが、雨期でも110度からという日も多いです。風向きが逆になればトラフィックパターンも逆になり、いつも降りている反対側の滑走路端に降りることになりますが、コヨーテのような小型機のパイロットは、十分な長さの飛行場が多いので、雨期だろうが乾季だろうがいつも慣れている110度対応で降りることが多いです。インストラクション中の練習機が周回をしているようなときは、その練習機に従って正しい風向きに対応して降ります。

吹き流し。左はほとんど無風の状態。右は15ノットくらい。

やばいのは風速6ノットくらいの微風の時で、くそまじめに風向きに対応しようとして降りてくる飛行機と、めんどいからいつもどおりでいいや、というしょうがない奴が鉢合わせし、ふんぎゃー!といがみ合いになることがあります。でもしょうがない奴のほうが悪いとは一概に言い切れないのです。

これは、飛行機の操縦・運行は「あくまで安全第一」が鉄則だからです。上記の「しょうがない奴」は、事実上微風(6ノットより下の風は無風とみなされ、この場合正規経路である110度対応で降りるのが正しい)であり、これまで何度も降りて乱気流の発生場所なども把握している経路で降りるほうが安全だ、という判断をしたということで「くそまじめな奴」よりも実は長生きすることもあるということです。

ちなみに、風向きとは逆に飛ぶというのは「カウンターウインド(Contravento)」といって、特に雨季で飛行場周辺が雨雲に覆われ、通常の経路では離陸後すぐ雲にはいっちゃうぞ!という場合にあえて逆の滑走路端に言って、視界の利く方向に安全な離陸をすることがあります、この場合は、離陸時に「Contraventoで離陸するよ」とパターンや周りの飛行機に知らせておきます。

さて、風向きも読み、周囲の飛行機と安全を確認して、いよいよファイナルレグだぞー!次回は操縦のすべてが凝縮される着陸について記載させていただきます。

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