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軽飛行機のエンジンについて

軽飛行機といっても、きょうび実機とLSAに大別され。この記事ではLSAすなわち軽量スポーツ航空機のエンジンについてです。

LSAは、大体がライカミング系の「恐竜エンジン」か、ROTAXの「創作料理エンジン」に分かれます。

恐竜系は、第二次大戦のさらに前の30年代からのクラッシックな飛行機たちに装着されたエンジンを、ほとんどそのまま現在も継承しているもの。LSAが生まれる以前の実機はほぼすべてこれで、日本のエアロスバルもライカミングのエンジンを積んでいます。

エアロスバルhttps://trafficnews.jp/post/121378
 

 

エンジンhttps://a15ff11300g.sakura.ne.jp/miniature%20car/nichimo%20fuji%20FA-200%20aerosubaru.html
 

 

航空業界というのは、最先端技術をふんだんに取り入れているようで、実はものすごく保守的でもあり。

その辺を飛行していて、あれエンジンの調子が?、というときに、車と違って路肩に駐車、なんてできない飛行機は、エンジンもともかく壊れないで回ってくれるということが最優先され。

それには、やっぱり実績のあるエンジンが。。。ということで、恐竜エンジンが今日も重宝されています。

いつぞや、ルマン24時間耐久レースでなかなか勝てない日本のメーカーチームが、血眼になってなんとかインジェクションとかかんとかシステムとか、イノベーションを盛り込んだエンジンを送り込み。でも結果は途中で故障してリタイヤとなってしまった。

ポルシェは全然リタイヤしないで最後まで逃げ切るよね?というわけで、こっそりというかポルシェのエンジンを購入してばらしたら「その古めかしさに驚いた」そうです。

要するに、なんとかインジェクションなどの、変な創作を入れないから、シンプルで壊れないエンジンになっていたのですね。。。。

飛行機、特にそれほど性能とか高いものは要求されない軽飛行機で昔ながらのコンチネンタルやライカミングが珍重されるのもこれでお分かりと思います。

一方、いつまでも古い技術のままだと、新たな時代の新たな要請にはなかなかこたえられなくなり。

ライカミングエンジンが生まれた1930年代後半では、「ハイウエイを走ることのできる高速車」としてVWかぶと虫がデビューしています。当時時速80キロというのは夢の超特急だったのですねー

ところが、2024年の今日では、速度制限が120キロ、実際はもっと速く走れるよ、という車がふつーになり。

速度を至上命題とする飛行機が、高速道路の上を飛んでいたら眼下で車がぶんぶん追い抜いていきました、というのでは困る。

というわけで、えいやーとイノベーションに舵を切ったのが「創作料理系」すなわちLSA軽飛行機です。

LSAの場合、エンジン以前に、30年代にはなかったコンポジット素材などで機体の軽量化を達成したりとか、エンジンについても高回転で滑らかに回し、減速機で適度に落としてプロペラにつないだり、半水冷式にして冷却効率を高めたりとか、エンジンの重量自体も「恐竜」に比べ減少となりました。

この結果、軽量のエンジンで軽量の機体を引っ張るので、馬力は少なくしても恐竜エンジンを積んだ実機とそん色ないか、上回る性能を持ったLSAがじゃんじゃん生まれています。

安全面はどうなの?ROTAXは、創作系ですがガソリンと潤滑油さえ切らさなければともかく回ってくれるという「百姓エンジン」で、恐竜もびっくりの耐久性を持っています。

では、なぜ恐竜系が駆逐されないのかというと、LSAは機体が軽すぎて安定性に欠け、特に着陸時にちょっと乱気流が吹くとめちゃくちゃ揺さぶられて着陸が困難であるという残念な特性があるので、ずっしりした古典的な実機(最近は「認証機」という呼び方もある)もまだまだ人気なのです。

ぼくは貧乏人で実機を維持する(要すれば税金を払う)お金がないのでLSAに乗っています。

そんなLSAのエンジンをちょっと覗いてみると。。。

まず、こんな飛行機に乗っています。

 

 

そのエンジンは、こんな感じ

巨大なラジエーター。ぼくの飛行機はアンティークなのでこんなですが、きょうびのLSAはぐんと小さなラジエターになっています。
 

 

エンジンヘッド。プラグの上に、冷却水の取り入れ管がついているのがわかります。オレンジのは潤滑油の配管にまかれた遮熱シートです。
 

 

 

プロペラシャフトに接続した減速機。ライカミングとかは減速機なしで直接プロペラ軸に接続されています。
 

 

減速機と作動原理。赤い色の部品が摩耗してやばいことになった記事についてはこちら→プロペラシャフト
 

 

オイルクーラー。ここから先は恐竜系も創作系も似たような部品になります。
 

燃料系。まずはガスコレイターから

この部品は、飛行機の最も下になる部分に設置され、重力でガソリンと分離されて落ちてくる異物や水をキャッチし、排出弁で機外に放出するもの。排出弁すなわちドレン弁は、毎回飛行の前に開いて異物を吐き出させます。
 

 

ガスコレイターを通過したガソリンは2つのガソリンポンプを経由してエンジンへ。写真の四角いのは電気ポンプであり、離陸上昇時の高負荷の場面でONにして、水平飛行に移ったらOFFにします。
 

機械式ポンプはこちら。電気ポンプと違い、エンジンが回っている限り常に作動します。
 

 

電気ポンプを経由して上がってきたガソリンはT字管で分岐されて、左右のキャブレターや燃圧センサー、余剰燃料のリターンの配管に向かいます。
 

 

点火系のCDIモジュール。恐竜はもっと古典期なコイルかも?
 

 

キャブレター。ROTAXはツインキャブです。恐竜はエンジン下部に一つ装着がスタンダード。
 

 

上の図の➁が左右のキャブレターです
 

 

エンジンとは直接関係ないけれど、ブレーキフルードのタンク。実態は自動車用のパワステオイルを流用しています。ブレーキシューの摩耗とともに液面低下しており、継ぎ足しが必要です。
 

 

軽飛行機購入後数年(実は7年)、ガソリンの配管を交換しました
 

 

ではでは

 

Posted by 猫機長
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軽飛行機のメンテあれこれ

「こよーて」という小さな飛行機に乗っています。

 

エンジンの整備とかは専門のエキスパートにやってもらっていますが、日常の点検整備はオーナーがやる必要があり。そんなちょっとしたメンテについて記載してみます。

◎ラジエターの水位確認

半液冷すなわちエンジンヘッドが液冷で、シリンダーが空冷のROTAXエンジン。液冷の部分がある以上ラジエターもあり、クーラント水の確認が必要です。

エンジンカウル上部にある点検口を開き。。。

 

 

ラジエターキャップを外します。

 

 

写真の給水口右側に、リターン用の穴が開いているのが見えるでしょうか?(下の写真では赤丸の部分)

 

 

普段はキャップからゴムパッキンがコイルばねで押さえつけるようになっているのですが、ラジエター温度が上昇して、危うしラジエタ―!爆発か!のちょっと前に、水蒸気というか、熱くなったクーラントの圧力でばねが押し上げられ、リターン用の穴から蒸気を逃す仕掛けになっています。要すれば圧力鍋の安全弁みたいなものである。

キャップを裏返したところ。

 

 

本当は定期的にチェックすることになっているのですが、飛行するごとにキャップを開け閉めなってしているとパッキンもバネも傷んでしまうので、計器盤の水温計、水圧計を常時チェックし、夏の暑くなってきたときには確認頻度を増やすようにしています。

逆に頻度が低すぎると、今度はリターンから蒸発していくクーラントの量が補充より多くなってしまい、やばい気泡発生などの原因になるので、頻度は多すぎず少なすぎず、計器と外気温度とのにらめっこで、なかなか神経を使います。

アンティークの旧機なので、ラジエターも巨大です
 

◎風防の洗浄

車に比べると、意外に汚れの少ない軽飛行機の風防ですが、やはりちょくちょく洗う必要があり。

しかし、車のようなガラスではなく、アクリル樹脂(プレキシグラス)なので、ちょっとでも雑な洗い方をするとたちまちすりガラス状になってしまい。

鬼教官伝授の洗い方は、

まずは水で流す。でもエンジンとかに入らないよう、静かに少しづつ。。。と神経を使います。
十分に埃が流れたら、自動車用のワックスをかける。
ここが秘伝ですが、水洗いにしろ、ワックスがけにしろ、「手でする」。布などは厳禁。
いったんワックスがけしたら、今度は「脱脂綿」でふき取ります。鬼教官は「これも手でふき取れ」と言っていますが、ぼくは綿をつかっています。ははは

 

 

いやいや飛行機ってセンシブルですねえ。洗うのも水だけで、洗剤は使いません。万一のアクリル樹脂の変色やひび割れを防止するためです。ワックスも「Grand Prix」だけで、他のは使いません。

日本でも売っていれば、広告料を取れたのに。。。。無理か。
 

 

◎タイヤと車輪

ホームセンターで売っている中国製のコンプレッサーを使って空気圧を調整

 

 

あと、ホイールのねじがちゃんと締まっているか確認。

 

 

これを忘れていると、ねじが外れて飛んで行っちゃうことあり。いちおうスペアのねじを複数持っています。

意外と小さなねじ。
 

 

◎ブレーキ関連

軽飛行機のブレーキはペダル操作で作動します。

 

 

このペダルが、なかなか妙味があり。

ペダルの上端を踏み込むとブレーキが利き。下の方を踏むと方向舵と前輪が動くようになっています。

赤丸を踏むとブレーキが作動。緑が方向舵と前輪のステアリング。
ブレーキを踏むと、青丸のアクチュエーターからブレーキオイルが押し出されて、メインギアのブレーキシューをディスクに押し付けるようになっています。

 

 

アクチュエーターがよくわかる一枚。
 

ここでは、ブレーキオイルが漏れたりしていないかを目視します。

ちなみに、左右のペダルでブレーキは別々に作動します。ぼくののっている軽飛行機は前輪で操舵できますが、操舵できないのもあり、そういう場合は左右のブレーキ加減で地上の旋回を行います。

ペダルとつながっておらず、単に向きが変わるようになっている形式の前輪の例。

最新の飛行機はこうした形式にして重量軽減を狙ったものが多いです。

 

 

◎翼内点検

飛行機の翼には点検口があり。

 

 

ここを開けて翼内における骨組みや張線(ワイヤなど)、補助翼のロッドなどなどに問題がないか確認します。

きょうびスマホがあるので、カメラを穴からくぐらせてかしゃかしゃ撮影でき。助かっています。

というわけで、同じような写真が続きますがご参考まで。

 

他にも、以下書こうかと持ったのですが、ここまでで写真が多数でページ数が多すぎになっちゃったので、別記事にします。

◎ガソリン給油

◎羽布の確認

◎オイルレベル

 

ではでは

Posted by 猫機長
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フォワードスリップの妙味

地上を離れて空気の中を飛んでいる飛行機。風のかげんとかで、往々にしてまっすぐには飛べず、横滑りしたりしています。

というか、予定進路に向けてまっすぐ飛ぶためには、横から斜めからの風に対応して機首をセットしなければならず。どうしても事実上横滑り状態で飛ぶというのが多かったりします。

 

 

上の画像は、道路なりにまっすぐ飛んでいきたいが、左から横風がある時の例です。機首を左に向けて、まっすぐですが横滑りして飛んでいきます。あれ?

 

これを着陸経路でやると「クラブ」着陸になります。

着陸の時は、機首を風上にめぐらす代わりに、「ウイングロー」といって、風上の翼を下に傾けて、風の方にスリップという方法もあります。水平飛行の時はカニ歩きというかカニ飛び?「クラブ」がふつうです。

左がクラブ。右がウイングロー
 

 

スリップという言葉が出てきました。

3舵のつり合いを重視する飛行機操縦では、スリップはスキッドと共に本来は避けるべき行為であり。でも、旋回中はついラダーとスティックのつり合いが崩れがちで、ターンコーディネーターを見ながら、おっとっと!とつり合いを取っています。

赤い矢印がTurn Coordinator。操縦かんの左右にある青い矢印がラダーペダル
 

 

要すれば、ターンコーディネーターの黒い玉ころが常に指示窓の真ん中に位置するように操縦しています。

旋回におけるスキッドはラダーを効かせすぎたときにおこり。逆だとスリップを起こします。

https://flying-gift.shop/2023/09/24/%e3%82%b9%e3%83%aa%e3%83%83%e3%83%97%e5%a4%96%e6%bb%91%e3%82%8a%e3%82%88%e3%82%8a%e3%82%b9%e3%82%ad%e3%83%83%e3%83%89%e5%86%85%e6%bb%91%e3%82%8a%e3%81%ae%e6%96%b9%e3%81%8c%e5%8d%b1%e9%99%ba/
 

 

特にスキッドしながらの旋回では、翼端失速からのきりもみとかに入りやすいらしい。じゃあスリップならいいのというとそうでもなく、皆さんが操縦するときは、かっこよく45度旋回だ!なんてやろうとせずに、低傾斜でも手足の調子がとれたきれいな旋回を目指しましょう。

要すれば、スキッドにしろスリップにしろ、せっかくの揚力を奪い、飛行機を地面に落っことそうとする作用を生むということである。

ところが、場合によっては、早く落っこちなきゃ!という状況も生じ。

本当に落っこちたら大変ですが、落っこちるくらい急に降下する必要が生じることもあるということです。

戦闘機とかではないので、いっさんに急降下だ!なんてのはやらないし、やろうとすると空中分解です。といって、もう目の前が滑走路なのに、ぽけっとしていてすごく高い高度のまま来ちゃった!というときもあり。

ぽけっとしていなくても、初めて来る滑走路などは、事前に航空チャートで勉強し、かつGPSで確認していてもなかなか見つけることができず。目視できた時は真上だった、ということがよくあるのです。

そんなとき、のこのこのんびりの低速度のまま、ぎゅーんと一気に高度を落とす技術があるのです。

その名も「フォワードスリップ」

要すれば前進してスリップすることです。なんて小学生みたいな説明ではなく、横滑りによる降下を活用した高度処理です。

いよいよ小学生か?

パイロットの知能なんてみんな小学生レベルですからねえ。博士号を持つパロットもいますが。

さて、ぽけっと高度5000フィートで飛んでいたあなたは、標高3280フィートのとある滑走路直上まで、気づかずに飛んできてしまいました。

本当だったら4000フィートで降下開始したかったのですが、もう真上ですからねー

しゃあねえな、とまずはスロットルを絞り込んで、ほとんどアイドルくらいに落とし。

それから、ぎゅん、と操縦かんを左に倒し、同時に右ラダーをぐっと踏み込みます。

こうすると、機首がぐっと右に向き、機体はぎゅんと左翼を下にしてかしぎ。

ひゅるひゅるひゅるひゅる、と降下率10から15くらいで落っこちていきます。

昇降計。ふつーは降下率3から5くらいで降りていきます。
 

 

あさってを向いた機首(機体)と翼が作る90度の角度のちょうど真ん中つまり機体(翼)と45度くらいの軸線に滑走路がくるように調整します。

そうすると、いいぐあいに滑走路が迫ってくるので、滑走路端ちょっと前くらいで、ようそろー!と手足を戻します。

あとはフツーに着陸。

フォワードスリップは、わざと手足の調和をくずして、本来やってはいけない操作をあえて行うみたいなところがあり、免許取り立てのうちはなかなか怖くて。。。。ですが、なれると、横滑りしながら落りていくのが楽しくなり、わざと高めの高度で滑走路に接近とかして遊ぶようになります。

ただし、要注意!

この操作は、一種失速の一歩手前であり(なんてどんな飛行状態でもそうですけど)。以下、気をつけましょう

その1:機首は下向きに。機首上げでやると一気に失速するぞ!人工水平儀で、水平線より機首が下がっていることを確認しながら降りていけば安心。

その2:スロットルは閉じましょう。アイドルまでいかないでもいいけれど、つい手足の操作に気が行って、高回転のままでマニューバ開始してしまう傾向あり。こうするとスピードが高くなりすぎて機体に係るストレス(風圧)もやばくなるので、まずはスロットルを抜いて、通常の着陸降下速度からマニューバの速度域に収めるようにしましょう。

パイパーカブのフォワードスリップ


 

 

ところで、横滑り、というと「敵機から逃れるためのマニューバ」と思いつくマニアの人もいると思います。

「ジェネアビの神」高橋淳さんという人がいますが、戦中は爆撃機(一式陸攻)の操縦士で、尾部機銃手と連携して敵機を避けたとのことです。

敵戦闘機が後ろに迫り、機銃掃射だ!くるぞ!というときに機銃手がブザーのボタンを押すと、そのブザーを聞いた高橋さんはすかさず横滑りで機体をスライドさせて避けた、みたいな記載が「淳さんのおおぞら人生、俺流」という本に書いてありました。

似たような記載はいろいろなところで散見されますが、これまで「スライド」という部分に違和感を感じていました。

というのも、確かに「横滑り」ですが、実態上機首が横に旋回するだけで飛行機自体の進行方向は変わらないんじゃなかったっけ?という素朴な疑問があったのです。

敵機側から見れば、気銃弾は機首の軸線上に飛んでいきます。つまり撃たれる側がいくら横滑りしても、敵機と同じ軸線上を横滑りしていくだけなので、かえって被弾面積が大きくなるだけじゃね、と危惧するのです。

単なる横滑りだと、進行方向の変化は生じない。①から➁の時点で横滑りしても、③のとおり同じ軸線上にいるので、同軸線上の射撃を受けた場合避けることができない。
 

 

この疑問を解消するのに重要なようつべ動画を発見しました。みなさんご存じ343空が九州だっけ?でグラマンやコルセアを迎え撃った史実を忠実に再現したものですが、この中で被弾により継戦不能になった紫電改が滑走路に降りていくところを敵機に食いつかれ。あわや撃墜!の一瞬に、紫電改は見事な横滑りで敵弾をかわしたのですが、ここでは敵機と同じ軸線上ながら、横滑りによる一瞬の降下で敵弾を上方にそらしています。

「うまいもんだ」 15:00からご覧ください https://www.youtube.com/watch?v=cmE6ofDaRBM&t=130s
 

 

つまり、横滑りですが、敵機から見たスライドは上下方向だったということなのか?

一方、敵艦からの射撃を横滑りで「スライド」して避けたとかもあり、ほぼ水面近くで高度は下げられないところ。

急激な横滑りをやれば、敵弾を避けられるくらい横方向へ進路そのものの変動も生じたのか?

「零戦の操縦(青山智樹・こがしゅうと、ISBN978-4-7572-1734-8」という本では、下の図みたいに解説されています。

 

マニアのみなさんでこの辺分かる人がいたら教えてください。

 

いずれにしろ、空戦における横滑りは「体がちぎれるような強烈な横Gがかかる、とても危険な操縦法です(出典:永遠のパイロット高橋淳さん | ペダル踏み間違い事故防止)」だそうで、ぼくがやっているフォワードスリップなんて「ネコのあくび」、横滑りにも何もなっていないよ、ということなのかもしれません。

機銃をぶっ放して人殺しをしなくて済む世の中になり、ほっとしています。と書きましたが、ウクライナでは人殺ししまくりなのですよね。ウクライナへの侵略が一日も早く終わることを祈っています。

ではでは

 

Posted by 猫機長
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ハンプ越えのお話

今回は、基本以下のリンクからの情報をもとに、いろいろなソースからの情報を加えて記載しています。

http://www.peoplechina.com.cn/maindoc/html/200507/zhuanwen40.htm

https://www.szkganz.seesaa.net/article/431864155.html

画像は特に出典の明記していないもの(というかほとんど)はこちらからお借りしました。

https://hk.aboluowang.com/2015/0531/564212.html

 

 

1942年、日本軍はビルマを占領し、援蒋ルートすなわちビルマ公路が封鎖され。米英物資援助の道を文字通り閉ざされた中国は、ついに日本に降伏か?の瀬戸際に。

日本人と中国人が殺しあうことで大儲けしていたアメリカ等は、それじゃおいしくないねえ。何とか戦争を継続させよう、と画策し。

でも、インドやビルマを通じた中国への補給は、ヒマラヤ山脈や砂漠、ジャングルなどありとあらゆる障害の中を何とか通れるよう、ビルマ公路を整備していたのに、ジャップによって封鎖されてしまった以上は、空を飛んで持っていくしかないじゃん、ははは、なんてあきらめかけたところで、あれそういえば輸送機っていうのがあるよね、と思い至り。

2025年の現在こそ、世界中でジェット旅客機が飛び回っていますが、当時はまだまだ馬車や牛車の時代であり(冗談ではなく、零戦は工場での組み立てが終わったら、牛車、あるいはペルシュロン馬車で、もよりの空港まで運んでいた)。航空輸送なんて夢のまた夢、だったのです。

しかし、アメリカではDC3の登場で大量航空輸送の先駆けみたいなのは生まれれ始めており。

東洋人たちの殺し合いを継続させるための物資輸送で、アメリカ人や中国人の若者をモルモットにして、大量航空輸送の実験をしてみようということになった。

こうして「ハンプ越え」が生まれました。ハンプというのはラクダのこぶのことであり、中国では「駝峰航線」と言っています。

 

 

この航空路は全長800キロ余り。当初は「北線」と「南線」がありましたが、日本軍の侵攻にともない北線のみとなりました。ディンジャン―プータオ(ビルマ)―雲竜(雲南省大理)―雲南駅(大理州祥雲県)―昆明と結び、天気によっては、ディンジャンからプータオ、麗江(雲南省)を経て昆明を結ぶときもあった。

フライトの一例としてはこういう記録があり

「ブラマプトラ渓谷の谷底はチャブアで海抜90フィート(27メートル)にある。この標高から、渓谷を囲む山壁は急速に標高10,000フィート(3,000メートル)以上まで上昇する。谷から東へ飛行したパイロットは、まずパトカイ山脈を越え、次に東側を標高14,000フィート(4,300メートル)の尾根、クモン山脈で区切られたチンドウィン川上流域を通過した。その後、西イラワジ川、東イラワジ川、サルウィン川、メコン川の渓谷に隔てられた標高14,000~16,000フィート(4,300~4,900メートル)の尾根を次々と越えた。この雄大な山々全体と、それを横切る航空路にその名を与えた主要な「こぶ」は、サルウィン川とメコン川の間にある標高15,000フィート(4,600メートル)にも及ぶサンツン山脈である。メコン川の東側では地形は明らかに緩やかになり、昆明飛行場(標高6,200フィート(1,900メートル))に近づくにつれて標高差も緩やかになる。」

ハンプ越えに使用された中国航空公司の輸送機と従業員
 

 

第2次大戦後に中華民国から共産政権へ移転され、五星紅旗のあるC47。https://www.jetphotos.com/photo/8787305
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E8%88%AA%E7%A9%BA%E9%9B%86%E5%9B%A3
 

 

距離的に言えば、東京から京都へ行って帰ってくるくらいで、それほど遠いというわけでもないのですが、「ハンプ」を構成する山脈がそびえたつ壁となって航路を阻み。1943年12月1日から1945年8月31日の間に東行きに156,977回飛行し(つまりに西行きにも同じ回数飛行した)、この間594機の航空機が墜落などで喪失、乗員乗客合わせて1,314人が死亡した。さらに81機の航空機、345人の乗組員が行方不明となった。

1945年7月31日に残存していた飛行機の数が640機とのことですから、ほとんど半減に近い損害じゃね?正確な統計は得られていないそうですが、想像を絶する危険な路線であったことは議論の余地がないと思います。

命からがら昆明に到着したC46
 

 

「らくだのこぶ」なんて一見のどかですが、ヒマラヤ山脈の峰々は、6,000mを超えるものが多数あり、最も高い地点では8,000mに迫るものもあった。このため、輸送機は「山岳地帯を越えるのに十分な高度に到達できず、迷路のようなヒマラヤの峠を通る非常に危険なルートを余儀なくされた」。

気象上も本来輸送機がのこのこ入っていくような場所ではなく。

「ルートは、ヒマラヤ山脈の存在によってかき混ぜられ、混ざり合った3つのユーラシア気団の真ん中に位置していた。南のインド洋からの湿った暖かい空気が高気圧を生み出して北に吹き荒れ、一方でシベリアからの冷たい乾燥した空気は南下した。これらの低気圧と高気圧は極端で、猛烈な風を生み出した。その風が世界最高峰の山脈という動かぬ塊にぶつかると、驚くべきスピードで上昇し、その後冷えてから恐ろしいドラフトとなって下降し、飛行機を驚異的な降下率で地上へと投げ飛ばした。雲塊内の乱気流は激しく、パイロットは突風でひっくり返されたと報告したが、行方不明になったために何も報告できなかったパイロットも多かった。」

夜間飛行に備えるC46
 

 

いろいろな輸送機が投入されましたが、C47(DC3)はもともと貨物機というより旅客機であり、重い貨物を載せたら床が抜けちゃう、みたいなのがあったため、主力として一回り大きなC46(貨物搭載量3.5トン。C47は1.5トン)が使用されました。

といっても、理想とは程遠く。「頻繁に機械的な故障に見舞われた(燃料漏れが翼付け根に溜まって爆発の危険となる傾向があった)。そのため「ダンボ」や「配管工の悪夢」、「空飛ぶ棺桶」といった不名誉なあだ名が付けられた。運用開始から5ヶ月で、C-46の20%が墜落した。1943年秋までスペアパーツが不足し、最初に送られた68機のC-46のうち26機が使用不能になった。」

「作業員たちは、1頭の象が12人以上の作業員が担う石油ドラム缶の運搬に相当することを発見した。」
 

 

とあり。B24 ベースのC87はデイビス翼によって「向かい風や横風の影響を大幅に軽減できる速度、ほとんどの気象前線を乗り越えられる実用上昇限度、そして乗組員が順風を追いかける「圧力前線」パターンで飛行できる航続距離など」はあったものの「4発エンジンにもかかわらず上昇が悪く、悪天候での飛行には不十分で、山岳地帯での軽度の着氷に遭遇しただけでも制御不能に陥る傾向があった。」そしてC54(DC4)は高空性能が足りず、輸送の主力にはなれなかったらしい。

荒れ狂う山岳航路でも、晴れてかつ気流の穏やかな日もあったらしい。

「晴れた日は、墜落した航空機の破片の反射する光に沿って飛行できるほどだったという。パイロットたちは戦友の航空機の残骸が散っている山谷を「アルミの谷」と呼んだ。このように非常に険しい路線だったので「駝峰航線」は「死亡航線」とも称された。」

「死亡航線」を生き延びた中国パイロット。陳文寛氏
 

 

そんな決死の輸送で墜落しても、「1,200人の乗組員が救助されるか、自力で基地まで歩いて帰還」したというからおどろき。専門の救助部隊も結成され、「救助活動のために2機のC-47と数機のL-5連絡機が割り当てられた。墜落現場にパラシュート降下して負傷した乗組員を救助するボランティアの衛生兵を募集」という記載もあり、人命救助にどこまで役立ったかはともかくこうした体制がとられたのは特筆すべきと考えます。

ビルマ公路での輸送量が1か月あたり1万トンとの記録があり。1939年から1942年までの3年で36万トンとなります。ハンプ越えでは1942年から1945年の3年間で65万トンという驚異的な数値を達成しました。

ところで。

この投稿の情報収集をしていた時に、とある国際郵便の写真が出てきました。

出典:「― GANさんの日本郵便史リサーチ ―」
 

なんと1943年、中国からアメリカ(成都-重慶-カルカッタ-カイロ-ラゴス(ナイジェリア)-ブラジル-トリニダード-マイアミ)へあてた手紙なのである。

重慶からカルカッタまではハンプ越えルートを経由したらしい。なんとか墜落せずに宛先に届いたという、奇跡の一枚ですねー

どんな内容の手紙だったのだろう。

「崎陽軒のシュウマイが高くなりました。いつか”でづにーらんど”というところに行ってみたいです」なんて書いてあったのかもしれませんね。

中華民国空軍のC46 https://www.airhistory.net/photo/586048/478627
 

蛇足です。C46は戦後日本でも使用されました


 

 

ではでは

Posted by 猫機長
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F1戦闘機に見る日本の人権レベル

こないだようつべでなかなか興味深い動画を見ました

 

 

見ていて、いかにも日本の国の現状を象徴する内容だなあ、とちょっと残念だったので、ここで掲載しておきます。

F1というのは、支援戦闘機というカテゴリーに入る超音速ジェット戦闘機です。

という一行が、すでにこの投稿のコアを語っています。

まず、支援戦闘機ってなに?

きょうびの言葉でいえば、攻撃機、戦闘爆撃機になります。でも、この飛行機が作られた1977年だったかでは、まだまだ国民の軍隊アレルギーが強く。

この当時は、中国だの北朝鮮だのはそれほど強圧的ではなかったのですが、国民自体が「軍隊なんて許さん」という鉄の意志を持っており。すなわち空軍ではない航空自衛隊の、攻撃機や爆撃機ではない、支援のための飛行機という名称になったのでした。

海上自衛隊で軍艦といわず護衛艦、陸自で歩兵や砲兵といわずに普通科、特科というのも同じ理由です。ぼくは母が空襲を逃げまどい、とにかく戦争なんて嫌だ!と実感を持って語っているという世代なので、こうした認識はとても大切だと思っています。

自衛隊の前身、警察予備隊のバッジ。鷹ではなく、鳩です。
https://auctions.afimg.jp/s806702122/ya/image/s806702122.2.jpg
 

 

ただの言いかえではなくて、北朝鮮や中国、ロシアが攻めてこないための自衛隊(軍隊ではない)。そしてそのための普通科連隊や特科連隊だ!という概念は、日本人が戦争で悲惨な体験をしたうえでの重要な学びであり、継続維持すべきものと考えています。

一方、1970年代で、すでに国産超音速戦闘機を作れる技術力を日本は持っていたわけで。この辺は素直に賞賛すべきと理解。

さて、上記の2点だけだったら、日本もすごいね!という幸せなエンドになるのですが、このブログの読者の皆様はすでにご存じの通り、ここから怪しい展開になっていくのでした。

念のため、ぼくは日本や日本人をおちょくる気持ちは全くありません。でも、海外在住の移住者として、やばいぞ日本人!このままじゃまた戦前に逆戻りだぞ!という危惧について記載させていただきます。

さて。

この動画において、F1戦闘機の特色について述べられていますが、もとはT2練習機からの派生であり。T2超音速練習機という優秀な機体ではあるのですが、やはりいろいろな制約も生まざるを得ず。

F1戦闘機そっくりのT2練習機 https://hs-tamtam.co.jp/product/detail/349347/
 

 

その最大なのがパワー不足で、「アフターバーナーを焚いても加速が出なかった、アフターバーナー焚いているのに気が付かなかった」というのがあり。F4とか当時の第一線の戦闘機に比べて推力が半分だったといいますから、対地攻撃とかはともかく、ミグ戦闘機に襲われたら相当心もとなかったものと理解します。

動画では、この辺「そこは自衛隊パイロットの腕の見せどころだぜ(8:12)」とコメントしていますが、はやくも戦時中の精神主義を感じてしまうのは私だけでしょうか。

非力なエンジンで性能を無理やり引き出そうとしたので、空気抵抗の少ない小さな翼になってしまい。燃料が入れられずに航続距離がはてな?(増槽を付けたら超音速性能がだいなし)になったとか、またこの動画では語られていない未確認情報ですが、はっきり言ってF1は安定性に欠けた、操縦のやばい飛行機だったといううわさも聞いています。

F1戦闘機の操縦席後のぽっこり突き出た部分には、慣性航法装置、レーダー警戒装置、管制計算機、オートパイロットが搭載されていた。
https://warbirdperformance.livedoor.blog/archives/13542062.html
 

 

その装備も世界最高峰のソ連軍を相手にするにはちょっと頼りなく。

13:42あたりか、無誘導爆弾をまるで誘導しているかのように的中させる射撃管制装置と、そのための神のような操縦を行う自衛隊パイロットが賞賛されていますが、でもそのころアメリカでは別に神でも何でもないふつーのパイロットがテキトーに発射ボタンを押せば自分から標的に命中してくれる誘導弾が生まれていたのですよね。。。。

11:25あたりでも、アメリカの新鋭F16二機対F1六機、つまり1対3の非対称戦でもF16が優勢なのを、自衛隊が工夫して勝つという場面がありますが、勝つ理由の一つに、米軍パイロットの飛行時間200時間に対し自衛隊は2000時間だった、とあり。

これって、太平洋戦争初期に日本の大ベテランのゼロ戦乗りが新米の乗っている米軍機をばたばた落としたのと同じなのでは?

アメリカが飛行時間の少ないパイロットを無数に展開し、機体の性能向上で勝っているときに、自衛隊はパイロットの練度に頼っているとしたら、熟練パイロットが払底したのちに起きる悲劇について考えていないのでしょうか。

自衛隊の稼働期間はせいぜい2週間で、その先は米軍に肩代わりしてもらう、という想定はわかりますが、ウクライナなんて2年近く続いていますよね。

要すれば、日本は「マリアナの七面鳥撃ち」を忘れてしまったのでしょうか。

*七面鳥撃ちについての説明はこちら→「ジープ空母」

日本パイロットの墓場、マリアナ
https://www.travel.co.jp/guide/matome/815/
 

 

労働者の職人芸に頼るのは、「自衛隊のパイロットはすごい(14:00)」というコメントでも強調されています。

結局、「装備に劣る部分は人材側の努力で補う」そして「補って余りある熟練自衛隊パイロットを称賛する」というストーリーになっていて、見る側も一緒になって熱狂していることがうかがえます。

用兵者(国家指導層、軍上層)が無能で、勝てない敵に「日本人は強いから」とむりやり戦争を仕掛けた体質が残ってしまっているのではないでしょうか。

日本人が世界を驚かす職人芸を発揮しているとき、その職人芸は何を目標として発揮されているのでしょうか。この動画の日本人パイロットたちは確かに超人的な能力を持っていますが、それがどこまで国防に役に立つのでしょうか。F16をやっつけるより「こんな飛行機にはパイロットは乗せられない」そこで「パイロットを乗せられる飛行機はどんな」あるいは「ドローンにすればパイロットなんていらないじゃん(おっとドローンの操作を行う人は必要ですね)」というように、本来の目的に向かった思考を持つ必要があると理解します。

もちろん、訓練は重要ですが、日本人はその点はもう120点なので、それより訓練の限界はここだから、限界を補うためのその先はどうするということをパイロット(労働者)に押し付けないで指導層がイノベーションしていく必要があるといいたいのです。

これまでエアロスバル、YS11など、機体個体の性能や特色について書いてきたのですが、今回は機体そのものより、それを使う人側の見識、常識についてのお話になってしまいました。

この記事を読んで、そうかすごい性能を持った戦闘機も、超人的なパイロットも実は必要なくて、そもそも戦争なんてしなくてもよいように、戦う前からしゅーきんぺーの野郎や黒電話頭の野郎を抑え込むことのほうが重要だな、と思い至っていただけた人がいればと思っています。

日本は、この抑え込みをこれまでみごと達成してきたじゃないですか。

日米安保条約によって、吉田首相の時代から、見事「他人のふんどしで相撲を取る」体制の確立に成功した日本は、トランプの野郎がどういおうが、日本の防衛のためにアメリカ人の血を流すというとても都合のいい条約をこれからも強化していきましょう。

でも、もっと重要なのが、中国との間のように、いい意味で腐れ縁になることである。インバウンドで中国人が殺到し、わあわあがあがあと日本の観光地が豚小屋になるのはいやだ!という気持ちはわかりますが、こうした交流(商売)を強化して日本、中国ともに戦争なんて仕掛けたら結局自分が損する、という状況にもっていくのが大切と思います。

戦争以外の金もうけのほうが儲かるよ、という関係を築きましょう。
https://www.nanmuxuan.com/zh-hk/classic/fasdfccatyn.html
 

 

日本に軍隊はいらないのか?

いらないといいたいのですが。。。。ウクライナ以後、まるで19世紀もびっくりの低能な侵略戦争が現実になったという状況をかんがみれば。。。。

ただ、自衛隊は、ぜったいに旧軍になってはなりません。そして、実戦経験のない組織、かつ、社会から見捨てられたどうしようもないクソガキをだまして営内に連れ込み、その性根をたたきなおして一人前の男にする組織であり続けることを願っています。

*最後の一文は、ぼくが昭和の屑野郎だから書きました。令和では、愚連隊やチンピラはもういない、意識の高い若者の国になったようですね。

ははは

ではでは

 

 

 

Posted by 猫機長
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F6Fはなぜ駄作にされたか

駄作シリーズその2。その1はこちら→名機の条件:零戦はなぜ駄作になったか(暗号通貨女子さん、リンクありがとうございます)

 

以前、F6FとP47という2つの飛行機についてちょっとだけ書きました。

とても興味深いものがあったので、あらためて書いてます。

両方とも、第2次大戦の後半で大活躍したアメリカの戦闘機です。

F6F(左)とP47(右)https://www.youtube.com/watch?v=Ydf0-QadMlY
 

そして、両方とも「ライトサイクロンR2800」という、これ以上ない高性能エンジンを装備していました。

でも、類似性はこのへんで終わってしまい。

P47が、だれからも称賛され、P51などと比肩して世界一の座を争った(特にパイロットからは抜群にP47のウケがよかったらしい)のに比べて、F6Fとなると、なにそれおいしいの?と、そもそも誰も知らないか、知っているマニアから見ても「P47と同じエンジンなのにどうしようもない駄作機」という哀れな烙印を押されてしまっているのでした。

誰がF6Fをそうさせたか?

「真相はこうだ」

まず、P47を見てみます。

源泉は、P35セバスキーというスピード競技機。

P35
Williams Bros. 1/32 Seversky P-35/SEV S-2 | Large Scale Planes
 

 

「未来の飛行機はとにかくスピードだ!」と、エアレースで輝かしい成績を残し。スピード機のくせに、ギアは半分くらいしか引っ込まないとか、まるで努力して空気抵抗を増やしているようなスタイルなのですが、当時は、どうがんばっても構造的にどん亀にならざるを得ない複葉機が主体の時代であり。単葉でキャノピーにすっぽり覆いがかかった未来的なスタイルを見て、米軍も手ごたえを感じたらしい。

もうちょっとスマートなP43ランサーを経て、順調にP47に発展しました。

この間、P35が太平洋で零戦にけちょんけちょんにやられたりしていたのですが、アメリカは、そんなことよりもっと戦局を左右する重要なことに気が付いてしまったのであった。

それは

◎戦闘機を何百機落とされようがそれで戦争が終わるわけではない。

◎英国の戦いにおいて、前線よりはるか後方にある敵のライフライン(工業地帯)をヒットする戦略爆撃が実現可能であることが明らかになった。

◎といって、丸腰の爆撃機だけでは敵戦闘機の餌食になってしまう。ドイツの英国爆撃が成功しなかったのは、英国の戦闘機がドイツの爆撃機をやっつけることができたからである。

 

要すれば「ともかく敵の主要産業地帯に爆弾の雨を降らせることができれば戦争は勝てる」のだが「どうやれば安全に敵の産業地帯まで爆弾を運ぶことができるか」という重大課題が明確化されたということであり。

アメリカは2つの回答を用意しました。

その1)落としても落ちない爆撃機を雲霞のごとく放つ。

56しても4なないB17爆撃機  Pixabay無料
 

 

ただ、落としても落ちないはずが、ドイツ戦闘機の奮戦や、太平洋では空対空特攻などのキチガイ沙汰により、場合よっては出撃機数の3分の一近くが落とされ。下手をすると戦争の遂行が危うくなったため、さらに

その2)爆撃機を援護する戦闘機を雲霞のごとく解き放った。

といって、この援護は、並みの戦闘機ではできない離れ業だった。

「落としても落ちない爆撃機の援護」です。

防弾装置だの防御機銃だのと言った基本の他に、アメリカが編み出した秘策が

「ともかく高空を飛ぶ」というものであった。

B17からB29に至る過程で高度8千メートルから1万メートルという狂った巡航高度をもつようになり。

この高度をふつーに随伴できる数少ない戦闘機がP47だったのである。

零戦の実用高度が6000メートルくらいであり、戦記物などでは「高度8000メートルを超えれば許可なくして酸素マスク着用する」などの記載がありますが、日本の戦闘機で高度8000メートルなんて、当時の神パイロットだからできた神業なのである。

なんで上がっていけないのか?その答えが、上に書いた「酸素マスク」に凝縮されています。

飛行機のエンジンは、酸素と燃料を燃やして回転エネルギーに転換しています。

しかし、高度3000メートルを超えた段階で、早くも酸素が不足しだすのであった。

とても高度1万メートルなんて。。。というのが日本機には偽らざる実態だったのである。

なぜB29やP47が、超高空でもユウユウと飛行できたのか?

その秘密が「排気タービン過給機」

エンジンの排気噴流でタービンを回して大気を無理やり圧縮し(空気の中の酸素含有量を無理やり増やし)。1万メートルの高度でも2000メートル程度か?とおなじ酸素密度でエンジンに送りこむという装置を実用化させてしまったのである。

排気タービン過給機。P38の例 https://hjweb.jp/article/746366/
 

 

恐るべしアメリカ。

別に排気ガスでなくても、エンジンの回転軸そのものでタービン回せばいいじゃん?

はい、ドイツや日本が、そういう「機械式タービン」でがんばった。でも、機械式はタービンに回すエネルギーのロスが多すぎて、ある程度以上は機能しなかったらしい。

排気ガスなら、エンジンにとっては余剰エネルギーですからねー

ただし、重要な問題があった。

それが「温度」

大馬力、大出力の航空エンジンは、排気ガスの温度も殺人的に高くなり。

エンジンから放出するだけなら何とかなったが、これをタービンまで導いて回転させる、となると、回転以前に、導管やタービンそのものが熱で溶けちゃうのでした。ははは

材料技術が重要になり。ニッケル系のレアメタルをいかに加工するかが勝負になってきた。

こうした資源に恵まれなかった日本やドイツはこの時点でアウトだったのである。

資源さえあればいいのかというとそうでもなく。

なんとかタービンに使えるまで冷却しても1000度くらいにはなってしまうそうで、敵弾が当たって穴が開いたなんて時にパイロットが溶けちゃった、とならないようになるべく操縦席から離さなきゃなど、冷却装置や配管が決定的なカギを握るようになり。

P47は、機体の大半が冷却装置や排気タービンで占拠されるという恐ろしい構造になってしまいました。

https://motor-fan.jp/tech/article/9436/
 

 

エンジンに排気タービンがついているのか、排気タービンにエンジンがついているのかわからくなってしまったP47。

結果、当時世界最大の単発戦闘機になってしまい。

でも、十分に酸素のある空気を供給されたエンジンにより、P47はどんな高空でも機敏に動ける傑作機すなわち相撲取りもびっくりの「動けるデブ」になったのである。

ただ、でかくて重い図体では、航続能力がちょっと。。。。

決して短いというのでもなかったのですが、B17がドイツに奥深く侵攻するようになるに従い、もっと航続力のあるP38に交替しました。

連合軍戦闘機の行動半径の増加 http://ktymtskz.my.coocan.jp/E/EU5/bomb3.htm
 

 

このころになると、P47は、こんどは地上攻撃を行う戦闘爆撃機として、それこそ地を這うような低空で大活躍するようになったのでした。ははは

さてF6Fです。

こちらはスケルトン画像を見ていただければ一目瞭然ですが。。。

Grumman F6F Hellcat


 

 

 

エンジンから後ろの胴体にはタービン過給機や導線などはなく、がらんどうです。

こちらは機械式2段2速の過給機で、それでも零戦の1段2速よりは広い高度幅でエンジンの効率を保てたらしいが、P47に比べたらはるか下方でヴいヴいいっているだけみたいになってしまったらしい。

艦上戦闘機なのである。空母や艦船の浮かんでいる高度ゼロからの中低高度で、どんな敵機がこようが、それがゼロファイターであっても排除できるという性能が要求され。

F4Fの段階ですでに零戦に敢闘しており。排気タービンなんて必要ないや、それより装甲を固めまくり、ギアの格納を全自動にするとか(F4Fはきこきこ手動クランクで格納していた)、ものすごく使い勝手はよくなったが、ものすごく重くなってしまい。翼面荷重など、艦上戦闘機としての性能を考えると、スピードはやっと零戦を追い越せるくらいのどん亀になってしまいました。

しかし、零戦相手にはとても有効であり。

だいたい、1機が零戦の銃弾を吸収している間に無線で仲間を呼び。寄ってたかって包囲して袋だたき、というやり方で零戦隊を壊滅させたそうです。

制空権をぶんどったあとは仲間のアヴェンジャー雷撃機が日本の艦船をしらみつぶしに沈めていった。

グラマン アヴェンジャー https://www.htmodel.sk/en/grumman-tbf-1-avenger-1-72-academy/
 

 

こうして「F6Fが参戦した日からアメリカの勝利が始まった」といわれる決定的な貢献をしました。

でも、日本人をのぞけば、F6F?なにそれ?なんですよねー

F6Fは、低空で敏捷に逃げ回る日本機を、同じ敏捷さでつかまえるのに特化した進化をしてしまったので、欧米での本流である高空決戦にはついていけなくなってしまった。対日戦終結とともに、F6Fが空母から投棄つまりぽんぽこ捨てられたという悲しい事実があるのです。

「狡兎死して走狗烹らる(こうとししてそうくにらる)」。天下取りの後、功臣が、用済みだ!と粛清されてしまうような、F6Fの悲しい末路でした。

ではでは

Posted by 猫機長
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イギリスが生んだ世界一の艦上戦闘機とは

以前、世界一の戦闘機は?というお題で、零戦を差し置いて「F4F」という結論が導き出されたことは、皆さんご存じと思います。

その記事で、陸上戦闘機と艦上戦闘機には、必要となるスペックが違っているので、そもそも比べること自体が困難である、ということを述べました

忘れた、あるいは知らないよ、という人はこちらをご一読→「零戦はなぜ駄作にされたか」

そこで、優秀な艦上戦闘機に、なにより必須なものは?と考えるようになり。

結果、その「もっとも重要な能力」を持った戦闘機が、例によってというか、実はイギリスで生産されていた、という驚愕の事実に到達し。今回のお題にします。

その名も「フェアリー・フルマー」

https://www.1999.co.jp/itbig69/10691664a.jpg
 

 

あれ、ハリケーンの翼にスピットファイアの機首を付けたみたいじゃね?

はい。スピットやハリケーンとおなじロールス・ロイスのマーリンエンジンを装備しており。姿かたちもとんがった液冷機になりました。

ただ、当時英国の戦いで存亡のかかった英国では、マーリンも最新型はスピットとかに供給優先され、フルマーへは型落ち?で200馬力も出力が低いのしか回せず。

ともあれ、スピットがありながら、なぜ英国はフルマーを作ったのか。

冒頭に書いた陸上機と艦上機のスペック要求の差がこれを物語っています。

スピットは、イギリスの本土に襲い掛かってくるドイツの戦爆連合を迎え撃ち、特にメッサー109を爆撃機の護衛からそらし、あわよくば撃墜、できなくても、少なくとも109の餌食にならない速力、上昇力、旋回性能、火力、防御力をそなえた陸上戦闘機であり。

フルマーのほうは、連合軍の生命線である大西洋の補給船団をドイツの恐ろしいUボート潜水艦から守るのが主任務となった。

そのためには、狭いようで広い大西洋のどこからでも飛び立てる能力と、目印も何もない海のど真ん中で迷子にならない航法能力が必須となったのでした。

いずれもスピットではまったくダメダメである。

どうしよう。

海のど真ん中から飛び立つ、というのは世界一の海軍国イギリスには立派な空母があり。

一方、迷子にならない航法能力となると。。。。

ここで、英国ならではのクレバーな解決をしたのがフルマーだったのでした。

その解決策とは。。。。

「二人乗りにすること」でした。ははは

https://i.postimg.cc/5252R2mX/FULMAR-01.jpg
 

 

専門の航法員をのせることで、常時機位の確認ができ。敵機との乱戦で宙返りを繰り返し、雲の中に入ったり出たりしても、戦闘が終わったときにはちゃんとオマエはここにいるのだ、だから空母への帰投にはこうすれば行方不明にならずにすむのだ、ということを、操縦員がはっちゃきになって機体を振り回し機銃を撃ちまくっているときでも、航法員のほうは、冷静に、かはともかく十分計算することが可能になった。

計算といっても、当時はGPSなんてなくて、航空チャート(あるいは海図)と、「フライト・コンピュータ」とは名ばかりの計算尺により、手計算で行わなければならず。

味方の艦船から無線で方向指示が来たにしろ、はっきりいって単座機ですべてを一人がこなす、というのがいかに無謀なことであったかを英国は熟知していたということである。

Jeppesenのフライトコンピュータ-
 

 

ラバウルなどでは、坂井三郎さんなどからの情報だと、だいたい「空戦の終わるころには一式陸攻が迎えに来ていた。ベテランは陸攻なんかの世話になるかと、やせがまんして自力で帰っていった」みたいな記載があり。

ベテランの零戦搭乗員が神だから、やせがまんすれば帰れたのであって、少なくとも、ふつーに「単座機でも航法に問題はない」のとは全く違うぞ、と力説しておきます。

日米のみならず、イギリスも後にはシーファイアだのの単座機を投入しますが、それは通信装備が日本機に比べて比較にならないほど優秀で、航空管制も発達していたことや、アメリカに至っては、迷子になっても「ダンボ」と呼ばれる救援機、潜水艦、飛行艇、さらに戦闘機の側でも「いかだ」を装備するなど、要するに単座機でもOKね、という体制を確実に整えたうえで投入しているのです。

F4Fに搭載された救命いかだ。
F4F-3 life raft PRINT for F4F-3 Wildcat in 1/48 by Eduard 8591437571109 | eBay
 

 

これがない日本側はどうなったか。

すみません出典は忘れましたが、空戦を生き残り、編隊で帰投する零戦でさえ、「下方にふらふらと編隊を逸脱しそうになる零戦がいた。パイロットが疲労で失神しそうになっているのだ。馬鹿野郎!ちゃんと起きていろ!と絶叫するのだが、その声はもちろん届かない。その零戦は、ついにひょろひょろと高度を落とし、海面にすぽんと飲み込まれてしまった」

というような回想があるのです。別に空戦で損傷したのでもないのに、非道な遠距離作戦の疲労に耐えられずあえなく墜死、という事実が少なからず起きていたものと「推察します」。

Wikipediaでは

「イギリス海軍が複座戦闘機にこだわった理由は、目印も何も無い海上飛行においては、航法担当が機体を適切に誘導することが空母に帰艦するのに必要、と考えていたからと言われる。だが、実際のところは日本、アメリカが証明しているように、操縦者が航法を修得していれば単座機であっても問題なく帰艦できた。」

と書いていますが、「航法を習得」なんて前提条件でしかなく。航法計算が困難あるいはできないような海上や雲の上を、3時間もかけて基地まで帰り着くなんて、そんなことを単座機にやらすな!といいたい。

陸攻を迎えにやらすとか、どこまで毎回実効的に行えていたか疑問です。

Fairey Fulmar (1940)


 

 

ところで、複座にしたため、フルマーは鈍足で上昇力も物足りなくなってしまい。

軽快な単座戦闘機相手だと、カモじゃね?

せんぜん大丈夫でした。

そもそも「軽快な単座戦闘機」は、フルマーの飛ぶ大西洋のど真ん中まで飛んでこれないので、戦闘そのものが成立しないのであった。

フルマーが相手をしたのは、やっぱり複座、たいていは双発で、艦隊を襲おうとしてきた長距離航続力のある爆撃機や、これに随伴可能な長距離双発戦闘機など(https://teambtrb.com/2021/05/01/isthefulmarrubbish/)で、確かに零戦対スピットの空戦にくらべれば、まのびしたまだるっこっしい空戦だったかもしれんが、十分戦闘機として活躍できたのだった。

連合軍がドイツを押し込み、英国空母もイタリアだのヨーロッパ沿岸へ進出してくると、イギリスはマートレットという単発戦闘機を起用して、陸上基地から飛んでくるBF109などと対決させるようになり。

マートレット、米国名ワイルドキャット
https://hobby.dengeki.com/news/2141771/
 

 

マートレットはメッサー109相手でも格闘戦に持ち込んで優勢に戦ったらしい。

スピット、フルマー、F4Fとそれぞれの土俵で傑出した性能を持っており。

時と場所を間違えればやられ役になってしまうが、的確な用兵で名機として生まれ変わる、というのは、P40もそうですが、バッファロー(フィンランド版)など目の覚めるような活躍をしたのもあり。この辺はまた別記事で書いてみたいと思います。

とかく華やかな空戦ばかりに目が行きがちですが、それ以前にまず乗機のエンジンはじめ万全に維持し、味方と適切な交信を行い、戦場まで行って帰ってこれる航法。霧の中に入った、積乱雲を迂回した、という気象の知識も必要です。

こうした総合力で、特に航法というものが決定的になる大西洋の戦場にフルマーという「適材適所」を配置した英国恐るべし。

「負けに不思議の負けなし」ですが、英国の「勝ちも必然の勝ちのみ」にもっていく指導層の英知は学ぶべきと考えています。

フィンランドのバッファロー https://letztbatallion.com/%E3%83%8F%E3%82%BB%E3%82%AC%E3%83%AF-b-239-%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%AD%E3%83%BC-%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%89%E7%A9%BA%E8%BB%8D%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%9Cp-4/
 

 

何も目印のない海上で往復3時間、合計6時間、その間に苛烈な空戦で、生き残ったとしても「お前はもう死んでいる」疲労の絶頂で、毎日どうやって基地まで帰り着いたのか。

ジャパニーズビジネスマンが、24時間戦わないで済む日本になることを願っています.

 

ではでは

Posted by 猫機長
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どこに置くのかエンジン

みなさんは「ホワイトウインナー入りトマトジュース」を飲んだことがあるでしょうか。

Pixabay無料画像
 

ジュースなので、トマトといっしょにホワイトウインナーもミキサーに入れましょう。

スイッチオン。ぶごごごごごごー

鋭利極まりない刃がミキサーの底で回転し。

まずは、ウインナーがぽんぽこぽん、と切断されてミキサーのガラス越しに元気よく飛び跳ね。ほぼ同時にトマトが液化して、きれいな赤のジュースがぴしゃしゃしゃー!とミキサー内いっぱいに飛び散り、埋め尽くすのでした。

なんだそれは?どこかの飛行教官が教えてくれたレシピですが、だれも実際には作ったことはないらしい。

さて。

飛行機に必須の装置に、エンジンがあります。

エンジンがないグライダーは、自力で離陸することができません。飛行機を飛行機とする最も重要なパーツがエンジンなのです。

ただ、エンジンというものはものすごく取り扱いが厄介であり、世の飛行機設計者はあらゆる工夫を凝らして最適なエンジンの配置を考えてきました。

特にプロペラ機の場合、機体とプロペラが干渉するので、配置のオプションは相当限られてしまい。機体側のニーズと、エンジンのオプションによって、なんじゃこりゃみたいな珍妙な配置も生まれました。

代表的なエンジンの配置は。。。。

*今回は、単発プロペラ機について記載します。

①機首置き。トラクター型

一番一般的で、安全な配置です。セスナなど、たぶん現在飛んでいる飛行機の99.9%はこれでしょうねえ。

セスナ Pixabay無料画像
 

 

飛行機の鼻先、先端にプロペラがあり、このプロペラで飛行機を引っ張る形になるのでトラクター型というのです。

ともかく飛行特性が素直になるので、やはり一番飛行機に適した配置と思います。

この場合重要な特徴が、エンジン、特にプロペラを機体の重心より前に置けるということ。

こうした飛行機だと、エンジンを絞れば機首を下に下げ。ふかせば上げるという特性を持つようになります。

この特性は、特に着陸経路で重要である。エンジンを絞って、機首下げで滑走路に向けて降りていくとき、急に下降気流だ!エンジン全開!すると、自然に機首は上を向き。降下率を瞬時に殺すことができます。こうしたきびきびしたエンジン操作を行うのに適した配置です。

さらに重要なのが、失速をするとき機首が下がる、というもの。失速から墜落しかかる過程で、機首が下を向いていればきりもみに入っても舵が効いて回復可能ですが、水平できりもみに入ると、それこそフラットスピンと言って回復不能になってしまうのである。

機首上げでスピンに入った場合は回復は可能かも?でもそんな状態で回復できるなんて神パイロットはそれほどいないと思います。

 

➁ミッドシップ、トラクター/プッシャー型

といって、飛行機の設計上、エンジンを機首には置けないケースもあり。

典型的な例に、レイク・バッカニアがあり。

レイク・バッカニア https://www.airhistory.net/photo/490530/N8004B
 

 

この場合、プロペラもプッシャー式、すなわち機体重心の後ろかつ機体からかなり離れた上部に設置となっています。

これが何を意味するのか。

①の場合とは逆に、エンジンをふかせば機首が下を向き、絞れば上を向いてしまうということなのである。

着陸経路で、下降気流だ!思わずエンジンをふかしてしまうと、機体はぎゅんと機首を下にして加速し。いよいよ高速度で地面に突き刺さってしまう危険が生じます。

というか、「ジェネアビの神」高橋淳さんの受け売りですが、この特性のせいでバッカニアは多数の事故を起こしてしまったらしい。

 

この特性を知って乗りこなせばいいのですが、今度は逆にフツーの飛行機が操縦できなくなっちゃうとか、ちょっとバッカニアはご免だ、というパイロットも多いかもしれません。

似たようなのにPetrelがあり。

Petrel https://www.airplane-pictures.net/aphoto/1475824/i-9258-private-edra-aeronautica-super-petrel-ls/#google_vignette
 

 

 

でも、こちらはバッカニアみたいなクセの報告は聞かず。プロペラを翼のラインとほとんど同じに高さにしたのがよかったのかもしれん。

さらに似たようなケースでは、元祖系すなわち鉄パイプで鳥かごみたいに作ったウルトラライト機もプッシャー式のプロペラ、というのが多く存在します。

https://www.aeroexpo.online/pt/prod/quicksilver-aircraft/product-176668-27609.html
 

 

ぼくも一度コパイ席に乗せてもらいましたが、特性はあまりトラクター式と変わらない感じ。着陸経路では、エンジンではなく、フラップをバチ!バチ!と下ろしたり上げたりしてランプ(着陸角度・進路)を保っていたのが印象的でした。

ミッドシップエンジンの名機というと、P39があります。

P39  http://www.warbirdalley.com/p39.htm
 

 

 

あれ、機首にエンジンじゃないの?

いいえ違うんですよ。スケルトン画像をご覧ください

https://forum.il2sturmovik.com/topic/25507-p-39-engine-protection/
 

 

なんと、エンジンはパイロットの後ろの胴体に収まっていたのでした。

なんでこういうことをするのかというと、この飛行機は、大きさの割には重くてでかい機銃を装備しようとしたため、プロペラ軸を中空にしたうえで銃身に使って、機銃は機首、エンジンは中央胴体、という画期的な設計になったのであった。

さて飛行特性としては、スポーツカーがミドシップにするのと同じ効果つまり旋回で機首や尻が振られずいい感じで曲がれる、一方でやっぱり失速時に機首が下がらずに、回復できずあえなく墜落、というのも多かったらしい。

ちょっと余談ですが、P39は重武装と防弾の強化で重くなりすぎてしまい、ターボチャージャーなしで生産という、日本機もびっくりの低高度用戦闘機になってしまい。陸上機のくせに、艦上機の零戦に高度優位を奪われてさんざんな目にあってしまった。

しかし、ソ連にレンドリースされたP39は、独ソ戦の特徴である地表すれすれにおける空中戦により、苦手な低空に降りてきざるを得なかったメッサ―Bf109などを相手に互角の活躍をしました。

 

③リアエンジン、プッシャー式

P39が、機首に機銃を積むためにエンジンを後ろにずらした結果、エンジンからプロペラまで長いエンジンシャフトが必要になり。パイロット保護のための重量増加などをきたした一方で、機首に武器を集中する、というのは捨てがたい魅力があり。

いっそエンジンとプロペラを全部お尻に積んじゃおうよ、と「震電」という飛行機が作られました

震電 https://www.amazon.co.jp/%E3%83%8F%E3%82%BB%E3%82%AC%E3%83%AF-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E6%B5%B7%E8%BB%8D-J7W1-%E5%B1%80%E5%9C%B0%E6%88%A6%E9%97%98%E6%A9%9F-%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%A2%E3%83%87%E3%83%AB/dp/B0017TCKY2
 

 

ただ、こうすると先尾翼機にするしかなくなり。水平尾翼が機体の先に、垂直尾翼が主翼に、という要すれば安定もへったくれもない、常時パイロットがはっちゃきになって機体を安定させる、という飛行機になってしまったのではないかと危惧するのですが、プロトタイプ(グライダー)試験では意外と安定していたほか、失速に入りにくく、入ってもすぐ回復できたという情報もあり。

安定はともかく。

震電の場合、武装もさることながら、将来的にはジェットエンジンへの換装をもくろんでいたらしい。なんとなく現代のジェット戦闘機ちっくな外見で、先見の明を体現したようなスタイルですねー

但し重大な問題があり。

プロペラがパイロットの後ろで回っているため、敵弾にやられて脱出だ!というときに、パイロットがプロペラに当たってしまい。この記事の冒頭に書いたような「トマトウインナージュース」になってしまう危険性が高いということなのである。そのため、緊急時にはプロペラを爆散させるように爆薬を仕込んだそうです。

こういう死に方は嫌ですねえ
「零戦の操縦」ISBN978-4-7572-1734-8より。
 

 

元祖ウルトラライトみたいに、もともと脱出なんて考えてなくて、エンストでもどっかの原っぱに着陸だ!みたいなのならパイロットの後ろにプロペラでも問題はないんですけどねー

ドイツも震電と同時期に「プフェイル」という似ていると言えば似ている奴を開発しており。

プフェイル。 https://www.tamiya.com/japan/products/61074/index.html
 

 

こちらは、なんと機首とお尻に両方プロペラというキワモノだった。

しかし、やはり先進国ドイツは一歩進んでおり。

緊急脱出の際、後部プロペラと垂直尾翼の他に風防が爆破されて、座席ごと射出、という装置がすでに実用化されていたのだった。世界で最初の射出式座席です。

こうしてドイツのパイロットは「ウインナートマトジュース」になる危険から逃れていたのですね。。。

最後はちょっとすさんだオチになってしまいました。

3000字越えで終了。

ではでは。。。

 

 

Posted by 猫機長
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高度計を信じよう

こないだその辺を飛んでいたら、管制官のお姉さんからお𠮟りが。

いわく「チャーリーモード受信不能。トランスポンダ-チェックせよ」

小さな飛行機で飛んでいます
 

 

へいへい、とトランスポンダーのIDENTボタンを押してチェックしたのですが、どうもこちらの高度が管制まで届いていないようで、何度かチェックの後、やっと

「Cモード受信。レーダーコンタクト確認」と、無罪放免になりました。

なんか暗号文みたいになってしまったので、説明します。

C(チャーリー)モードというのは、ぼくの操縦している軽飛行機に搭載された機位発信装置すなわちトランスポンダーと連動した高度エンコーダーによって機体の飛行高度が管制に発信されている通信作動形態(モード)の意味です。

ますます意味不明か?

要すれば管制のお姉さんは、この高度エンコーダーから発信されるぼくの機の高度情報が受け取れておらん、機材チェックせよ、と言っていたのでした。

そこで、こちらはトランスポンダーのIDENTボタンを押して、送信チェックを実行。こうすると、管制官が見ているスクリーン上で、ぼくの飛行機を表す光の点が、ぴかぴか!と点滅し、トランスポンダー異常なし、ということを明示するのでした。

計器盤の中央に鎮座しているトランスポンダー。STBY、ALT、IDENTのボタンに注目。
 

 

ただし、IDENT実行には、まずSTAND BY – ALT – IDENTと順序立てて複数のボタンを押す必要があるとか、いったんIDENTを押すと管制官の画面で8秒だったか12秒だったかぴかぴかとまぶしく点滅して、ほかの機の光の点滅が見えなくなっちゃうとかあり。「まちがってIDENT押しちゃった」とかやると管制から烈火のごとく怒られるので皆さんが飛行機を操縦するときはご注意くださいね。

 

さて、管制がCモード受信できん、という場合、たいていは気象状況によって電波が切れぎれになっちゃうというのが多いはずだが、万一こちらの機器が故障していた、だったらやばいので、着陸したら早速トランスポンダーとアンテナをチェックしました。

そしたら、なんとアンテナがごみや錆で真っ黒けになっていることを発見!これでよく発信・受信できていたなとびっくり。

アンテナ。管制のお姉さんごめんなさい
 

さっそくガシガシとこすって錆とかはとったのですが、勢い余ってアルミ?のメッキもはがしてしまい。なんかプラスチックみたいな白い地肌が出てきちゃった!

そこで、いつも機体の年次検査をお願いしている兄ちゃんに連絡。週日でぼくは町から出られないけれど、お兄ちゃんに格納庫のカギを渡し、郊外の飛行クラブまで出張修理へいってもらい。機体からアンテナを外し、点検してもらいました。

この結果

「アンテナ自体は全然問題ない。ただアンテナとCモード送受信機の接続部分で機体に干渉していたのでちゃんと絶縁しといた」

さらには「メッキが剥がれて、アンテナ本体の真鍮だっけ?がむき出しなのは問題ない」ということで、70ドルの出費を抑えることができたのは安堵。

新品のアンテナ。これで70ドルですから、やってらんないですねー
https://www.aerian.com.br/antena-transponder-dme-conector-bnc-ted-104-12
 

 

その後は、トランスポンダー画面のCモード送受信シグナルもちゃんと点滅するようになり、いい感じに作動しています。

画面に表示されている「ALT」の下に、「R」のシグナルが点滅し、高度情報を管制に送信していることがわかります。
 

 

これだけだったらめでたしめでたしなのですが、修理屋のお兄ちゃんの心無い一言で、夜も眠れない、恐ろしい懸念が発生してしまったのでした。

その一言とは

「トランスポンダーの高度表示の誤差がでかすぎたから、調整しておいたよ」

と、まあこれだけならよかったのですが

「ちゃんと(機体を駐機してある)飛行クラブの標高にあわせといたからね」

の一言がぐさりと突き刺さったのでした。

標高にあわせた?うああああー?

というのも、トランスポンダーの表示すべき高度というのは、標高とかではなく、標準大気圧1013hPaに合わせたものでなければならないからなのです。

標高に合わせなければならないのは高度計で、離陸前にかならず「QNHセッティング」を行います。

QNHというのは「海抜高度規制値」のことです。

気圧は毎日変わりますが、飛行場の標高は一定しているので、例えばぼくのホームベースであるSDCB飛行場では、離陸前に「3200フィート」にダイヤルを合わせます。その時高度計の気圧表示窓に現れる気圧がその日の気圧ということである。QNHは飛行場近辺の低空を飛ぶときは特に大切です。

海抜3160フィートの飛行場にて。左がQNHセッティング。「コールスマン窓(黄色い枠内)」表示の大気圧1023hPa。これがQNE(右)になると、気圧を国際標準の1013hPaに合わせるので、高度は300フィート近く低い2920フィートになってしまいました。
 

 

一方、トランスポンダーはあくまでQNEセッテイングでなければならないのである。

QNEとは「国際標準大気規制値」。

広いようで狭い空では、いろんな場所から飛んできた飛行機が同じ空域に交じりあい。たとえば羽田から飛んできた飛行機とブラジリアで離陸した飛行機がブラジリア上空でかち合った場合、ブラジリアの気圧に基づいた高度計セッティングと、羽田の気圧に基づいたセッティングでは同じ高度でも明らかに高度計の針は違う高さを指してしまい。ニアミスなどの原因となるので、「じゃあ一定の気圧を決めてみんなこの気圧で高度計を調整しましょう」としたのがQNEです。そして、その気圧は国際標準大気1013hPaとなっています。

ふつう、みんなQNHで離陸し、ある一定の高さまで行ったらQNEに変更します。ちなみに、QNEでの高度の呼び方は、7500フィートとは言わずFL075(FLはフライトレベル)となります。

QNHとQNEの差
https://www.linkedin.com/posts/airlifter_qnh-qne-and-qfe-are-altimeter-settings-activity-7093040410830274560-PiU5
 

 

 

要すれば、トランスポンダーの表示はあくまでQNE(標準気圧、1013hPa)に基づいたものでは無ければならないのに、修理屋の兄ちゃんが不用意に「標高に合わせた」なんていうから、こいつQNEとQNHを勘違いしたんじゃね?

という恐ろしい疑惑が生まれてしまったのでした。

その日は水曜だったか?木金は一日中ブルー。土曜日早速飛行場へ飛んで行って、ちゃんとトランスポンダーのFL(フライトレベル)表示が1013で調整となっているか確認しました。

確認自体はしごく簡単で、高度計のほうの気圧を1013にして、そこで示される高度がトランスポンダーのFL表示と合致していればOkということなのである。

その結果は、写真のごとく

 

 

高度計3040フィートのところ、トランスポンダーのFL30と、ばっちり合致でした。

あーよかった

*この確認方法では、高度計がしっかり調整されている必要があります。念のため

FLの調整がちゃんとなされていないと、罰金(恐ろしい金額です)以前に、本当にエアトラフィックを混乱させてしまうので、間違ってもこの調整でQNHとQNEを取り違えるなんてあってはならないのである。

ただ、このチェックは問題なく正しい数値が出るだろうというあてはあった。

というのも、トランスポンダーへ情報発信する高度エンコーダーは、そもそも標準気圧に基づいた数値(高度)しか示さないようになっているからである。

一抹の不安として、このエンコーダーが出す数値に誤差が生まれていて、それを修理屋の兄ちゃんが下手にいじってさらに拡大してしまった、ということを恐れていました。

結論から言えば、お兄ちゃんは「標準気圧に基づいた標高に調整した」という、下線の部分をはしょってしまったということなのですね。。。

「標高」という言葉は「標準気圧」という言葉が前提になっているのかもしれませんが。

というわけで、終わりよければすべてよし、と強引に終わるのでした。

ははは

ではでは

 

Posted by 猫機長
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名機の条件:零戦はなぜ駄作になったか

まず、この記事は零戦をディスるためのものではないことを明記しておきます。

といいつつ。。。

欧米での零戦の評価というと、たいてい

「世界で初めて陸上戦闘機を超えた性能を発揮した」

と、情け容赦なくディスっています。

ほめているんじゃないの?残念ですが、ディスっているのでなければ、憐れんでいるのです。

零戦(出典は「極東上空の虐殺」Martin Caidin著)
 

 

説明するためには、駄作の対極にある「これ以上ない名機」について確認することが一番近道と思います。

その名機とは「グラマンF4F」

珊瑚海やミッドウエーなど正規空母同士の艦隊決戦や、護衛空母による船団護衛など、艦上機としてのどんな任務もオールマイティ―にこなし、開戦当初の最も苦しい時期でも、優勢な零戦相手に互角に戦いました。操縦がしやすく、パイロットに優しい戦闘機。F6Fが大活躍できたのも、F4Fの飛行特性とあまり変わらず、ベテランパイロットがF4Fのノリで操縦できたから。

殺しても死なない耐久力、大量生産、大量配備(小さな空母にもたくさん積めた)の、アメリカ的な合理性たっぷりの傑作艦上戦闘機と思います。

F4Fに搭載された救命いかだ。
F4F-3 life raft PRINT for F4F-3 Wildcat in 1/48 by Eduard 8591437571109 | eBay
 

 

 

 

さて、いろいろな反論が沸き起こってくるものと思われます。

例えば、F4Fは

◎遅いじゃん。零戦とどっこいどっこい

◎敏捷だけど、零戦に比べたら格闘性能だめじゃん

これら反論についての一つの回答にキルレシオというのがあり。

「The Wildcat has a claimed air combat kill-to-loss ratio of 5.9:1 in 1942 and 6.9:1 for the entire war(Wikipedia)」となっています。

米側の記録で、零戦の正確な被撃墜数がわからないので鵜呑みにはできませんが、実態として「F4Fが終戦時には1機喪失で零戦7機を撃墜するまでになっていた」と堂々記録されるほどF4Fが強かったという証明にはなると理解します。(個人的には、サッチウエーブだのの物量や他の高性能機との共同撃墜だので、終戦時までの累計でF4F一機ごとに零戦二機くらい撃墜かと推測します)

 

P39とF4F混成によるサッチウイーブの例。
(出典は「極東上空の虐殺」Martin Caidin著)
 

 

零戦との比較はともかく、P51やP47、メッサーやスピット、さらには疾風や紫電改をさしおいて、なんでF4Fが「これ以上ない名機」になるんだ?

F4Fなんて、これら高性能戦闘機と比べると

◎どん亀

◎高空性能が貧弱

と、致命的じゃん?

まさにその通り。そして戦略爆撃による高空決戦で必須の「速度と高空性能」がだめだめだったからこそ「これ以上ない名機」になれたのです。

F4Fの主戦場は、海の上です。

大西洋や太平洋の、とても陸上機が飛んでこれない「文字通りの絶海」で、水面に浮かぶ(つまり高度ゼロの)艦船をやっつけたり、味方の艦上機(艦船)を護衛するのが任務なのである。

スピットなどの陸上戦闘機の性能がいいのは、着艦フックだのが不要なのもあるが、実際問題として艦上機ほど燃料を積み込む必要がないからである。F4Fの縄張りである最果ての海には、スピットとかの陸上戦闘機はそもそも飛んでこれないので、艦上機の方で陸地まで飛んでいかない限り戦闘そのものが成立しないのであった。

P39。当時は珍しい前輪式。https://modelismoestatico.comunidades.net/ph-bell-p-39-airacobra
 

 

艦隊決戦が陸地近くまでもつれこんできたら?その場合でも、F4Fのお仕事は艦隊防衛と攻撃援護ですから、別に高空性能なんか必要ないし、低空での格闘は、零戦と張り合うF4Fは最強である。陸上機相手でも、自分の土俵で戦えばこわいものなし。

要すれば、陸上の高性能戦闘機と、艦上の高性能戦闘機では、要求される諸元が違うのであった。ははは

だましたな猫機長!最初から「これ以上ない名機」じゃなくて「これ以上ない艦上戦闘機」だといえー!ぐぬぬぬー!

まさしくそこがこの記事のコアなのです。

貧すれば鈍する、と言いますが、日本は「陸上も艦上も一緒くたにして」「要求される諸元が相互に矛盾する」非実用的な要求を零戦に課してしまった。

防弾装備などの必須部品をかなぐりすてた、飛行性能だけは何とか世界一流の「なんでもござれ」の飛行機。それが零戦だったということである。

そして、無能な日本軍部は、こともあろうに艦上戦闘機を持って陸上戦闘機の土俵に殴り込みをかけてしまった。

飛行性能は陸上機もしのいでいた零戦が、熟練パイロットによって決死の殴り込みを行ったため、開戦当初は大戦果を挙げ、欧米をして「陸上機をしのいだ最初の艦上戦闘機」といわしめました。

しかし、よく考えてみてください。

ちょっと物の分かった人だったら、艦上戦闘機を陸上戦闘機にぶつけるという行為がいかに非効率か、という以前に、いかに低能なことであるかと容易に気づけてしまうのです。

P40だのの陸上機をやっつけたことには驚きますが、その驚きには「なんでこいつらちゃんと陸上機で挑んでこないのだろうか?基本のキを知らねーんじゃね?」という憐れみが含まれており。

P36。水冷エンジンにつけかえて機首がとんがったのがP40。

Aeronave histórica em cerimônia de dissolução de base, na França


 

 

艦上戦闘機的な中低高度の格闘ではやられ役のP40が、陸上機らしい一撃離脱をとるようになると、容易に零戦につかまらなくなり。

そのうち「高空性能、速度」に加えて「航続距離」に卓越したB29を雲霞のごとく解き放ち、くどいけど「高空性能、速度、航続距離」のそろったP51がこれまた雲霞のごとく護衛してくるようになると、いつまでも「水面近くの高度における格闘性能」にこだわっていた日本の艦上戦闘機のみならず陸上戦闘機までもがアメリカ戦爆連合の飛ぶ高度に上がっていくことさえできずに。。。。というワンサイドゲームになっていきます。

日本は、零戦に何を求めたのか。

無能な首脳部がなにも決定できないので、どんな場面にも即応できる万能機が必要になってしまった。

ぱっと見は成功したかに見えたが、うわべの飛行性能だけではだめで、通信、防弾、武装といった「勝つために必要な装備」が「ないか、貧弱か、使い物にならなかった」ので、結局、「いくら撃たれても死なない」敵機に取り囲まれて、袋叩きになってしまった。

どだい、何でもできる、というのは、裏を返せば、何もできない、ということに陥ってしまうのです。

日本の首脳部が何も決められないままに、一般の国民が右往左往というのは、コロナ禍でもみられました。

出展:https://note.com/hyamaguchi/n/n0c60c7292ec3
 

この逆がアメリカだった。

陸上なら陸上でP35,P36,P39,P40,P47,P51,P38と、陸上機としての王道である上昇力、速力、火力、高空性能、さらには十分すぎる防火・防弾性能を持った名機を次つぎと開発し。

艦上機は、格闘戦に優れたF3F,F4F,F6Fと順調に発展させることができました。

そして、戦争指導・遂行においてしっかり「ここはこの飛行機を使おう」と、それぞれの持ち味を最大限に引き出した。

F4Fはこうした的確な用兵によってその性能を最大限に引き出し、勝利を決定づけた「船団護衛、対潜哨戒、制空、攻撃援護」と、艦上機として要求される用途すべてにおいて能力を出し切り。長距離爆撃機の護衛だのといった畑違いの用途で犠牲にされることはなく。

これがF4Uになると、陸上戦闘機並みの速力を出そうとして、艦上戦闘機としては使い物にならなくなった、という事実が、的確な用兵が最重要ということを裏書きしていると思います。

F4Uコルセア。https://vintageaviationnews.com/aviation-museum-news/planes-of-fame-f4u-corsair-flying-demo-hangar-talk-march-4th-2023.html
 

 

F4Uが出てきてしまうと、F6Fも引き合いに出さなければならないのですが、これこそ欧米的な価値観から見たら、「速度も出なければ高空へも上がってこれない、P47と同じ高性能エンジンなのにかわいそうな低性能機」になってしまい。「低性能機ぞろいの日本を相手に、唯一日本機の持ち味であった格闘性能で同等の立ち回りができるように、速度や高高度性能を犠牲にした、対日本という傍流の戦線へつぎ込むコイン機」として、日本機をせん滅して勝利に貢献したはしたが、なんかあまり楽しい記事にはならないので、F6Fについてはなかなか筆がすすまないのです。コイン機呼ばわりは言い過ぎかもしれないけど。

F6F(左)とP47(右)https://www.youtube.com/watch?v=Ydf0-QadMlY
 

 

F4Fなら、艦上戦闘機としてのすべての場面で大活躍した幸せな飛行機ということで、安心して書くことができるのでした。

3000字を超えたのでおしまいにします。

日本人が、やみくもな行動で右往左往する(あるいは行動できずに思考停止してしまう)前に、その行動について理性的に計画できる日が来ることを願っています。

ではでは

 

Posted by 猫機長