ふつー、戦闘機というとこんなのを思い浮かべると思います

彩雲 https://www.ne.jp/asahi/airplane/museum/cl-pln/saiun.html
戦闘機じゃないぞ!というアプローチではなく、飛行機工学の見地からご確認ください。
すなわち、胴体と主翼、そして尾翼がセットになって、飛行機を形作っています。
主翼が揚力を生み出す一方で、尾翼が、まっすぐならまっすぐ、宙返りなら宙返りで、飛行機がパイロットの思う通り飛行するためのバランスをとり、舵として作動しています。
尾翼の開発によって、鳥に比べて限りなくとろい人間でも、なんとか飛行機を操り、空を飛ぶことができるようになったのでした。
飛行機の黎明期は、尾翼って、なんてすごい発明なんだ!うるうる。。。と感動していたのですが。
そのうち、尾翼がエンジンパワーの相当な部分を食ってしまっていることに気づき。
だいたい「有害抗力」の20%から50%が尾翼によって生まれているらしい(全翼機の世界(全翼機とは?))。
上の写真の彩雲ですが、登場したてのころは
「ワレニオイツクグラマンナシ」
と戦闘機を振り切るハイスピードでしたが、そのうち、とろいグラマンではなく、本当に早いP51が投入されてくるようになると、あえなく叩き落されるようになってしまった。
もし、彩雲の尾翼をブチ切って「有害抗力」の20%が減少できたら。。。。
ドイツは、実際に尾翼をブチ切った飛行機の開発に成功しました。
その名も「コメート」


https://reviews.ipmsusa.org/review/kagero-top-drawing-1173-messerschmitt-me-163-komet
ただ、垂直尾翼は取り去ることができなかったほかに、水平尾翼をもいじゃってもまだエンジンパワーが足らず。小さくした胴体にパイロットを危険な腐食性・爆発性に満ちた燃料といっしょくたにして押し込んでしまったため、上空で発火(被弾や、単に故障による火事もある)すると、パイロットもろとも、文字通り流れ星のように燃え尽きてしまうという恐ろしい飛行機だったそうである。
それでも、無尾翼機が実用として多数配備されたという事実は快挙であり。
あとは、「コメート」みたいに、「星になったパイロット」を量産しないで済む、もちっと安全なのができないかなーというのが課題になった。
第二次大戦でドイツを踏みにじって、「コメート」とかの技術をネコババしたアメリカで、無尾翼機の決定版みたいなのが生まれました。
それが「カットラス」
よりによって艦上戦闘機である。

なかなかかっこいいF7Uカットラス https://asasdeferro.blogspot.com/2018/01/vought-f7u-cutlass.html

http://onami.blue.coocan.jp/models/gall/f7u3_f72.html
空母という、とても滑走路とは呼べない、ただのカマボコ板に離発着しなければならない艦上機というのは、多少スピードが遅かろうが安全に「カマボコ板」に降りられるような優れた着陸性能がなければならないのである。

カマボコ板 https://kamabokoita.com/sugi/
それは、すなわち、スピードがどんどん下がり、高度もぐんぐんと下がっていくという、飛行機にとっては一番苦手な場面でも、パイロットのコマンドのとおり素直に動いてくれなければこまるということであり。
どんなでかい飛行場でも着陸はやばい瞬間なのです。が、よりによって、カマボコ板ですよカマボコ板。
しかし、狂ったアメリカ海軍は、カマボコ板用に、よりによって無尾翼機を配備してしまった。
くどいかもしれないですが、飛行機を安定させるための必須装備である尾翼を引きちぎり。主翼だけで「エレボン」だのなんだのというふざけたごまかしでお茶を濁したため、いったん空に上がっちゃえば何とかなったが、離着艦となると。。。という恐ろしい飛行機になってしまいました。
この飛行機を作った会社が「チャンスボート社」
あれ、どこかで聞いたような?
はい、F4Uコルセアです。

海賊F4U
Oren Rozen, CC BY-SA 3.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0>, via Wikimedia Commons
このブログの読者の方ならもうお分かりと思いますが、いろいろな記事で何度もこき下ろした通り、このF4Uという飛行機はクズです。
クズ過ぎて、艦上戦闘機のくせに、空母に乗せられるようになったのは大戦末期である。
問題は、艦上戦闘機では絶対やってはいけない「超大馬力エンジン、巨大なプロペラに、主脚を何とか短くできるように逆ガル翼」という3点セットを盛り込んでしまい。
エンジンとプロペラはものすごいPファクター(乱流)をもたらし、それだけでも狭い空母に着艦なんて至難なのに、コクピットの場所が後ろすぎて前が見えず。極めつけは、逆ガル翼が、低速旋回中など、風が翼に当たる角度によっては下向きの揚力を発生させたりして、横転・大破の大事故続出だったらしい。

http://seafurry.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/f4uf4u-30ef.html
敵との空戦以前に、着艦事故で大量の後家さんを製造してしまったF4U。
チャンスボート社は、この教訓を深く胸に刻み。
やっぱり離着陸が困難なF7Uカットラスを量産したのでした。ははは

海賊F7U https://www.historynet.com/modeling-vought-f7u-3-cutlass/
要すれば、とにかく空の上での性能が良ければ、あとはどうでもいいやあ!という教訓を学んだということなのだろう。
さてF7Uです。

三面図 https://tr.pinterest.com/pin/485051822378345712/
なんか、上から見たら、「コメート」のコピーに失敗し、垂直尾翼を2枚にするしかなくなった、みたいにしか見えないのはぼくだけでしょうか?
もひとつカットラスの写真

なんか、ノーズギアが長すぎておばけなんですけど。。。
無尾翼機なのでフラップが装備できず。フラップがないのであれば迎え角を大きくするしか離着艦時の低速で飛ぶことができなくなってしまったので、地上にいるときからこんな感じでひっくり返りそうな機首上げ状態にするしかなくなってしまったのです。
でも、そうしたら今度は前がみえなくなってしまった。
仕方なく、操縦席をできるだけ前に出して、しかも上の方に突き出した感じに設置。

コックピットが機体に埋め込まれた感じのF4ファントムhttps://www.aviationgraphic.com/aviation-lithographs/78-f-4c-phantom-ii-oregon-ang-jp-1006.htmlと、
ぶざまにつきだしたカットラスhttps://mapsairmuseum.org/vought-f7u-3-cutlass/
結局、努力して空気抵抗を増しているのか?みたいになってしまったのでした。ははは
なんか、前が見えん、コクピットをいじれとか、F4Uの時代からぜんぜん学習してないじゃん。。。。
結局、着艦時にギアが折れたあ!とかの事故が多発したらしい。でも、どのくらいの数が壊れて、どのくらいの人間が4んだかとかの情報は出てこないんですよね。
結局、ちゃんと尾翼のあるまっとうなF8戦闘機に交代する形で退役しました。

F8戦闘機 https://warhistory.org/@msw/article/f-8-crusader
それでも、320機が生産されて、1954年から1957年の3年間、最前線に配備されたわけであるから、使いにくいなりに役に立つ飛行機ではあったのだと思います。いったん空に上がってしまえば、「速度性能は同時期の他の機体と比べても一段高いもので、アメリカ軍艦上機の最高速度記録を更新している(Wikipedia)」と、最先端の飛行機だったことは疑いのない事実と理解します。
あと、F7Uを擁護するとすれば、現在大量配備されているB2爆撃機がコンピュータ制御のずるっこで安定を保っているバチモンなのに対し、F7Uはいちおう機体のエアロダイナミクスだけで静的安定を達成しているという点は評価すべきと考えます。

いまどきのバチモン、B2爆撃機 https://www.airway.com.br/eua-usou-bombardeiro-invisivel-para-atacar-estado-islamico/
独特の形状から、マニアには大人気の飛行機。操縦しろ、といわれても遠慮しますですが、SF映画みたいな、ぶさかわの、楽しい「傑作機」と思います。
ではでは。。。

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