エアレースだ!爆発だ!

1930年代、アメリカ。

恐怖の経済恐慌。麻薬だ密輸入だ!ギャングが大喜びで機関銃をぶっぱなし、警官をハチの巣にしてはしゃいでいた。

一般市民も、機関銃ダダダダーン!ブギャギャー!ブギャギャギャー!みたいな楽しみはないかなーと追い求めていたら、空前の熱狂をもたらしたものがあった。

その名も「エアレース」

エアレース https://au.pinterest.com/pin/22166223162918074/

 

 

閉塞感のある日常で、命知らずのパイロットが時速400km超で飛ばす姿は、大衆にとって最高の現実逃避であり、ショーだった。

深刻な不況で軍も民間の航空需要も冷え込む中、メーカーや設計者は「レースの賞金」を活動資金にするしかなくなっており。

「野性的で危険」なレースが生まれた。

「デトロイト」や「クリーブランド」には十万人の観客が押し寄せ。

複数の飛行機が同時に離陸し、地上に設置された塔(パイロン)の周りを低空で旋回しながら順位を競う、「空の競馬」だった。

巨大なエンジンに操縦席をくっつけたような当時の競争機。観客は地響きのような爆音と、文字通り「飛ぶ弾丸」を目の当たりにしたのだった。

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1930年代の標準的な設定は以下の通り。

周回コースの形:三角形、あるいは四角形のクローズド・コース。

パイロン: 3本または4本。高さは約15メートルほどあり、遠くからでも視認できるように赤と白のチェック模様などで目立つように塗装されていた。

1周の距離:約16kmを10周して順位を競った。

時速400km(分速約6.7km)で飛ぶレーサー機の場合、1周が約2分半、10周してもトータルのレース時間は25分〜30分程度と、息つく暇もない全力疾走だった。

https://www.youtube.com/watch?v=95rYrgBW0tw

 

 

しかし、パイロットにとって、この「たった16km」の1周は、普通の飛行の何時間分にも相当する地獄であり。

レースは地上わずか15メートルから30メートルの超低空で行われ。少しでも高度を下げすぎれば地面に激突した。

直線で時速400km以上出し、パイロンの手前で機体をナイフのように真横に立てて急旋。この時、パイロットの体には5G以上の重力がかかり、血液が足に下がって視界が真っ暗になる(ブラックアウト)寸前になった。

前の機体が残した強烈なプロペラ後流(乱気流)に突っ込むと、機体が木の葉のように翻弄された。

観客席からは「機体がパイロンを回って爆音とともに目の前を通り過ぎ、あっと言う間に戻ってくる」というサイクルが10回繰り返され、いよいよ会場は熱狂。

https://jackandfriends.com/vintage-the-racing-age-24-x-16-inches-metal-sign/

 

 

挿絵はジービーレーサーばっかりですが、ほかにもできそこないな競争機がたくさんあり。

代表的なのは以下の通り。

ウェッデル・ウィリアムズ Model 44 (Wedell-Williams Model 44)

Wedell-Williams Racer https://au.pinterest.com/pin/21040323255069968/

樽のようなジービーとは対照的に、細長く、「鉛筆のような」形状をしていた。ジービーが「曲がるのが苦手な弾丸」だったのに対し、Model 44は安定性が高く、扱いやすい機体だった。

 

ハワード DGA-6 「ミスター・マリガン」 (Howard DGA-6 “Mister Mulligan”)

Mister Mulligan  https://gemini.google.com/app/5a603b8980204572

「高翼・キャビン型(密閉された4人乗り)」の輸送機みたいな外見だが、中身は強力なエンジンを積んだモンスターマシン。

 

 

レアード・ソリューション (Laird Solution)

Laird Super Solution https://au.pinterest.com/pin/6614730696513061/

ジービーが本格的に台頭する直前、1930年の初代トンプソン・トロフィー覇者。 複葉機でありながら、非常にコンパクトで高出力。

 

 

細長いはずのウェッデルもずんぐりしていて、ジービーなんて、それこそ樽じゃん?

なぜ極端に短い形になったのか。そこには、天才的かつ狂気じみた「空力理論」があった。

単にエンジンを大きくしたのではなく「機体全体を一つの翼にする」という革命的な発想を形にしようとしたのある。

通常の飛行機は、胴体はただの「空気抵抗」だが、ジービーはバレル(樽型)理論といってエンジンを覆うカウリング(カバー)を、横から見ると「翼の断面(翼型)のような曲線にして、胴体自体に揚力を発生させ、その分主翼を極限まで小さくしたのだった。

主翼を小さくすれば空気抵抗が減り、ライバルを置き去りにするスピードが出せる。これがジービーの驚異的な速さの秘密だった。

バレル理論だそうです。はははhttps://au.pinterest.com/pin/2251868558060654/

 

さらには、安定性を捨てて、重いパーツ(エンジン、燃料、パイロット)を重心の一点に集め、機体は「コマ」のように鋭い旋回が可能になった。

この理論は計算上は完璧だが、人間の操縦能力を完全に無視していた。

ジービーは尾翼が重心に近すぎて、常に左右にフラフラし。胴体が短すぎるため、巨大なプロペラが生み出す猛烈な乱気流が、そのまま尾翼を直撃。舵(かじ)の効きを不安定にし、着陸寸前の低速で機体が突然ひっくり返る原因となった。また、重いエンジンが高速回転しているため、機体を傾けようとすると、物理法則(歳差運動)によって機体が予期せぬ方向へ跳ね上がった。

野獣のような反射神経と命知らずの蛮勇がなければ乗ることのできない恐ろしい飛行機になってしまったのである。

ジービーは極端かもしれないけれど、ほかも似たようなものだった。

こんなできそこないの「弾丸」で、「低空でのパイロン旋回」を行うとどうなるか。当時パイロンレースでの事故は、単なる「墜落」を超え「物理法則との衝突」というべき凄まじいものになってしまった。

観客の目と鼻の先で、時速400kmを超える鉄の塊が制御を失うとどうなるのか。

  1. 「乱気流の罠」:1938年 リー・ウィリアムズの悲劇

前を走る機体がパイロンを旋回した直後に残した「乱気流(プロペラ後流)」に、後続のウィリアムズの機体が突っ込み。乱気流に叩かれた翼が地面の方向に傾き。

機体は地面を這うように激突。火を噴きながら数百メートルにわたって機体の破片を撒き散らし、まるで爆弾が爆発したような光景に。墜落というより「地上での超高速激突」になった。

  1. 「パイロンへの接触」:1センチが死を分ける

レースの核心は「いかにパイロンを最短距離で、内側を攻めるか」だが、旋回中に機体を真横に倒した際、翼の先端がパイロンに接触する事故が頻発。時速400kmで静止物に翼が触れれば、翼は紙のように引きちぎられ。片方の翼を失った機体は猛烈な勢いで回転(ロール)を始め、パイロットは何が起きたか理解する間もなく地面に叩きつけられ、ひき肉と化した。

3.直進中に爆発

レースではなく速度記録チャレンジ中の事故。観客とカメラが見守る中、突然機体が「爆発したかのように」空中でバラバラになった。観客は何が起きたのか理解できず、ただ炎の塊を見るしかなかった。後に、高速飛行の振動で燃料キャップが外れ、風防を突き破ってパイロットの顔面を直撃。操縦桿が動き、急激なGに短い胴体と薄い翼が耐えきれず空中分解したということがわかった。

https://www.abebooks.com/first-edition/Aircraft-Speed-Vintage-Team-Racing-Gordon/30975354838/bd

 

 

当時のパイロットは「気合」と「運」で飛んでいたのである。パイロットを「勇敢な鉄の騎士」つまりは「狂人」としていたゆえんであった。

ところが、いつの時代でも姑息な手段で勝ちをさらうやつが現れ。

そいつは「気合」と「運」を極力排除し「勇敢とは真逆の計算された用心深さで」チャンピオンになったのだった。

計算その1:ジービーは、「機体が予期せぬ方向へ跳ね上がる」のだが、これを、ジービーが巨大な「ジャイロ(独楽)」であるため発生する「物理的な回転モーメント」であると計算し、「全力で操縦桿を前に押し込む」という、本能(気合)に反する操作を事前に予測しておいて実行した。

計算その2:ジービーは、「右に切りたいのに左に行く」という、パイロットにとって最も恐ろしいコントロール喪失をきたしたが、これも翼が薄く、ある速度を超えると空力的な力が翼の強度を上回り、ねじれることでのアドバースヨーだということに気づいて、いつ起きるか計算し。ねじれる直前でスロットルを操作して限界を超えないようにした。

そして決定打:当時開発間もない人工水平儀を装着して、それを頼りに旋回角度を調節した。5Gだのの極限状況では五感による操縦よりも、計器に従えば間違いないよということだったのである。

人工水平儀

 

 

ロマンもへったくれもない、計器飛行みたいな操縦。

このパイロットは、パイロット以前に工学博士であり、飛行機の挙動を「カンと手探り」から「想定内の計算」に変換した人間コンピュータだったのである。

そいつの名前は「ドウリットル」

あれ、空母から双発爆撃機を「離陸」させた奴じゃ?はいそのとおりです。

でも3000字を超えたので、今回はここでおしまい。

おそまつさまでした。ではでは。。。

 

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