リモートワーク実現を阻む「黒いボールペン」

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コロナ禍から1年近く経過し。リモートワークが推進されています。

2020年12月の時点で、ライブドアニュースが「約8割が「リモートワーク続けたい」、働き方と学び方調査」と題した記事を発表。大多数がリモートワーク継続を望んでいることが明らかになりました。

詳しくはこちら→https://news.livedoor.com/article/detail/19321214/

やはり2020年12月の時点で株式会社ユーキャンが行った意識調査では、以下の結果が出ています。(出展:https://www.u-can.co.jp/topics/research/2020-12-2/


こちらでも78%がテレワーク継続希望となっています。

というわけで、だいたいのコンセンサスは、今後もテレワークを継続したいとなっている。

でもテレワークって、未曽有の「働き方革命(生涯現役で働けるか)」じゃないの?長年親しんできた通勤形式の働き方が、コロナという「外圧」でむりやりひっくり返されたから、有無を言わさず実施になったんじゃなかったっけ?

そのとおり。でも、緊急事態が解除され、GOTO何とかで人の移動が促進される世の中になっても、人々の意識は上の調査などのとおり「やっぱりテレワークいいね!」「これからも続けたいね!」となっています。

かくいうぼくも、はっきり言ってテレワーク導入でほっとしている一人です。

なぜか?

テレワークでは、「黒い霧」じゃなかった「黒いボールペン」が避けられるから、なのです。

というわけで、架空の会社の架空の人々のお話ですがいってみます。でも皆さんある程度おなじみのお話とは思います。

むかしむかし、ある会社にAさんというかわいそうな勤め人がいました。

入社したてのAさん。当時はパソコンがやっと普及しだした頃で、本社からの連絡はテレックス。「一太郎」という文書作成ソフトが導入されていましたが、大部分は手書きで作っている時代でした。


いまだ現役の一太郎。すごいぞ!https://www.ichitaro.com/

 

一生懸命作成した文書が、上司の決裁で真っ赤に修正されて帰ってくることもしばしば。もちろん書き直して再提出するのですが、そのうち謎の展開に気づきます。

定型の同じような書類に書く場合は、書類を何枚作成しても書く内容もほとんど同じですが、なぜか、同じような内容なのに「修正しろ」と何度でも帰ってきてしまう書類や、全然フリーパスで通ってしまう書類があることに気づき。

飲み会でとある先輩が教えてくれました。

「Aさんは、すべての書類を青いボールペンで書いているけれど、本社向けの書類は黒いボールペンで書かないとダメなんだよ。本社用のを青で書いたら、上司のハンコがないと認められなくなっちゃうんだよ」

本社用は黒で書くようになったら、すんなり通るようになったのでした。

とある吉日。

本社から管理職が出張してきて、その人の指示で本社用の文書作成を命じられました。

黒ボールペンで、とさがしたら、あれ?青しかない?いつもペン立てに黒を数本立てているはずなのに?

管理職から怒号が飛びます「Aさん、どうしました―!」

この怒鳴り声に、事務所を掃除していたパートのおばさんがびっくりして飛び上がってしまいました。

わああ早く書類書かなきゃ!同僚や先輩に「黒ボールペン貸してくださいー!」とお願いするのですが、今日に限ってみんな知らんぷり、そそくさと逃げていきます。

ままよ、青ボールペンで作成し管理職へ

管理職の人は、別に機嫌を悪くしたふうでもなく、書類をうけとると、しげしげとながめて

「Aさん、本部向けの公式書類は黒ボールペンで書くことは知っていますよね」

「公式の文書は、様式の印刷の黒と、ボールペンの黒で整合性を持たせなければならないのですよ」

「この整合性がないと、業務監査が来た時に業務事故として報告されてしまいます。」

「ですから、Aさんが作ったこの文書は廃棄しますので、整合性のある文書を書き直して下さい」

と、丁寧な、でも誰にでも聞こえる良く澄んだ声で言うやいなや、Aさんの作った文書をばりばりばりーとこれ見よがしに破いてしまったのでした。


掃除のおばさんは泣きべそをかいて給湯室に逃げ込み。

Aさんはぴゅーと自分の机にもどると、おおお誰かが黒ボールペンを置いてくれた!さっそく書類書き直し。

管理職にもってゆくと、何事もなかったように

「ありがとうございます。業務継続執行ください」

と無罪放免になり。

黒ボールペンの戻った机で、先輩たちと笑顔の楽しい業務の一日を続けたのでした。

実は、Aさんは気づいていたのです。

「これはプログラムだ」

先日の飲み会の時、黒ボールペンの話になり

「昔は、青ボールペンで書いたら、定規でぶん殴られたなあ」

なんて「武勇談」を聞いていた。で、ははんこれは儀式だな、と感づいていた。

知らぬは掃除のおばさんばかりなり、でかわいそうに泣きながら給湯室に逃げ込んでしまったのでした。

というわけで、管理職の人も、黒ボールペンをあえて渡さなかったみんなも、日本株式会社の日常業務の一コマで、とくに驚くことでもなくなっており。

こうした日々が淡々と続いていくのでした。

時代は変わって、定規でぶん殴ることはなくなり。爽やかに「事由説明」してくれるようにはなりました。ははは

こういう「日勤教育」が仕事の一部だ!と考える機関にとっては、テレワークは憎らしいことこの上ない業務形態です。定規でぶん殴りたくても、ぶん殴る対象が出社してませんから。

というわけで、あの手この手で出社しなければならなくなるよう仕向けますが、それは別の記事にします。

Aさんの場合、飲み会にそこそこ参加し、こうゆう通過儀礼があるぞということを察知していました。しかし、通過儀礼がなくなれば飲み会の必要性も半減し、飲み会命の人にとっても生きにくい世の中になってしまったと思います。


フィジー「火渡りの儀式」

https://www.tohotravel.com/fiji/images/culture_fire01.jpg

 

なんで最初から全部黒ボールペンにしないの?その理由は「黒ボールペンは本社宛正式文書の格にふさわしいボールペンであり」「略式の決裁書には青で書くこと」「下請け業者への発注書は青じゃなきゃダメ。黒は禁止」とかすさまじい種類の文書それぞれにどんな書き方をするのか、が「決まって」おり。先輩社員にきいてみると、

「Aさんそれはマニュアルに載ってますよ」

ということで必死に探すのですが、「下請け業者への文書は、強圧的と取られないように丁寧に記載すること」とはあっても「間違っても黒で書くな」とは記載されていないのでした。ははは

なぜなら、「黒で書くな」というのはAさんのいる支局のみのしきたりだったりして、成文化されてない以上、 飲み会でインフォーマルに伝達するしか分かりようがなかったからでした。

テレワークなら、こういう儀式の蔓延はふせげるか?

儀式なしでも仕事はできる、という一つの選択肢の可能性は提示されたと思っています。

さて、こういうしきたりやプログラムは、民間では日本ならではで(軍隊組織では、外国でもまだある)、他の先進諸国はどうかというと、

アフターファイブは個人の時間です、ということでイタリア人なら彼女とナポリタンを食べているであろうし、ニューヨーカーだったら、苛烈な生存競争に敗れないために、MBAだの資格だのの勉強をしているかもしれん。いずれも個人の自由として、自発的に行っていることである。少なくとも、飲み会でへべれけになった先輩に「定規でぶったたかれたんだぞー」と脅されながら過ごすよりはましだと思います。

で業務時間はどうかというと、文書をばりばり、なんてバカなことには時間は使わず。青?黒?というレベルの「慣習的規則」、マニュアルに書いているようで書いていないという意味不明な規則ではなく、明確に誰でもわかる実利的な規則に従って効果的・効率的に業務が執行され、結果残業も不要で成果達成できました、となっていると理解(ニューヨークの場合。イタリアは私語でぺちゃくちゃ、多少効率落ちたりして)。

その結果、日本の生産性は先進国間でいちばんほにゃららになってしまっているのでした。だって仕事以外のことばっかりしているんだもん。。。。

3000字を超えたのでこのくらいにします。注意すべきは、これまでのしきたりを押し通そうとすればテレワークだろうがいつか抜け道が発見されてしまうので、その前に、これまでのしきたりで、改良できるところはどこだろう?と考えることだと思います。そうすれば、将来、形は3密の通勤形態に戻っても、安心して出社できるような場所に、会社も進化していることと思います。

ではでは。。。

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