ブギウギ考:日本のガラパゴス脱出にむけて

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ガラパゴスとは対極のコスモポリタンなアメリカ。そしてその名曲In the Mood.


https://www.youtube.com/watch?v=c2aqHGaSxRI

 

あれ?これってブギだっけ?ジャズだっけ?この記事で明らかにします。

で、記事スタート。

日本人がいやおうなくグローバリズムの波にのまれた明治時代。ちょんまげを切り落とし、刀を差すのはやめましょう、という未曽有の大変革ながら、列強の血も涙もない帝国主義に脅かされ、「変革しないと死ぬかも?」と必死に「文明開化」を推し進めたのでした。

機関車だの鋼鉄船だのについては、理系の話でもあり。もともと数字の計算は得意な日本人なので、すんなりと吸収し、大正時代までには列強も驚く水準に発展できた。

一方、思考、美意識、哲学といった、人文系についてはどうだったか。「人の上に人を作らず」というのを一生懸命理解しようとしながら、やっぱりご飯にみそ汁だねー、と日本古来の文化も捨てきれず。

こうして、今日まで続く日本的な西洋自由主義文明が生まれたのでした。

明治の知識人たちは盛んに洋行して、西洋の文化を学び。

山本芳翠という芸術家もその一人で、ううむ、西洋人もあっと驚くような西洋画をかいてやるぞー、と発奮し。

西洋人に認められるためには、西洋絵画のヒエラルヒーにおける最上位の「神話・歴史」を、西洋人も認める画力で描き上げよう、ということで、まずモデルとなる絵を選定。

ニコラ・プッサンの「ネプチューンとアンフィトリテの勝利」を選びました。ちなみにニコラさんはなかなか有名な画家(バロック時代だけど画風は古典主義?)で、これも有名な新古典主義のアングルさんによる「ホメロス礼賛」にも友情出演しています。

(*ほかにも、ラファエロ「ガラテアの勝利」1511年や、ブグロー「ヴィーナスの誕生」1879年、そしてフランソワ・ブーシェ「ヴィーナスの勝利」1740年の焼き直しなど諸説ありますが、ここではプッサンさん説をとっています)


ネプチューンとアンフィトリテの勝利(1634年)

 

さて、この申し分ないギリシア神話の大作に、勝るとも劣らない日本の絵画にするためには、やっぱり和魂洋才だ!と日本のとある神話を選んで、勇躍作成。その結果が。。。。

「浦島図」でした。


浦島図(1895年)

 

ううむ、「浦島太郎」は神話だったのか?

ピンクという微妙な色の着物を着ているのは、ブラジルのストリートチルドレンではなく、カメと玉手箱というアトリビュート(*)によって、浦島太郎であることがわかります。

*アトリビュート:持ち物。白百合を持った青と赤の服装の女性がいたらマリア様を表す、など。

*アレゴリー:寓意。抽象的な概念を具象化したもの。サイコロの絵は幸運、頭蓋骨は死、とか。

そして、そのあとを、白装束で髪を振り乱して追ってくるのは、精神病院を抜け出したお姉さんではなく、乙姫さんだということがわかります。

うううむ!あっけらかんとした「ネプチューン」にくらべ、はっきり言ってなんちゅう気味の悪い「浦島」じゃ!と一瞬引くように見えて。

そのおどろおどろしいオーラに、おもわず引き込まれるように見入ってしまうのでした。

アニメの美形キャラに馴らされた素人の目から見れば「これは我が家の居間にはかざれないな」ですが、それでも見る人に衝撃をあたえ、ひきつけて離さないエネルギーを、本当に絵を知っている人たちは「畸形の美術」といって、国宝級とみなしているそうです。

ちなみに、「裸婦図」という絵があり。


裸婦図(1880)

 

この、欧米人画家の絵としか思えない絵も、山本芳翠の作品です。つまり、浦島図のおどろおどろしさは、欧米人の絵みたいにしようとしたのに、失敗してそうなっちゃった、のではなく、わざそうした、ということに注目。

なお、ぼくが飾りたいなーと思う絵はこちら。


脱線しましたすみません

 

さて、日本の第2のカルチャーショックは、終戦とアメリカ進駐軍の乱入。

理工系の出来事では、テレビ、洗濯機、冷蔵庫が市民の家庭に導入されました。

一方感性の世界では、アメリカのアートが日本を占領し。

このうち、ブギというのがあります。


https://www.youtube.com/watch?v=8of3uhG1tCI

 

進駐軍が日本人を洗脳しようとしたのか、はたまた日本人の方から「軍国主義なんてまっぴらだ!自由なアメリカの文化を学ぼうぜー」と積極的に歩み寄ったのかはわかりませんが、空前のブギウギブームが起こり。


東京ブギウギ

https://www.youtube.com/watch?v=9FCmuZXLt9g

ううむ、ブギ?まあ、ワルツとかじゃないし、たしかにブギっぽいよね。。。。

 


ホームランブギ

https://www.youtube.com/watch?v=qKZIHm9Ifmo

元気いっぱい!大好きな「ホームランブギ」。でも、ブギちっくじゃないよね?進駐軍の命令で「ブギ」という名前をつけなきゃならなかったのか?

 


買い物ブギ

ここまでくれば、いうことなし。

(歌詞に現在では不適切、とされる言葉があるのでリンクできず。でも大好きな曲です。)

 

ということで、思い切り戦後のポップアート開幕したのでした。

山本芳翠との違いは、刹那的なキッチュそのもの、でも人当たりが良くてあっという間に国民の間に広まった。

焼け跡からの復興へとても大切な心のよりどころとなった重要なムーブメントだったと思います。

さて、ここまで読んで、ぼくが日本の芸術をけなしていると思った人はいないでしょうか。

そう思った人は、日本のガラパゴス化に気づいていない人です。あるいは、知らないうちに、日本のガラパゴス化を促進している人です。

ガラパゴス化というのは「伝統墨守唯我独尊」を悪い方に突っ走った結果として起こる現象です。

そもそも「ネプチューンとアンフィトリテの勝利」は美しいけれど「浦島図」はきたらなしい、なんてレッテルは誰が貼れるのでしょうか。

また、「買い物ブギ」は「Boogie Woogie Bugle Boy」とかけ離れているから、ブギじゃない、なんて誰が言えるのでしょうか。

要するに、芸術はこうじゃなきゃ!とか、ブギになるためにはこうでなきゃ!という固定概念にとらわれていくと、文化の混血現象であるグローバリズムから取り残されて、ガラパゴスになってしまうぞ!ということを言いたいのです。

確かに、この記事で「浦島図」や「買い物ブギ」のことを茶化してはいますが、正しい!間違い!ということは言っていません。

言いたいことは、こうした「オリジナルとかけ離れているけれども、独立したアートが世界中で生まれており」「こうしたアートの相互理解がないと孤立してしまいますよ」ということなのです。

ブギとは似ても似つかない「買い物ブギ」ですが、日本ならではのポップアートなのです。

ナポリタンスパゲッティというのがあり。

スパゲッティにケチャップをかけるなんて、冒涜だ!という人は、脳みそがガラパゴス化している人です。

好きなら好き、嫌いなら嫌いで、そういうスパゲッティがあっていいじゃん?何がおかしいの?というのが今の世界なのです。


というわけで、

お寿司にしても、

①カッパ巻きみたいな手巻きですが、キュウリの代わりにイチゴ、海苔のかわりにクレープで撒いたやつとか、②照り焼きマヨネーズ(牛肉)をにぎりみたいにしたのとか、要するに江戸時代の人から見たら、ぎゃあああーとても食べられない―!なんていうのが世界中に伝播しています。ちなみに、①はフランス、②は日本で発明されたらしい。


①その名もMiss Pink。シャリがいちご色に染まっています。

 白いのはマヨネーズかな?

出展はhttps://rocketnews24.com/2016/03/22/725509/

 


②北海道牛の照り焼き寿司

出展はhttps://cookpad.com/recipe/3491298

 

一方で、

浮世絵みたいに、日本人のふつーの日常を版画にしていたら、その気はないのに芸術の本場で有名になったというのもあれば、新渡戸稲造みたいに、西洋人の言葉で武士道の解説書を出版して、大いに理解(尊敬)されたりとかもあります。

つまり、ガラパゴス化、国際化、なんて大上段に構える必要はなくて、自然にコンタクトしてくるようになった異文化、それがアニメ命の留学生であろうが出稼ぎ労働者であろうが、そういう人たちと一緒になって、ふつーの日常・常識を彼らにもわかる言葉で伝え、交流するうち、作り出されてくるなにか―それが音楽だろうが、お料理だろうがーを自然に受け入れられるようになれれば、知らないうちに日本自体がグローバルな国になっているのではないでしょうか。

いままで食わず嫌いだったお料理や絵画、今までの常識の外にあった考え方や表現を、少しづつ体験していけば、もっと世界の人々とわかりあえるようになれると思っています。

冒頭の名曲In The Moodはジャズですが、ブギが大切な構成要素になっています。いろんな国、いろんな民族の文化が構成要素となってまじりあい、In the Mood みたいなステキな「地球人の文化」が生まれたらいいなと思っています。

ではでは。。。。

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