戦国時代のビットコイン:茶の湯のお話

Tags:

古今東西の戦乱の世を統一した英雄たち。始皇帝から始まり、ジンギスカンや信長など、武力で制圧したかに見えるのですが、実は経済力の裏付けが必須だった。

武力と経済力は、どちらがニワトリでどちらが卵か?という関係で、残虐な武将というイメージのジンギスカンにしても、実は戦争を仕掛ける前に、第三国の隊商などを活用して、こっそり、かつじゃんじゃん仮想敵国と商売して敵の弱みを探り、十分儲けてから「さあ力でボコって略奪するぞ」と武力行使に及んだのですが、最後のステップである戦争ばかりが目立って歴史に残ってしまいました。


戦国時代の趨勢に決定打を与えた茶道

 

徳川家康の場合はもっとシミジミしています。

人質時代だったか?領地に里帰りする許可をもらい、お供の人と領内の田んぼを視察していたところ、あれ、すぐわきで農作業しているのは、近藤という家来じゃね?

「おーい近藤ちゃん。ぼくだよー」と声をかけました。

ところが近藤さんは、知らん顔をして農作業をつづけています。

とろいやつだなー、ともう一度声をかけようとした家康を、お供の人が制止。

「殿、分かってやってください!あいつは侍なのに貧乏で百姓の内職をしていることを殿に見られたくないんです」

あああ、そうだったのか!

そしらぬ風にあぜ道を通り過ぎる家康。しかし「うううすまん、いつかはこの家康が我が国を立派に繁栄させて、誰も副業しないでいいようにしてやるから、それまでのがまんだ」と、頬を涙に濡らしており。一方で、近藤さんの方も、しゃがんでカマをいじりながら「殿、我ら家臣がかならずや殿を人質の境遇から救い出しますゆえ、それまでご辛抱を」とやっぱり涙。両者の声にならない会話を心で聞いたお供の人もまた涙の、少年漫画を地でゆく感動巨編になっていたのでした。

 

でも、本質は感動でも涙でもなんでもなく。

経済力がなければ弱者として踏みにじられる、ただそれだけのことです。

(*ちなみに、このエピソードは作り話で、元ネタは家康のお父さんと家臣のお話(三河物語)らしい。https://www.sankei.com/west/news/150406/wst1504060024-n3.html

 

世の中ゼニ、銭、ゼニ。やだなあ。

さて天下統一を実質成し遂げた信長ですが、人質まではいかずとも、最初は弱小領主に過ぎず。どうやって戦国最強の軍事力を整備するためのゼニを稼いだのか。

 

ここで本稿の核心に到達しました。

当時「ゼニ」といっても全国で通用する貨幣なんてなくて、どれだけ農産物を生産できるか、すなわち「石高」が勝負だった。要するにどれだけ広い領地を持っているかが重要であった。

ところが、信長は、もっといい「ゼニ」はないのか?とコペルニクス的転回を思いつきます。

 

すみません、ここで突然ですがお話を現在にワープさせていただきます。

現在では「ゼニ」そのものすなわち貨幣があり。そして貨幣の獲得には、アダム・スミスの言う通り「産業こそが国のパワーの根源だ」「価値は労働によって決まる」、つまり労働によって産業を興隆させた国が経済力を獲得し強国となっています。


ぴよぴーよ速報:https://www.youtube.com/watch?v=1VhIvVffHU4

 

ところが、ブロックチェーンという技術革新で、伝統的な労働とは違った形でパワーの獲得が可能となっています。

その形とは「マイニング」そして、富の名は「ビットコイン」。

マイニングというのは、はしょりますが、ITアルゴリズムによってビットコインを電子的に「採掘する」こと。これは電算処理であって、農業や産業ではありません。しかし産業で、貨幣という「価値指標」に換算されるパワーが創造されるように、マイニングでもビットコインという「価値指標」に換算されるパワーがやはり創造されているのです。

そして、マイニングで誕生したビットコインは、その保有と売買によって価値が何倍にもあがってゆき。

つまり、在来の生産手段を持たない人でも、首尾よくビットコインが入手できれば、恐るべきパワーを獲得したも同然と言える世界になっています。

 

ここで、信長に戻ります。

アダムスミス言うところの農業・産業で武田、今川等の超大国に脅かされ、経済力の重要さを思い知らされた信長は、なんかビットコインみたいなパラダイムシフトがないのか?と悩んだところ。

 

ありました。その名も「茶の湯」

 

といっても、最初は近隣諸国から奪った農地による産業で経済力ひいては武力を強化し、日本の中で信長に逆らえる武将は少ない、というところまで持って行き。

信長の言葉は神の言葉である、くらいまで支配強化された勢力圏が築けたところで、そのシマの中で「茶の湯ビットコイン計画」を実行に移します。

武将を集めていわく

「今回千利休に作らせた楽焼(湯のみの一種)は一国と同じ価値がある」

諸国の武将は、これを聞いて、どわわわー!とどよめき。

そして「武将のなにがしは、今回の戦で大きな手柄があったから、この楽焼を褒美に与える」と宣言。

楽焼をもらった武将は「おおおおーこれは新たに一国一城の主にしていただいたと同じご褒美!喜んでいただきまするー」と平伏して拝領し。

並みいる諸将は、これでなにがしも一国一城の主か!と一目も二目も置くこととなりました。


重文 黒楽茶碗『大黒』|長次郎

出展:https://tea-ceremony-tokyo.club/

 

信長の狙いは、土地以外の価値を作ることによって、土地すなわち生産力が信長以外の武将に集中することを避けることでした。

一方、武将のほうでも、すでに大方平定されてこれ以上分割が難しい土地そのものよりも、神である信長によって、土地と同じ価値がある!と承認した湯飲みをもらうことで地位権力が得られるなら、それでもいいや。となり。


舶来品。左が唐物、天目茶碗。右が高麗物、井戸茶碗

出展:https://art.iroiro.co/article/art/chawan/teabowl-juubun

 

この「湯のみ作戦」で重要なカギを握ったのが千利休さん。

信長は「湯のみつまりビットコイン」を使用あるいは配布する方なので 、「マイナーつまり作成者」が必要であり。

このマイニングも、ちゃんとした電子計算をしないとビットコインができないように、湯のみの方も、贋作(偽札?)と明確に区別するために「純正品です」という保証が必要になり。

「マイニングにおける正しい電子計算」の役割を果たしたのが千利休でした。

千利休は、いろいろな湯のみを鑑定して、気にいったのには「利休印の名品」みたいな保証を与え。

信長が「これは一国に値する楽焼だ」といったその楽焼は、あらかじめ利休が目利きして「本物です。スーパーで売っているようなテキトーな乱造品じゃないよ」と保証したからこそ、武将も安心して拝領できた。

湯のみそのものはビットコインのごとくであり、湯のみで億りびと!が多数誕生したのでした。


元祖マイナー、千利休さん

 

このシステムを大成させたのは、信長の後を継いだ秀吉。

信長も独り占めしようとして達成できなかった『天下の三肩衝(かたつき)』と呼ばれる最高の3つの器を独占入手し、新たな神であることを証明するとともに、神の証明にもなるくらい、器が重要なんだよ!と諸侯の洗脳に成功し。領地などと織り交ぜて、みごと諸国の大名の懐柔に成功したのでした。


左から「初花(はつはな)」「新田(にった)」「楢柴(ならしば)」

ならしばは1657年に火事で行方不明になり、復元品です。

出展:初花、新田はhttps://tyanbara.org/business/sengoku-history/2018010125032/

楢柴はhttps://www.sadogu.co.jp/sadouguhanbai/ProductList/tyaire/narasibatyaire.html

しかし、このころから、茶道を政治経済の道具としてしか見ないビジネスオーナー秀吉と、実はわびさびが好きだった芸術家千利休は、そりが合わなくなり始め。きんきらきんの茶室を作って喜ぶ秀吉には、湯のみを政略の道具以上にしようとする利休は邪魔になり、うまく理由を見つけて処刑してしまいました(切腹申しつけ)。

 

一所懸命の武将たちに、所領と同等以上の価値を見出させる湯のみは、美術品としても超一級でなければ務まらなかったと思います。そして、利休はそういった超一級を見抜く本物の芸術家だった。

時代を超えて今日に至っても、初代長次郎の楽焼は3億円に相当するなどと評価されています(黒樂 銘万代黒)。一方、ビットコインはどうなるか?

ぼく個人は、とある理由により、この原稿を書いた2021年2月7日時点では、ビットコインは買っていません。この理由となっている制約条件が解消されれば、投資対象として買うかもしれません。

(*4月26日、とあるビットコイン投資始めました。詳しくはこちらの記事で。)

この記事が、皆さんの投資戦略を考えるうえで、一つの参考になれば大変幸いです。

ではでは。。。

Tags:

コメントを残す

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。