時代を先取りした川崎航空機(その2)

前回の記事で、日本がようやく世界のスタンダードといえるコンセプトを取り入れることができた飛行機が飛燕だった、というところまで書きました。

零戦や一式戦じゃないの?いやいやドッグファイトの時代じゃないんですよ

二式戦や雷電じゃないの?いやいや戦闘機との格闘戦もまだまだ必要なんですよ

ということで、どちらもできるバランスの取れた飛行機が必要となっていた。

そのためになにが重要なのか。

このブログの読者のみなさんはすでにお気づきですよね。

そうです。エンジンです。

本当に高性能の飛行機にするためには、パワーレシオ最強、そして空力特性も最高の、余分な脂肪をそぎ落として鍛え抜かれた筋肉のような、そんなエンジンが必要だった。

というわけで、「液冷エンジン」が必須になっていたのです。

なぜ液冷エンジンなの、については前回記事に書きましたので、ここでは一行で要約します。「空冷はエンジン本体で温度変化を耐えるために無駄な余裕が必要なのと、空気抵抗でまくりでせっかくの馬力が台無しになるから」

*アメリカはR2800とか巨大なタービン過給機を付けたりとか、空気抵抗もへったくれもなく、ともかく大馬力のバケモノエンジンでねじ伏せるという外道の行いに及びましたが、これは例外です。こちらの記事をご参照→P47

欧米では、英国ケストレルからパッカードマーリンまで、スピットファイヤ、P51に代表される名戦闘機の液冷エンジンを開発。ドイツもBMWやベンツの液冷エンジンを開発した。

日本で、この現実をスルーせずに受け入れたのが川崎航空機だった。

BMWエンジンを参考に国産化し、95式戦という傑作液冷戦闘機を生み出し。でも複葉だったのでスピードなどに限界が見えていたことから、単葉にして後継をねらったキ28は格闘戦至上で陸軍をよろこばせたキ27に正式採用を取られちゃいましたが、このキ27すなわち97戦が、旧式のI16に追いつけなくて逃げられちゃうじゃん、というショッキングな事態が明らかになり。

95式戦闘機 https://blog-imgs-157-origin.fc2.com/t/e/m/tempunauts/IMG_0967-1.jpg

 

 

キ28試作機

https://www.1999.co.jp/11241267?srsltid=AfmBOopE5l9Z9OnD0D7xYr4jCmYLZ4d7Xl9w4WXtKfaNN51dzDVC-Y9g

 

 

97式戦闘機 http://www.hi-ho.ne.jp/a1takeda/ki-27.html

 

 

I-16 出展 https://flyingheritage.org/Explore/The-Collection/Russia/Polikarpov-I-16-Type-24-(Rata).aspx

 

 

川崎は、へへんやっぱりくるくる回っているだけじゃだめじゃん、そらみたことかー!と、一撃離脱もできる戦闘機の開発を着々と進めたのだった。

といって、格闘戦大好きの陸軍に採用されるためにも、軽快な操縦性は必須だった。

◎重戦闘機のように高速で重火力を持つ

◎軽戦闘機のように軽快に格闘戦を行う

格闘戦というと、いかに小さい旋回半径で敵の後ろに回り込むかなのですが、土井さん(飛燕の設計者)は「旋回半径が大きくなっても、その分速く飛ぶことができれば、相手の懐にもぐりこめるぞ」ということを目指した。

この結果

実態は97戦や一式戦よりはとろいが欧米の戦闘機に比べれば敏捷であり、かつ二式戦よりは遅いにしても欧米戦闘機と引けを取らないスピード、というかんじになり。いいとこどりの「中戦」を生み出すことに成功したのである。

恐るべき傑作機。その名は?

「三式戦飛燕」

飛燕 http://hikokikumo.net/OldHis-Mil-Hien-001Ripier.htm

 

 

日本の戦闘機なので、日本人ごのみの繊細な操縦もできるようになっており。おもにジェミニくん情報ですが。。。

飛燕の操縦性は、多くのパイロットが非常に高く評価していた。

  • 資料によっては「舵の利きもよく、旋回、横転は実にスムーズだ」と評されており。高速機であるにもかかわらず、日本のパイロットが求める「舵の利き」や「運動性」が優れていた。
  • これは、飛燕が目指した「軽戦の格闘能力」をある程度保つという「中戦」コンセプトが、機体設計の面では成功していたことを示しており。高速性能と軽快さを両立させていた。
  • ただし、高速での急降下時には舵が重くなるという欠点も指摘されており、これは一撃離脱戦法を重視する欧米の重戦闘機と比較した場合の弱点となった。といって、まともな急降下しようとしたら空中分解しちゃうという、日本機のスタンダードよりはっずっとましだけど。

日本機離れした飛燕のクオリティは急降下以外にもあり。

  • 従来の日本機(零戦や隼)は、運動性を最優先するために防弾装備がほとんどなかったが、飛燕は、
    • 防弾鋼板(防弾鋼)を装備
    • 自動消火装置付き燃料タンク(ただし、本格的な自動防漏タンクではない)
    • 防弾ガラスの採用 など、防御力を高める措置が取られており、日本陸軍戦闘機の中では最も強固な防御力を持つと評価された。
  • P-51 などの欧米の重戦闘機は、より徹底した防弾装備と強固な構造を持っていたが、軽快性との両立という点では最良のバランスだった。

https://www.tamiya.com/japan/products/60789/index.html

 

 

世界最高の液冷エンジンDB601の発展であるハ40を装備したことからくる、スピードについては

  • 高速性能の実現: 本家DB 601と同じかそれに近い出力が出ていれば、当時の主力機であった一式戦闘機「隼」や二式戦闘機「鍾馗」を凌ぐ高速機となれたであろう。

となっており。

でもスピードを出す飛行機というのは、えてして低速性能すなわち着陸性能がダメダメになっちゃうのですが、飛燕はどうだったかというと、飛燕は従来の日本機(一式戦「隼」や九七式戦など)に比べて機体重量が増加し。

  • 翼面荷重が増した分、離着陸時の速度は、軽快な軽戦闘機に比べると速くなり、離着陸の感覚はより重いものになった。
  • しかし、離着陸時の安全性を重視し、特に自動式前縁スラット(翼の前縁から自動でせり出す装置)を採用するなど、低速時の安定性を高める工夫を凝らし。これにより、従来の日本機ほどではないものの、欧米の同世代機(特にBf 109などの翼面荷重の大きい機体)と比較して離着陸は容易であったという評価も存在。

ということで、十分実用的なレベルだったんじゃね?これで着陸難しいっていうのは練習不足だと思います。なあんて

結局、中島や三菱が低馬力空冷エンジンに妥協して、小回りの利く軽戦ばかり作って、言っちゃ悪いがお茶を濁したのに比べ、川崎航空機は、時代を先取りして一撃離脱に必要なパワーを供給する液冷エンジンを開発した。

飛燕のエンジン https://www.kawasaki1ban.com/report/49639/

 

 

泣く子も黙るDB601のライセンス版を搭載した飛燕を、連合軍パイロットは次のように評価しています。

◎「従来の日本機にはない高速性、急降下性能、防御力を持つ高性能機」

◎従来の零戦などの日本機と異なり、高速でのダイブで連合軍機から逃げ切ることが可能だった。これは、連合軍パイロットにとっては大きな驚異となった。

◎零戦などと比較して防御装甲(パイロット背後)や自動防漏式燃料タンクを備えており、機体の堅牢性が向上していた。

◎翼内に搭載されたドイツ製20mm機関砲(MG 151/20)などの強力な武装(一型丙、二型改など)は、連合軍のパイロットにとって非常に危険な存在となった。

◎鹵獲調査でも「攻撃力と防御力に優れた素晴らしい機体」と評価された。

そのわりに、零戦とかみたいな大戦果や戦場エピソードとか、ぜんぜん聞かないよね?

なぜか?

それは「エンジンの稼働率が低くて、そもそも離陸できないとか、途中で引き返すなどの機体が多かったから」

戦闘空域まで飛んでいけなければ戦果以前に戦闘そのものが成り立たなかったのであった。ははは

なんとなく四式戦ちっくですよねー整備完調だったら無敵のはずなのに。。。

ここまでくれば、あとはお決まりの「五式戦」ですよねー

三式戦と五式戦 http://www.hasegawa-model.co.jp/product/07454/

 

 

「飛燕は、液冷エンジンを空冷エンジンに換装した五式戦闘機として、末期に米軍機に対して高い評価と戦果を上げています。これは、飛燕の機体設計自体は優秀であったことの有力な証拠です。」とジェミニも言ってますが、これは終戦近くになって空冷でも液冷DB601/605と同等の強力なエンジンが出てきたため(金星60型)、これに換装したら、飛燕本来の性能が発揮できたということなのである。

もしDB605の最新型を完璧な整備で飛燕に装備し。五式戦と「飛燕対決」させたら、液冷型三式戦が空冷型五式戦に勝つと思います。

つまり、液冷エンジンが100%稼働していれば、五式戦みたいな切羽詰まった?みみっちい?間に合わせをしなくても、液冷三式戦の初飛行をもって日本は世界最強の飛行機を獲得していたのではないのでしょうか。

3000字を超えました。

日本離れした傑作機三式戦が、もっと評価されることを願っています。

 

ではでは

 

 

 

 

Tags:

コメントを残す