零戦に見る仕事のスマート化必勝法①

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零戦に見る仕事のスマート化必勝法①

休日の飛行機格納庫。こよーて君(自家用機)をワックスがけしていて、ふと主翼後縁、補助翼との隙間を最小化している整流板に気がつき。

うううむ!アメリカがうまく2度の世界大戦を利用して世界最強の経済大国となった秘密は、これだな!とうなってしまいました。

こよーて君は、Rans社というアメリカの会社の設計図もとに、ブラジルの会社がライセンス生産して作っています。

そして、操縦すればわかるのですが、なんちゅういい加減な、大味な飛行機じゃ!たとえば、横の安定性がほにゃららで、いつも左右のラダーペダルでおっとと、と調子をとる必要があり。日本の会社だったら、もっと素直で安定した、操縦(AviationA1)の楽な飛行機を作っていると思います。

でも、すごい上昇力だ!エンジン全開にすればぐわーんとあがっていくし、全閉にすればこれまたひゅーんと降下してくれる。

いかにもアメリカらしい豪快な飛行機で、おっとと、といつも軌道修正しながらも楽しく乗っています。

ぼくが知っているほかの飛行機と比較すると、例えばブラジル製のParadise P1(Blog29)(実はイタリアのテクナム社からインスパイアしてます)の場合、いったんトリムを合わせたが最後どこまでもまっすぐ飛んでゆき。また滑空降下率が良すぎ(不時着を考えるとよすぎるということはないのですが)、いくらエンジンオフにしても一向に沈下しないので、空港が見えるかみえないか?のはるか遠くから下降を開始しないと着陸できずに滑走路を飛び越しちゃいます。こよーての場合は、あれ滑走路直上で気づいた、というときでもすとんと降りてくれる。要するにParadiseはヨーロッパ的な、飛行機自身が自分でまっすぐ飛んでくれる安全設計ではあるが、離陸上昇が全然ものたりないし、はっきりいって操縦がつまんねーです。

そして、主翼後縁やフラップのつくりなども、ヨーロッパしてますで、フィレットなどLSA(スポーツ軽飛行機)のくせにちゃんとしています。

さて、アメリカンな「こよーて」はどうかというと

フィレットはなし。まあいいけど

翼端。

あれ、鋼管が羽布の中からまんま見えてるじゃん?

ぐおおおー!なんちゅう雑な処理をする奴だ!これじゃあ空気抵抗10倍、乱気流発生してろくにスピードも出せなくなっちゃうじゃん!

円形断面は、流線形断面の10倍の空気抵抗を生み、乱流も発生させる

(出展:https://pigeon-poppo.com/pressure-drag/)

でもよく見ると、ちゃんと対策してあり、例えばさっきの整流板だったりします。

これで結局Paradiseのヨーロッパ式な伝統的処理と変わらない効果を出しているのですね。。。。ううむまいった。

一方で、さっき出てきた「日本機の操縦のしやすさ」はどこから来るのでしょうか、ということでやっと表題の零戦です。

零戦は、圧倒的に優勢な欧米の航空戦力をやっつけるという不可能な命題を可能とするために生まれ、実際戦争の初期では可能にしただけあって、設計者堀越さんはじめ人間離れした努力の結果が詰まっています。

例えば主翼

出展はhttp://seafurry.cocolog-nifty.com/blog/2009/06/ww-612d.html

F4U(AviationE4)など、とても興味深い考察がいっぱい。参考になりました

イラストではあまり目立ちませんが、構造材の本数、配置、穴あけによる軽量化など、神がかった精密さで実施されており、日本人らしい緻密な計算、設計や実験で、アメリカ的な大味な設計では得られない細かいディテールとなり。

そして設計から生産に移った段階で、今度は世界一の技量を持った熟練工が登場します。零戦も整流フィレットを持っていますが、当時の工業技術では上記の細かいデイテールを1機1機全く同じに再現できないので、熟練工が各個体の状況に合わせて最適な形に引き伸ばしていたと言います(この辺は隼とかもおなじらしい)。

要するに零戦は日本人でしか作れない、すべてを最適化した飛行機だったということですね。

零戦のフィレット

しかし、一見スマート技術の結晶に見える零戦も、結局はグラマンにやられてしまった。これは零戦のスマートさがそのまま弱点になってしまったからです。

とここまで書いて、記事が長くなりすぎ。スマートゆえにスマートでない末路を余儀なくされた零戦と日本株式会社については、次の記事で続けさせていただきます。

 

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