アントノフ、と聞いて、皆さんは「ミリア」を思い浮かべると思います。
「ムリ―ア」「ムリ―ヤ」などとも呼ばれますが、この記事では「ミリア」で統一させていただきます。
飛行機ファンでなくても、あウクライナ戦争で破壊されたでっかいやつのことね、と思い至るかもしれません。
とにかくでかく。下の画像のように、エアバスA380もしのぎ。737だと2機以上もあるのでした。
True size of the Antonov : r/aviation
なんでこんなにでかいの?理由をまとめると以下のとおり。
- ブラン宇宙往還機の輸送: これがAn225開発の主目的。ブランを機体の上部に積載して運ぶために、これまでの航空機よりも遥かに大きなペイロード能力と機体サイズが求められた。
- 超大型・超重量貨物の輸送: 宇宙計画以外にも、巨大な発電機、風力タービンのブレード、ディーゼル機関車など、陸上や海上での輸送が困難な超大型・超重量貨物を空輸できる唯一の手段として、その能力が活用された。
- 既存機のAn-124の拡大: An225は、すでに大型輸送機として実績があったAn-124「ルスラン」をベースに開発。これにより、開発期間とコストを抑えつつ、さらに大きな積載能力と機体サイズを実現できた。

ブランを運ぶミリア
Soviet-era space shuttle carrier aircraft destroyed in Russian attack on Ukraine | collectSPACE
夢の超大型機ミリアですが、ロシアの狂った独裁者の手にかかってしまい。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻初期に、キーウ近郊のホストメリ空港での戦闘で破壊されてしまいました。機体は炎上し、胴体や主翼に大きな穴が開き、エンジンも大破するなど、飛行不可能な状態であることが確認されています。
でも、今日のお題はでかいほうのアントノフではなく、「軽飛行機アントノフ」についてです。
その名も「An2」。
1940年代に設計され、世界中で使われたベストセラー機です。冷戦時代の飛行機なので、西欧やアメリカなどではなかなか。。。ですが、ブラジルではたくさん飛んでおり、2020年の情報によると、ブラジルには少なくとも9機のAn2アントノフが登録されているとのことである。航空管制から外れているFIR空域で飛んでいる奴は登録していないのもあると思われ。飛んでいるAn2の数字はもっと増えると思います。2020年にはポーランドのPZL-Mielec社が1987年に製造したAn2が、最低入札額500レアルでオークションにかけられたというニュースがありました
500レアルというと100ドルまでいきませんからねーちゃんと飛ぶのだろうか?
ギャグではなく、100ドルでもちゃんと稼働できるのが買えるんじゃね?というくらい原始的というかタフというか、そんな飛行機がAn2なのだった。
ついた異名が「ククルーズニク(トウモロコシ野郎)」。要すれば、ジープとVWかぶと虫を足して2で割ったような飛行機らしい。どんな過酷な運用条件(気象条件とはいいません)でもとにかく飛んでくれる。

世界の名車かぶと虫
いきおい、複葉機です。

ブラジルで飛んでいる奴を発見。100ドルかどうかは不明
PT-FZF/PTFZF aviation photos on JetPhotos
複葉機ゆえに、以下の利点があり。
短距離離着陸(STOL)性能: 未舗装の滑走路や、非常に短い距離での離着陸を可能にするため。
低速での安定した飛行性能: 農業散布、輸送、旅客輸送など、多様な用途で安定して運用できること。
高い揚力: 重い荷物を運ぶ能力。
翼が2枚あることで、同じ翼幅の単葉機よりも大きな翼面積を確保して、より大きな揚力を発生させることができ。低速での安定性が高く、特に農業散布などの精密な飛行が要求される任務が得意に。
上下の翼を支柱とワイヤーで連結することで、構造的な強度と剛性が向上した。これにより、粗い滑走路からの離着陸や、悪条件での運用にも耐えうる頑丈な機体となった。
低速での失速特性が穏やかで、安全性が高い。パイロットから見たら、これが一番ポイントが高いなあ。
構造が比較的シンプルであるため、野外や限られた設備での整備が容易。これは、ソビエト連邦の広大な地域での運用を想定していたAn2にとって重要な要素であった。
一方で、いくつかの弱点もあり。
- とろい(遅い)。翼が2枚あり、さらにそれを連結する多数の支柱やワイヤーが存在するため、単葉機と比較して空気抵抗が大幅に増加してしまった。An2の巡航速度は非常に遅く(約60~110ノット)、現代の航空機とは比較にならず。長距離移動には不向き
- 整備がめんどい。精密な整備機械や工具は必要ないとしても、翼が2枚あり、支柱やワイヤーで連結する必要があるため、単葉機と比較して整備の手間が2倍になってしまう部分があり。
- やっぱりとろい(操縦性の応答性の低さ)。翼面積が大きいことや、高い慣性モーメントを持つため、ロール(左右に傾く動き)などの操縦に対する応答が比較的遅い傾向がある(Google Gemini先生より)。
あれ、複葉機なのに運動性が悪いのか?Geminiくんと対話した結果、以下の回答がありました。
- 「空飛ぶダンプカー」のような操縦性: An2は、頑丈な構造から、「空飛ぶダンプカー」と評されることがあります。繊細な操縦応答性よりも、荷物を大量に積んで未整備の滑走路から離着陸できる高いSTOL(短距離離着陸)性能が重視されています。
- 重い操縦桿: An2はアシストされたフライトコントロール(パワーステアリングのようなもの)を持たないため、特に乱流の中では操縦にかなりの「力」が必要とされます。旋回する際には、W字型のコントロールヨークを両手で操作するのが一般的とされています。
- ロール方向の操作性の重さ: 4枚の翼全てにプッシュロッドで制御されるフラップとエルロンが備わっており、フラップが下がるとエルロンも連動して下がります。巡航速度(約145km/h)でも低速飛行時(約70km/h)でも、ロール方向の制御に必要な力は「重い」と表現されます。
- 鈍重だが非常に許容度が高い: その分、多少の操作ミスやエネルギー不足の状態でも、パワーを絞って操縦桿を中央に戻せば、機首が下を向き、飛行を再開すると言われるほど、高い安定性と許容度を持っています。
なんとなく初級練習機みたいなテイストらしい。
一種のブッシュプレーンであり。道なき道じゃなかった滑走路なきロシアや東欧(ブラジルも)のど田舎においては、人も荷物もそこそこ運べ、農薬散布にも大活躍のAn2は得難き逸材として頼られたものと思われます。
変わったところでは「林業機」というのがあり。さすがに丸太は重すぎて運べなかったでしょうが、林業計画に必須の森林情報収集のために低速で飛び回り、測量などに活躍したらしい。
軍用でもパラシュート降下訓練などのほか、地上襲撃機としても使われ。ヘリコプターと空中戦をして撃墜されちゃったなどの伝説があります。

伝説ではなく、ベトナム戦争時に本当にあったらしい(パブリックドメイン)
ただ、北朝鮮だの共産圏の軍隊で多用された飛行機であり。撃墜されてもなんとかうまく落っこちて(不時着、パラシュート脱出などして)、うまく捕まることさえできれば、西側の捕虜になれて、はっきり言って捕虜生活の方がずっと人道的だぞ!という救いがあるとは思います。
非道な国のパイロットになると、人権蹂躙に耐えられず、戦争でもないのに自ら捕まりに行くのもおり。
「ベレンコ中尉」という言葉が脳裏によぎった人はじいさんです。脳裏によぎらなかった子供たちには「ベレンコさんというソ連のミグ25戦闘機パイロットが、ロシア本土から脱出し、自衛隊のレーダー網をかいくぐって函館空港へ強行着陸し。西側の保護を受けることに成功した事件」と要約しておきます。

函館空港へ高飛び成功したミグ25
https://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009030142_00000
An2にもどり。
最近では、エンジンをターボプロップに替え、空力特性などもさらに洗練させた最新型が導入されたか、導入する動きになっているらしい。

パイパーPA18 やセスナ150など、本当の名機は時代が変わっても多少の手直し(上の新形は別の飛行機みたいになっちゃったけど)で現在も飛びまわっています。An2もDC3等と並ぶ名機として、個人所有のたんなるレクリエーション機でいいから、世界中をもっといっぱい飛んでいってほしいと思っています。

農作業など、下方がよく見えるように工夫したAn2の側面風防
Why does the AN2 got the side cockpit windows sticking out? : r/aviation
ではでは
