失速訓練。失速できないと飛べない理由
まずは、十分安全な高度まで上がっていきます。本来200フィート以内の降下で完了させる動作ですが、ぼくはなるべく地上1000フィートまで上がってからやるようにしています。
エンジンオン・ストールとエンジンオフ・ストールがあります。ここではエンジンオフのほうをやってみます。
エンジンをほとんどアイドルまで絞って、機首をぐっと、でもおだやかに上げていくと、スピードが落ちてゆくとともに、垂直か?みたいな所で機体が震えだし、すとんと機首が下がります。これが失速です。
このときどちらかの翼がぐらりと傾いて落ちそうになるので、反対側のラダーを踏んでおっとっと、と水平に保つのがコツです。このときおっちょこちょいに操縦かんで修正しようとすると、アドバースヨーが発生してきりもみになっちゃうので、操縦かんは引っ張った状態のままであくまでロールは中立に保つのが鉄則です。
この後は引っ張っていた操縦かんをもどし(左右は中立を崩さない)、降下して速度が上がるのに合わせてスロットルを入れ、なるべく高度を落とさずに水平飛行にもどります。日曜飛行士にはちょっと怖いが重要な訓練ですね。
なお、ここまで大掛かりな失速ではないが、これも安全な高度に上がって行ったうえで、スピードを少しづつ落としてく練習もします。スピードが落ちると揚力も落ち、機首上げで主翼の迎角を大きくして高度を維持します。そのうち機首上げだけでは高度維持ができなくなり、今度はスロットルを入れてエンジンパワーで「飛行機を吊り」ます。それでも維持できず、最後はふわっと機首が下がって失速に入ります。この場合はあくまで高度は維持し、上記のようにぐわーんと上昇する、ということはしません。上記のようにがくんと翼が振られるような怖い失速ではなく、ソフトに機首が落ちるだけですが、これをマスターすることがとても重要です。なぜなら、この失速はまさに着陸時の理想的な飛行機の挙動であり、ゼロ戦乗りが言うところの「高度地上3センチで失速させろ」ができていれば、理想的な機首上げ姿勢、ほとんど降下率ゼロでメインギア(主車輪)がソフトに滑走路に接地し、直後ソフトな失速でふわりと前輪が滑走路に降りる。そして、ソフトよりも重要なのが、この降り方ができれば滑走距離を最短にできるという安全性からのポイントもあります。
ちなみに、上昇して失速という荒っぽいほうは、離陸時にエンジンが止まっちゃった!という場合を想定しています。このとききりもみに入らず機体の姿勢を保つことができれば、そのままなんとか一番障害物のない空き地などに滑り込むことができるからです。不時着時は、なるべく「坂を下から上に登るような接地」「森などの場合は、機首を木と木の間のスペースにつっこみ、胴体を守る」。こうすれば翼はもげても、人は助かります。無理に360度ターンして滑走路に戻ろうとすると、失速・きりもみで墜落してしまうので、前方左右30度以内のスペースに潜り込むようにします。
1946年製「飛行機操縦基礎」より(Manobras Elementares de Voo -1946)
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