いろいろな速度と高度

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いろいろな速度と高度

空気の中に浮かんでいる飛行機。自動車のように地面を直接走行しているわけではなく、空という気体が地面と飛行機の間に挟まるため、飛行機の本当の速度や高度を知るためには、飛行機と一緒になって動いている気流についても計算する必要があります。

  1. いろいろな速度

    ◎まずは基礎編。速度計は飛行機にとって最重要の計器で、計器飛行でこれがやられるとAF447便のように墜落します。でパイロットはいつも速度計を眺めていますが、表示されるのは「指示対気速度(IAS)」であり、必ずしも地上から見た速度と同じにはなりません。飛行機がどのような風の影響にあるかで「対地速度(GS)」は変わってきます。

    例えば、対気速度80ノットで、20ノットの追い風の場合は、対地速度は80+20で100ノットになります。着陸時に失速ぎりぎりの35ノットに落としても、滑走路は55ノットの速さで迫ってくるため、接地しても、あっというまに滑走路がおわっちゃうううう!わあああ!!!あべし!!!とオーバーランの危険が発生します。


    同じ対気速度80ノットでも、向かい風が20ノットの場合は、対地速度は80-20で60ノットになってしまいます。いつまでも目的地に到着せず、ガソリンだけが減ってゆくという怖い思いをすることになります。


    ◎応用編に移ります。現実には真っ向からの向かい風、追い風というのはほとんどなく、多かれ少なかれ横風成分が発生します。したがって「航空計算盤」というのを使って、「真対気速度(TAS)」つまり横風を打ち消す補正の分だけ発生した誤差を差し引いた「真の対気速度」を計算します。例えばRV(真航路TC)275°、VA(対気速度)130Kt、DV(風向)200°、VV(風速)35KTの場合の対地速度(GS)は、下記の写真のように算出されます。(算出の仕方は別の記事にします)。


    航空計算盤。この画像の前に風速35KTを入力しておきます。

    ◎これで正しい速度がわかったか?というと、うんにゃまだもう一つ「奥の院」があり。高度による速度の変化があります。基本的には1000フィート上がるごとに気温は2度下がり、大気密度は30フィート上がるごとに1hPa下がります。密度が下がればその分TASは増加し、結局1000フィート上がるごとに「IASの2%」に該当する数値が上がります。つまり、ざっくり速度計で80ノット、でも地上から5000フィートを飛ぶ場合は80+10%の88ノットがTASになります。なお、速度計自体も密度の変化の影響を受けるので、実際のスピードが88ノットでも表示は80ノットのままです。

    ◎ううむ、わからなくなった。。。という場合も恐れることはなく。この例の場合、飛行計画では88ノットとしておいて、スピード計では80ノットちょい上、そして実は5100フィートで飛んでいれば(これ以上の誤差は管制におこられます、ははは)、燃料消費も飛行時間もまあまあ計算通りで飛ぶことができます。コツは、ちょっと速め、ちょっと高めで飛ぶこと。そうするとスピードを稼ぎ燃料消費を低めにすることができます。風の影響は計算もよいが実際飛行機がどれだけ流されているかを体感しそれを3舵やスロットルで修正すればよいのです。

  2. さて高度の話になりました。これは速度ほどやっかいではないがいろいろあり。

    ◎まず基礎編。

    指示高度 (AI) は高度計に表示される高度。

    絶対高度 (AA) は、地面から飛行機までの距離。AGLともよばれます。

    真高度 (AV) は、海抜高度のこと。

    気圧高度 (AP) は、国際標準大気の気圧1013hPaに対応した高度である。

    ◎実際の飛行で使う基準(セッティング)

    QNH:飛行場の標高に合わせて高度計をセッティングすること。気圧は毎日変わりますが、飛行場の標高は一定しているので、例えばぼくのホームベースであるSDCN飛行場では、離陸前に「3200フィート」にダイヤルを合わせます。その時高度計の気圧表示窓に現れる気圧がその日の気圧ということである。QNHは飛行場近辺の低空を飛ぶときは特に大切です。


    海抜3160フィートの飛行場にて。左がQNHセッティング。「コールスマン窓(黄色い枠内)」表示の大気圧1023hPa。これがQNE(右)になると、気圧を国際標準の1013hPaに合わせるので、高度は300フィート近く低い2920フィートになってしまいました。

    QNE:といっていろんな場所から飛んできた飛行機が同じ空域に交じりあうので、羽田から飛んできた飛行機とブラジリアで離陸した飛行機がブラジリア上空でかち合った場合、ブラジリアの気圧に基づいた高度計セッティングと、羽田の気圧に基づいたセッティングでは同じ高度でも明らかに高度計の針は違う高さを指してしまい。ニアミスなどの原因となるので、「じゃあ一定の気圧を決めてみんなこの気圧で高度計を調整しましょう」としたのがQNEです。そして、その気圧は国際標準大気1013hPaとなっています。

    ふつう、みんなQNHで離陸し、ある一定の高さまで行ったらQNEに変更します。ちなみに、QNEでの高度の呼び方は、7500フィートとは言わずFL075(FLはフライトレベル)となります。

    というわけで、ふだんの飛行ではQNHとQNEが重要となっています。なお、他にQFEというのがあり、飛行場の高さを高度0とするセッティングです。ソ連の飛行機が主に使っていたらしく、ドイツの地上軍を攻撃するときに地表からの高度が一発でわかるQFEが重宝だったのかな?なんて想像したりします。

    ではでは。。。

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