燃料給油口破損。悪魔の液体ガソリンとの闘い
2019年1月からの新法規に従ったELT(緊急通信設備)(B8)の装備も終わり、やっとせいせいしてひとっ飛びしたある朝、無事格納庫に飛行機を入れて、帰り際にガソリン給油、とおもったら、バリッ!と給油口が折れて取れちゃった!
ぼくはそんな怪力の持ち主じゃないのですが、なぜこんなことが起きたのか?幸い翼下の点検口を検査するとタンク本体はぜんぜんOKであることが確認でき(というか、ちょっとでも穴が開いたりしたらガソリンはたちまち漏れ出し、翼内、機内がじゃぶじゃぶになってしまうので簡単に気が付きます)。つまり、翼外に突き出た部分が風圧,湿気、そしてとくに紫外線にやられて劣化してしまっていたのでした。
タンクそのものを取り換えるという翼の骨格をいじるような大手術にならなかったのは不幸中の幸いですが、残った給油口をどのように再生するかが課題になり。
こよーて(RANS SUPER COYOTE)のタンクはポリプロピレン樹脂にガソリンを透過させない成分を混ぜて作った特製品(純正品)ですが、この成分が一般のプラスチックと違い接着、溶接を許さないため、修理工と検討した結果、いわゆる「手袋」という手法を使うことにしました。つまり、折れてしまった給油口をTecnyl(これもガソリンに耐える繊維素材)で自作し、残った給油口に差し込むということです。写真左が修理工のにいちゃんと検討した概念図。右が給油口の内径、外径、高さ、ねじ山などをその通り復元した部品です。
次のステップは、差し込んだ部品を外側からグラスファイバーで覆いこみ、抜けないようにします。外側から、というのはなるべくガソリンに触れないようにするためです。オートバイなどでグラスファイバー製のタンクがないことはないですけど。
キャップから突き出ている管はガソリン通気口です
こうして給油口側面はファイバーで締め込み、下面はもともとあった羽布のプラスチック補強材にねじ止め(その上にまたファイバー通したので写真では見えません)し、必要な強度を保つようにしました。
その後塗装し、さらに補強のステンシルと、ガソリン規格提示のステッカーを張って完成。
ちなみにこの円形AVGASステッカーは、カルダスノーバス空港(D3)に行ったとき、給油車のお兄ちゃんから「これを貼っていないと給油許可できないケースがある」と教えてもらった教訓をもとにアメリカのオリジナルステンシル画像から作成したもの。
燃料タンクは軽飛行機の泣き所で、ガソリンの浸食力にどうやって打ち勝つかとそれぞれの航空機メーカーが創意工夫しています。大別して、こよーてのような樹脂製、これは腐食しないがごらんのとおり一度破損すると修理が大変。あるいは金属製(航空アルミ)ですが、問題はどうやって密閉するかで、アルミ用ののりで張り付けたやつはいつかのりがガソリンにやられて穴が開き、じゃあ溶接すれば、となると溶接部分が腐食して穴があく、という厄介な部分と、そもそも飛行機の安定性と乗員への安全を考慮すると主翼内に入れるしかなく、メンテが必要になったとき、とくに金属製の飛行機では大変な大手術になってしまうことです(布張りの場合は鋼管数本を外し、羽布を切り取り、再縫合・接着で済むのでまだまし)。
そして今回とにかく気を使ったのが「タンク内に埃や不純物を入れないこと」。できる限りテープなどで給油口をふさいだのですが、そうもいかない工程もあり。そこで電気掃除機を持ってきて、修理工のおにいちゃんががしがしやっているところをぼくがういんういん掃除機で吸引しました。
50年代にもどったか?みたいな掃除機。でも静かで高性能でした
一旦タンクをカラにし、抜いたガソリンは飛行機での使用はやめてかぶと虫(自家用車)行きにするなど、ガソリン関係は果てしない注意が必要で、泣きました。
その後プリフライトチェックで入念にドレン(E3)するなど、安全第一で飛んでいます。
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