離陸
飛行機が一番飛行機らしい一瞬。人類は、エンジンの発明によって、空気より重い飛行機を空に飛揚させ、鳥のように自由に飛ぶことを可能にさせました。グライダーも翼をもっていますが、ウインチや飛行機にけん引してもらわないとうまく空に上がれないし、気流の状態によってはそれほど飛べずに着陸になります。すなわち、飛行機のエンジンこそが多少風が吹こうが力強く飛行機を空に持ち上げ、人間を鳥たちの友達(E9)にすることができました。
エアボーンの一瞬
でも、草創期の飛行機はエンジン出力が弱すぎ、エンテ翼機といって尾翼の代わりに前翼のついた飛行機、つまり現在の飛行機だったらあたかもバックしているような飛び方をしていましたが、これは主翼だけでなく前翼も揚力を発生させることができるため。
右が進行方向です
揚力としてはマイナス(下向き)であり、非力なエンジンでは許容できない抵抗やデッドウエイトとなる尾翼形式の飛行機は、やっとブレリオXIが出現したあたりで実用的になってきました。
1909年、ドーバー海峡を横断したブレリオ機
エンテ翼機は「負の安定性」を持ち、操縦が極めてシビアです。その代わり空気抵抗減少や重量削減に貢献できるので、現在でも操縦性などのマイナスを何とか設計でカバーした機体が数種作成されています。
さて上記は脱線ではなく。離陸という操縦ステップで必要なのは、一にも二にも「エンジンを知れ」ということに尽きるのです。離陸時はエンジン全開が普通です。全開でなくても離陸しちゃうピッツなどアクロ機もありますが、離陸出力でエンジンは猛然と暴れます。つまり、暴れるエンジンをいかに御するかが離陸のポイントなのです。
こよーて(ぼくの飛行機)の場合はぐっとブレーキを踏み込んで滑走路端に飛行機を固定しておき、スロットル全開、ブレーキが耐えられず機体が前にずるずる滑り出す瞬間にブレーキをリリースすると、ぐん!と走り出し、だいたい時速50マイル(80㌔)、滑走距離120メートルくらい、滑走開始から10秒くらいでエアボーンしますが、もう2秒くらい滑走路と水平に飛び、機体の安定する60マイルくらいまでスピードを上げてから、ぎゅーんと本格的な上昇に入ります。
離陸にもいろいろあり。ぼくがいつもやっているのが「スタンディングティクオフ」で、短い滑走路の場合に有用。ローリングテイクオフというのがあり、これは滑走路端でいちいち止まらずにそのままエンジン全開で滑走していくというもので、そのぶん滑走距離は食うが、後ろに何機も離陸待ちをしていていちいちストップ、スロットル全開、滑走開始なんてやってたら怒られちゃう場合に多用されます。
「ソフトフィールドティクオフ」があり、一刻も早く前輪を浮揚させ、いわゆるバイクのウイリー走行のようにして滑走します。機首上げで前面投射面積が大きくなり、多少滑走距離が延び低速での安定性が損なわれますが、前輪式飛行機の弱点である「前輪引っ掛かりによる前転事故」を防ぐために有効です。不整地の場合とても重要で、「前転事故」を防ぎたいために、現在でも農業用機等不整地で離着陸する飛行機は尾輪式が主流だったりします。
1000メートル級の大きな滑走路(E8)だと、離陸しても
眼下でいつまでも滑走路の終わりがこなかったりします。
ソフトフィールドテイクオフでは、前輪のみでなく機体の浮揚する速度ぎりぎりで操縦かんを引いて機体を地面から離しちゃいます。まだふらふらして心もとないのですが、ともかく地面から離して地表の凹凸による事故を避けるためです。こよーてのようなEXPERIMENTAL機が離着陸する滑走路は未舗装の短いもの(600メートル以下)多く、普段からスタンディング・ソフトフィールドテイクオフを心がけています。
さて、滑走で重要なのが「滑走路の中心をまっすぐ走る」です。そのためには、まず滑走路端にいる段階で、中央分離帯にぴたりと機軸を合わせる必要があります。
ところが、これがなかなか難しく。自衛隊の新人訓練などを見ていると、このせいでエリミネートされそうになったりする人もいるらしい。
海上自衛隊殺人調教物語https://www.youtube.com/watch?v=c4j8gkIbJUo
皆さんがいつか自家用機で操縦するときのために「ぜったいセンターラインを外さない必殺技」を伝授します。
ポイントは、上の写真と、下の写真におけるセンターラインの見え方にあります。
両方見比べて、あれ、下の方は飛行機が右によってね?という印象を受けますが、どちらも正しくセンターラインに乗っています。
ひみつは、カメラの位置にあるのです。上の写真は、機体の中心から撮影しているので、センターラインは画面の中央、機軸にピタリと沿って伸びていきます。一方、こよーてのほうはサイドバイサイドの左にある機長席から撮影しているので、あたかも機軸がセンターラインの右になっちゃってる?ように見えるのです。なぜこれで正しいのかというと「操縦者の両ひざの間にセンターラインが収まっているから」なのです。科学・生物学的なからくりは知りませんが、セスナなどサイドバイサイドの飛行機にはすべて通用するのでぜひ覚えておきましょう。
離陸失敗の多くが滑走や離陸直後にセンターラインとその延長腺を保てず、滑走路をはみ出しちゃうなど。離陸はしたのに横風などで横倒しになり、目の前ででんぐり帰り畑に激突、という事故も目の当たりにしたことがあり。さいわいパイロットは無事で、飛行機を修理してまた飛んでいます。ははは。。。。
センターラインは両ひざの間、というのがわかったところで、滑走と離陸でこのラインから外れないようにします。このためには、上記で繰り返したとおりエンジンパワーを御する必要があり。具体的には、エンジンが強いほど、でかいプロペラほど機首を左に振る(E4)ので、右ラダーを踏み込んでまっすぐ機軸を保つ必要があります。
もう一つ重要なのが横風。上記に合わせて、滑走路上で刻々とかわる横風に対応して、ラダーを踏み込みます。強い風でも一定していればよいのですが、乱気流のように荒れ狂う場合はあえて前輪(と機体)を上げず、60マイルになるくらいまで操縦かんを抑え気味にしてタイヤで直進を保つケースもあり。重要なのが、風上に向かって旋回するような心持ち(地上を離れてからも重要)で操縦かんを倒し、風上側の翼を下に傾け、乱気流であおられて上記のようにでんぐり返し、墜落とならないように用心する必要があります。ただ難しいのは操縦かんを倒しすぎると、今度はアドバースヨーと言って機首が向くべき方向の逆に振られちゃうことがあるので、あくまで「こころもち」です。
文章にするといかにも難しそうになってしまいましたが、これも何度もやっていくうちになにげにできるようになります。
あと離陸で忘れるな!なのは、離陸して100フィートでスロットルを緩めること(でないとエンジンが焼き付く)、そして200フィートでフラップを上げること。離陸時のフラップは滑走前に1ノッチ(段階)だけ下げて置き、揚力を稼ぎますが、離陸後はわすれずに翼に格納するようにしましょう。
地上からふわりと浮かび、風を翼にいっぱいうけて上がって行く離陸はぼくの一番大好きな瞬間です。
長くなりました、ではでは。。。。
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