ピトー管
飛行機は失速速度以下では墜落、超過禁止速度(VNE)では空中分解なので、速度計はなにより大切な航空計器。ピトー管が写真左のように動圧(白)と静圧(黄色)の空気圧の差を赤色のセンサーで感知し、速度計に伝える仕掛けです。
免許取りたての頃、るんるん♪離陸しながら計器チェック:燃料圧(B2)OK、エンジン回転OK、ラジエター温度OK、さいごに速度計時速0キロ、えっ?もう一度、0キロ?
うあぁあーと一瞬背筋が凍りましたが、こよーて君(愛機の名前)は元気に上昇をつづけており。はっと気づいたのですが、ピトー管にかぶせてあった埃よけのキャップを外し忘れていたのですね。なあんだ、あやうく速度計修理で大金が吹き飛ぶところだった、なんて安堵しながら着陸経路に戻り、エンジン回転3600でフラップ1、3000でフラップツー、と回転計で調節しながら着陸しました。
まあ、計器故障時の訓練ということで、計器盤に蓋をされて教官にいじめられた経験が役にたったということですね。訓練の時は学校の飛行機で飛んでいたので、失速しないように、とエンジン回転を上げて教官に怒られましたが、自分の飛行機で飛んでいると、スピード出しすぎで機体に風圧がかかりすぎるのがいや!ということでついスロットルを緩めたくなっちゃうのでした。人間って、現金ですねえ。
速度計。緑色の線が安全速度。黄色は乱気流のないとき、注意しながら飛んでよい(というか、飛行時間を短縮し、思わぬ天候急変などの隙を与えないために飛ぶべき)速度。赤が「だめ!絶対!」の超過禁止速度(VNE)。ぼくはだいたい100~110の間で飛ぶようにしています。白い線はフラップを降ろしてよい速度です。
皆さんがいつか操縦したときのための虎の巻として:誘導路から滑走路に向かう段階で、ちょっとだけスピードを上げてみましょう。速度計の針が敏感に動いて、上の写真の20ちょっと前、写真では隠れている0の表示が見えるようであればOK。もしぴたっと止まったまま動かない場合は、いったんストップしてピトー管に何か詰まっていないか確認してみましょう。実際ちゃんとカバー外してあるのに巡航でも40しか表示しなかったことあり、めんどいなーと降りて、ピトー管を確認したら、安全弁が埃でなぜか固着していた、なんてことがありました。もっともそれぞれの機体の特性あるのであくまで参考程度です。ぼくの機体はRans Super coyote (E2)です。アメリカ製なので速度計はマイル表示です。(時速1マイル→時速1.6キロ)
スピードは飛行機の生命で、高度は安全を決定します。失速すれば落ちちゃいます(B9)が、高度が高ければ故障しても滑空で速度を保ちながら安全な場所を選定し不時着することができるからです。もし、神様がパイロットに「お前の飛行機には計器を一つしかつけてやらん。選べ」と言われたら、パイロットはこう答えるでしょう。「速度計。でも高度計もちょうだーい!」
ちなみに、速度にもいろいろあり。速度計が計測しているのは「対気速度」で、文字通り機体に進行方向から当たっている風の速度。でも、もともと追い風、迎い風などあり。要注意は迎い風で、風のある分飛行機が後ろに流され、いつまでたっても目的地に到着しない、でも燃料はどんどん消費され。。。と焦ったりします。これは向かい風だと「対地速度」が落ちてしまうからです。いろいろな速度、いろいろな高度については、別途記事にします。
黎明期の複葉機パイロットは「なにが速度計じゃい!スピードは顔に当たる風で計るんじゃー!」と密閉風防に反対したそうです。初期の速度計は精度が悪くあまり使い物にならなかったらしい。現在でも、こよーてに装備されているような簡素なやつは、ピトー管がスピードを「察知」してから速度計に反映されるまで1秒くらい?時間がかかり、高速時や乱気流下ではこれを織り込んで速度を低めに設定する必要があります(つまり、VNE近くを表示している瞬間に、実はVNEを超過していた、などの危険性がある)。
今回はこのへんで。ではでは。。。
黎明期の飛行機が吹きさらしの操縦席だったのは、
パイロットが風を読むためだった
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