鳥も飛行機も、翼によって揚力を得て、飛んでいます。
どちらもつばさですが、飛行機の主翼がまっすぐ伸び切った状態で固定されているのに比べ、鳥の翼は自由に折りたためるようになっています。
鳥の手の骨格は、人間に比べて羽ばたくのに特化して進化したことがうかがえます。
https://www.city.kasaoka.okayama.jp/site/kabutogani/24359.html
鳥の場合、指は親指、人差し指、中指しかありません。
その一方で、手の甲の骨(手根骨、中手骨)が異様に発達しています。
これが、のちに述べる飛行機と鳥の翼の違いに大きくかかわってくるので、覚えておいてください。
さて、飛行機の翼は、翼上面と翼下面を通る空気の流れに圧力差を生じさせて、圧力の低いほうすなわち上方に飛行機を引っ張る、吸い上げる、押し上げるという仕組みになっています。
http://www.jsme-fed.org/experiment/2010_2/002.html
圧力差の作り方ですが、黎明期は単に平べったい板に迎角をつけて、だったのが、湾曲をつけた、いわゆるゲッチンゲン翼になり。現在では翼内に燃料タンクや主脚を格納できる厚翼型が主流になっています。
https://japaneseclass.jp/trends/about/%E7%BF%BC%E5%9E%8B
飛行機が実現可能になったのは、揚力と推力を分けるというひらめきがあったから。
レイノルズ数など、いろいろな定理によって、羽ばたきによって前進ができるのは大きくても鷹だのなんだの(隊長1メートル、翼長3メートル)までであり、人間みたいな重たい生き物を飛翔させるような巨大な翼になると、少なくとも人間の科学力、技術力ではとても羽ばたきなんて不可能ということがわかり。
*要すれば、体がでかくなるほどレイノルズ数の作用によって羽ばたきより滑空が効率的となり、逆に昆虫レベルになるとほとんど常時羽ばたいていないと飛べなくなるらしい。225 ›ð’à ›Ífià9.2 (jst.go.jp))
つまり、エンジンで飛行機を前進させ、生じた向かい風を翼にあてて揚力を得る、という分担によって、はじめて飛行機は飛べる物体となりました。
一方、鳥はどんなかというと。
翼のみで、揚力と推力を生み出しているのでした。
鳥の翼は、胴から手のひらの付け根までは、ブレリオ機みたいなゲッチンゲン翼型をたもち、揚力を発生させ。
そこから先の、手の甲から指先までの翼をうまく使って推力を生んでいるのでした。
バドミントン/シャトルコック/羽毛球の飛行 (fc2.com)
推力を受け持つ「初列風切羽」は、上に羽ばたいたとき、風圧で隙間が開き、うまく抵抗が出ないように空気を逃したうえで、下(斜め下)に羽ばたくときは、ぴたりと閉じて、巨大なうちわみたいに前進のための推力を生むことができたのでした。
この間、揚力を受け持つ「次列風切羽」はいいぐあいにゲッチンゲン翼型を保つらしい。
新たなる飛翔伝説~鳥類の翼 | 川崎悟司 オフィシャルブログ 古世界の住人 Powered by Ameba (ameblo.jp)
効率としては、やっぱり翼はぜんぶ揚力に使って、推力はエンジンで。。。。という方がいいですけど。
というわけで、鳥と飛行機は、揚力という面では、根本は同じ原理を共有しているのでした。
深いところで分かりあっているのですね。
京都人と大阪人の間柄みたいなものかもしれん。
というか、翼というものはみんな同じ原理を共有しているんじゃないの?
いやいやそうとも言えないんですよ。
鳥や、特に飛行機では絶対にうまくいかない原理で飛んでいる、恐ろしい生き物がいるのです。
その名も「昆虫」
昆虫も翼を持っていますし、鳥や飛行機と同じく翼により揚力を生み出しています。
でも、昆虫の翼は、体に比べて小さく(蝶みたいな、でかい翼のもいることはいる)鳥や飛行機と同じやり方だと、到底飛ぶことはできない。
そこで、昆虫たちが編み出した揚力発生の秘法があり。
それが「渦」です。
乱流です。飛行機を失速させ、墜落に導く剥離気流です。
ぎゃあああー!
飛行機が揚力を得るためには、いかに渦を作らず、翼に沿って滑らかに気流を導くかが勝負となっており。
以下の図で説明するとわかりやすいと思いますが。。。
スバリズムレポート第2弾「航空機はなぜ飛ぶのか?〜飛行機が飛ぶ原理とは〜」 | スバルショップ三河安城 愛知県 (chubu-jihan.com)
- が、いい感じに飛んでいる状態。
- になると、翼の後部上面にうまく気流が流れてくれず、その分揚力を失ってしまい。
この状況でも飛べることは飛べるが、制御不能一歩手前の恐ろしい状況。
さらに悪化するとこうなります。
翼の上面全体に剥離が広がり、乱流の渦によって揚力はかき消され。
待っているのは墜落です。
というわけで、飛行機乗りにとって「渦」というのは呪いの言葉だったのでした。
さて、昆虫です。
昆虫の翼に、どんな感じで気流が流れているのかというと。。。
生物を規範とした超小型飛翔体の空気力学的課題研究の発展と挑戦(その2) | Science Portal China (jst.go.jp)
渦だ?ぎゃあああー!
かぶと虫くんに聞いてみました。
「どうして昆虫の翼は渦がでまくりなのに、飛べることができるの?」
その答えは
世界の名車かぶと虫
ええええ?
以下の学術論文に詳しく書いてありましたが。。。
「昆 虫飛 行 の 流体 構 造 連 成 モ デ リング* (第1報,自 動的な翼の回転 と揚力発生の 2次 元数値解析 による検討)」 _pdf (jst.go.jp)
難解な文書であり、結局なんのことかわからなかったのですが、昆虫が揚力を獲得する秘法らしきものとして
「マ グヌス効果と 同 じ原理で発生す る(回 転循環)」
と書いてあり。
マグヌス効果というのは、くるくる回っている円筒や球体に気流が当たると、その気流がすさまじい渦を生み。
https://en.pic2.work/r/liveplus/1590900370/
上の画像では、ビール缶みたいなやつがくるくる回っていますが、その回転と気流の作用で、渦が缶の左下から左斜め上に抜けていき。その結果、缶には下向きの「揚力」が発生して、下に向かって押し下げられるそうである。
この作用を活用したのに「ローター船」があり。
ローター船
https://japaneseclass.jp/trends/about/%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%82%BF%E3%83%BC%E8%88%B9
4本の煙突みたいなやつがローターで、これらがくるくる回ることで、本当に前へ進むことができるらしい。ただし、スクリューと併用、というのが主流らしいですけど。
昆虫たちは、なんと翼でこのローターセイルと同じ、というかそれを凌ぐ効果を生み出しているらしい。
要すれば、渦が生み出す空気の動き?圧力?によって、翼、そして体を吸い上げ、浮き上がらせているということらしいです。
ううむすごいな
具体的には、「前縁渦」というのがあり。
InsectFlight – 千葉大学|生物機械工学研究室 (chiba-u.jp)
鼠色の「物体」が昆虫の体で、それを取り巻くいろいろな色のやつが翼とその前縁流らしい。
もうちょっとわかりやすいのを見つけました
なぜ昆虫は飛べるのか? – 蚊の特殊な飛行メカニズムが明らかに | academist Journal (academist-cf.com)
これが「蚊」になると、「後縁渦」というのまで生み出すらしい。
なぜ昆虫は飛べるのか? – 蚊の特殊な飛行メカニズムが明らかに | academist Journal (academist-cf.com)
こうして、昆虫たちはホバリングのすさまじい反復によって空中に静止したり縦横に飛んでいる。
きっと、深いところでヘリコプターと分かり合っているのだろう。
ところで、すべての昆虫がぶんぶん羽ばたいているかというとそうでもなく。
トンボは、あまり羽ばたかなくて、滑空したりしています。
こちらは、渦だけど飛行機の主翼みたいに作用しているという、いよいよわけのわからないからくりですが、長くなるので、別の記事にします。
ー0-
小さな軽飛行機で飛んでいます。
そのへんを飛んでいると、ふと鷹が横によってきて、目があったりします。
また前上方から下方に風防をかすめて滑空していく鳥もおり。
なんか鳥たちの世界を覗くことができたかも?なんて幸せの一瞬です。
鳥に比べたらとてもぶきっちょな飛び方しかできない飛行機ですが、人間にとってとても大切な発明かなと思っています。
ではでは
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