謎の傑作機KM2

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どんなパイロットも必ず乗ることになる飛行機で、それも一度や二度ではなく、教官にしばかれながら、なんとか一人で乗りこなせるようになるまで我慢づよく付き合ってくれる頼もしい奴。それが練習機です。

練習機そのものとして作られる場合もありますが、自家用機として大人気になり、それを聞きつけた各国が喜んで練習機として購入するケースもあり。今回は、どちらかと言えば後者に属するビーチクラフトボナンザと、その日本版である富士KM2について投稿します。

まずはボナンザから。

時は第二次大戦中。日本が竹やりでB29をやっつけようとしていたそのころ、アメリカではすでに戦後を見越して「大人4人と手荷物が積める、自動車のように手軽で快適な軽飛行機。単葉・全金属製・水平対向エンジンを採用、斬新なデザイン(V字尾翼配置、美しい窓周り、モダンな内装)、小型軽量化など、新しい時代に合わせた、小型ながらも豪華な高速機(Wikipedia)」の設計製作が進んでいたのでした。

その結果、1947年にはV字尾翼のボナンザ・モデル35が初飛行し。その後、いろいろなユーザーの要望をくみ上げながら、通常の尾翼に変化したデボネアボナンザなど無数のモデルが生まれ。富裕層の高級な自家用機として現在もいっぱい飛んでいます。

(上)竹槍訓練https://www.reddit.com/r/HistoryFans/comments/5gozmt/japanese_soldier_training_women_to_defend_the/

(下)ボナンザ モデル35 https://www.kshs.org/km/items/view/853

 

 

この過程で、練習機型のT34メンターが生まれました。こちらも「良好な操縦性と安定性、そして荒い使用にも耐える頑丈さから傑作練習機との評価が高く、初飛行から50年以上を経た現在でも練習用として使用(Wikipedia)」されています。

練習機型のT34は、タンデムシートのかっこいい低翼単葉機です。日本でも、富士重工がライセンス生産しました。

ボナンザ(上)https://www.portaldoaviador.com/a-historia-do-beechcraft-bonanza-model-35/

とT34メンター(下)

http://www.avgeekery.com/mentor-beechcrafts-t-34-primary-trainer-well-played-gamble/

 

 

この経験から、富士重工は独自にその発展形であるKM1(陸自向け)とKM2(海自向け)を生産。今日の記事はKM2をお題としています(KM1もそっくりだけど)。

では、ここからアメリカの名機ボナンザをいかにして日本的に洗練していったかについて記載します。

まず、風防です。

ボナンザ(上)https://www.airteamimages.com/beechcraft-35-bonanza_D-EECA_-private_328761.htmlとKM2(下)富士KM-2研究 Study of the Fuji KM-2 (hikokikumo.net)

 

 

なぜ青がえるにしてしまうのか?

青がえる。東横線などで活躍した。(相鉄線かも?)

https://kumamoto.keizai.biz/headline/117/

 

 

気を取りなおして、側面のスタイルいってみます。

ボナンザ(上)https://flyteam.jp/photo/3662925とKM2(下)富士KM-2研究 Study of the Fuji KM-2 (hikokikumo.net)

 

 

トヨタのAAじゃん

スバルじゃないけど

Toyota AA – prvé auto vyrobili ešte pred vznikom automobilky | TOUCHIT

 

 

なぜこうなるのか?

これは、日本海軍じゃなかった海上自衛隊による使用方法と密接に関連しており。

海自の場合、基本サイドバイサイドの双発機、四発機を運用しており。機長と副操縦士が隣り合って座る感じにしないと都合が悪かった。

別にふつーのボナンザでいいじゃん?とは思うのですが、こういうぶっといピラーに四角いコクピット(丸みはあるけど)にしないと、天井に「いかり」を格納できないためらしい。

いかり?

海自の飛行機は、みんな錨を装備しているのです。

US2飛行艇の例

空飛ぶのになぜ“錨”つき? 飛行艇「US-2」の船っぽい“神装備”とは | 乗りものニュース (trafficnews.jp)

 

もちろんLM2に錨というのはうそですよー

では、なぜあんな冴えない、ダサくて、かっこわるい、ぶきっちょな、どう考えても誉め言葉がみつけられない、ボナンザの設計者が見たら卒倒しそうな、だれが見ても日本人にしか見えない、どうしようもないかわいそうなスタイルになったのか?

どうやら実戦配備になったときの実機になるべく近い雰囲気にしたかったらしい。

一式陸攻(上)https://benriyanekonote.sakura.ne.jp/issikirikukou.htmlとKM2(下)https://blog.goo.ne.jp/kazusisiren/e/a026b369f9a5d35852c576a290c36a09

 

 

なっとくしました。

KM2は4人乗りで、前には正副の操縦士としての役割を学ぶ訓練生。後ろには精神棒を構えた教官と、行き過ぎて死人が出ないように監視している米海軍のSP(Shore Patrol)がセットで搭乗していたそうです。

*もちろんうそですよー

 

ただ、全てうそとも言えない部分もあり。いじめに耐え兼ねた自衛隊隊員が、KM2を奪って飛び去り。結局今日まで行方不明という事件もあったそうです。

*この事件については、Wikipediaに詳しく書いてあります→自衛隊機乗り逃げ事件 – Wikipedia

すみません行方不明は陸自のLM1でした

http://hikokikumo.net/His-Mil-LM1-00000-index.htm

 

 

スタイル自体は各人の主観なので、ぼく自身は意外にいいじゃん、と思っていますが、性能や耐久性、強靭さは、やっぱりアメリカの冠たる高級軽飛行機メーカービーチクラフトの自信作、単発機の帝王であるボナンザを受け継いで、リムジンのような重厚な飛行機だったと聞いています。

ボナンザは、航空大学校で2020年まで練習機として使われるなど、文句ない世界の名機です。超高価なボナンザを無数に購入して練習機として使うことのできる日本は、やっぱり超大国だなーと素直に感心しています。

ぼくはブラジルに住んでいますが、ブラジルの場合ロクに練習機を買う金もなく。こともあろうにアルゼンチンから「アエロ・ボエロ練習機」を空軍だったかがまとめて購入してブラジル国内各地の飛行クラブにばらまいたという謎の過去があります。

なぜかアルゼンチン製の練習機アエロボエロ

https://www.airliners.net/photo/Aeroclube-do-Rio-Grande-do-Sul-ARGS/Aero-Boero-AB-115/806867

 

 

脱線ついでに、ブラジル政府はアエロボエロ購入の費用をねん出するため、パラグアイへ輸出している中古自動車に対する税金を充てようとしたのですが、ブラジルから大量にパラグアイへ輸出されている中古車は、両国民の駆け引きによって税金のかからない方法で出荷されていたため、政府は仕方なくどこか別の財源に変更したという話があります。

ブラジルとパラグアイにまたがる「友情の橋」。 https://www.memoriarondonense.com.br/eventos-single/construcao-da-ponte-internacional-da-amizade-foz-do-iguacu/32/

 

 

ブラジル全国から盗まれたじゃなかった取得された中古車がこの橋を渡ってパラグアイに輸出され、パラグアイの経済発展に貢献したらしい。

*訳が分からなくなった人はこの記事をご覧ください→微笑みの街ストロエスネル

本題に戻ります。

現在でもボナンザ乗りはアメリカをはじめ一目置かれる存在です。そんなボナンザを乗りこなすカッコイイ日本人パイロットのブログがあったので、リンクしときます→LA Flighrt Diary

世界の名機ボナンザを、これでもかとデフォルメし、似ても似つかぬゲテモノにしてしまった富士重工。でも、性能低下はぜんぜんなかったということですから、そこに日本の技術力が光っているのだと思います。

なんておちょくりまくっているように見えますが、KM2の、アートで、見る者の目を引き付けるふしぎなスタイルに魅了され、いつかプラモの一つでも組み立ててみたいなと思っています。

 

ではでは

 

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