日本とイランの懸け橋となった日章丸
*今回は、戦後の緊迫する中東情勢の中で世界をあっと言わせ、「海賊とよばれた男」で映画化された事件についてのお話です。
1950年代。
世界大戦の結果、独立国として認められたイラン。でもどうやって経済を維持していくのか?世界有数の産油国だけど、はっきり言ってそれしか、のイランには石油の輸出が生命線となっていました。
ところが、石油の採掘、販売は石油メジャーすなわちイギリス資本に握られており。例えば10円の儲けが出てもイラン側には1円しか転がり込まず。残りの9円はメジャーがごっそり持って行ってしまうのでした。
これじゃ生きられん!と石油資源開発の国有化を断行したイラン。
なんてことない、自分の家の庭で作ったなすやきゅうりを自分の手で売って、儲けも自分の懐に入れます、と同じごくフツーのことなんですけど。。。。
でもイギリスは激怒。
メジャーを通じないで、イランから直接買うやつは許さん!となり。海軍を派遣して、イラン直売の原油を運ぶタンカーを拿捕する挙に出ました。
危うし新生イラン!
この事態に、義憤にかられた日本人がいました。その名も出光のおっちゃん。
「まるでABCD包囲陣だ!他人事じゃないぞ!」
ABCD包囲陣というのは、アメリカ、イギリス、中国、オランダの悪だくみのことで、結託して石油を日本に売らないようにしたため、日本は切羽詰まり、真珠湾攻撃(と東南アジアの油田占領)というキチガイ沙汰に至ったことは、学校で皆さん習っているとおりです。
イランの場合は売る方ですが、経済の生命線を絶たれることに変わりはなく。
出光さんは、遂に決意します。「わしも石油屋じゃ!メジャーの言いなりにはさせんぞ!」
メジャーなんてほっといて直接イランから石油を買ってしまえ。
でも、イギリス艦隊が待ち受けるホルムズ海峡の、レーダーや哨戒機うじゃうじゃの近代ピケット網を突破しなけば。。。。
ううう、と頭を抱えうなだれる出光さん。
そのとき、じりりりりん、と電話が鳴り。
秘書嬢からお取次ぎ。「似道(にみち)さんからお電話です」
そんな奴いたっけ?まあ出てみよう。
と、いかにもアメリカなまりの外人さんの声で
「お前が民族系石油のボス、イロコワだな?お前のやろうしているキチガイ沙汰をうまく実現させてやるぜー」
「イロコワじゃねえ!出光だ!てめえ似道かニンジンかしらねえが、ふざけんな!いてまうでごるああああ!」
「ヘイユ―、ニンジンちゃう、ニミッツあるね。お前らジャップとは太平洋で面白いボコりあいをしたから、その縁でお前らがイギリスを出し抜いてもシカトしてやると言っているんだよ。バカで偉そうなイギリスの植民地主義者に一泡吹かせてやろうじゃないか」
ふむ!と感触を得た出光さん。
その後いろいろあって、日章丸というタンカーを仕立て。こっそりとイランにガソリン買い付けにやらしたのでした。
映画「海賊と呼ばれた男」での日章丸。画像出展は
http://fuseishoyo-roku.cocolog-nifty.com/blog/2016/12/post-50ee.html
帝国海軍生き残りの船長はじめ、猛者ぞろいの船員たちに操船され、イギリスの艦隊が待ち受けるホルムズ海峡へ、さびしくお使いに行かされた日章丸。
はたしてその運命は?
ホルムズ海峡への航路には、戦時中ドイツにジャガイモを輸送した日本の潜水艦が通過した海域もあり。艦長じゃなった船長はじめ、どの辺が浅瀬で、イギリス軍艦が接近を嫌がるかとかに精通していたため、無線封鎖をしたうえで、わざとこういう難所ばかり選んで航海したのでした。
ちなみに、ドイツへ潜入した日本潜水艦は、ジャガイモをあげる代わりにロケット戦闘機の設計図をもらって帰ってきましたが、これは余談です。
ドイツの「コメート」
http://asasdeferro.blogspot.com/2016/08/messerschmitt-me-163-komet.html
日本版「秋水」https://i.pinimg.com/564x/9d/6f/00/9d6f006c1b71705ba2acd1a8837bd908.jpg
船長から訓示
「我々は、これから鬼畜米英によって沈められたわが輸送艦の墓場を通過する。総員が粉骨砕身努力し、帝国海軍伝統の技量を発揮せよ。本日天気晴朗なれども波高し」
と、Z旗を勇ましく掲揚して、かどうかはともかく、勇躍、人の嫌がる難所に飛び込んでいったのでした。
その時英海軍は。
実はホワイトハウスからのGSOMIA(機密情報協定)情報が入っており。巡洋艦隊を海峡の出口に展開していたのでした。
艦橋に陣取るイギリス司令長官に、参謀から連絡。
「長官殿、人工衛星からの写真を現像しました」
「フムン。でニッショーマルとかいう不審な工作船は写っていたのかね」
「粗製乱造の米国衛星なので画質が悪すぎ、なかなか判別できませんが、タンカーらしきものに、下駄、メガネにキモノを着た人夫と思われる陰影が多数写っております」
「中国人かもしれんぞ」
「マストに向かって『たちしょん』をしているとしか思えない陰影も写っています」
「全艦に指令。日本のタンカー発見。浅瀬から抜けて、我々でも操艦できる広い場所に出てきたら、夜のうちにレーダー射撃で沈める。朝のティー・タイムの前にやっちまえ」
「長官殿、なぜ日本人はこういうずる賢いまねをしようとするのでしょうか」
「参謀君、きみはウインザー侯爵家の出だったね。私はサーの称号を得るまではしがないフリーターだったのだよ」
「ふりいたあ、でありますか?」
「簡単に言えば無職ということだ。でだな、貴族は不労所得のあるお金持ちだから、コンビニに行ってもお金を払って賞味期限内のおにぎらずを買うだろう」
「このまえ賞味期限が切れていたのを発見したので、店長につっかえしておきました」
「まさにそこなのだよ。私のような貧乏人は、そういう賞味期限切れのやつを、裏口からこっそり店長に恵んでもらって生きて来たのさ」
「つまり、日本のタンカーも裏口からこっそりやろうとしているのですね」
「そういうことだ。ううむかわいそうに、他人とは思えなくなってきた」
と、そのとき。
ごごごご。。。と目の前の海が隆起し。
くじらか?とおもったら、突如原潜が巡洋艦の目の前に出現。
原潜の艦橋に現れたニミッツ。
「ヘイユ―、いままで気が付かなかったのかい?あいかわらずとんまだな」
激昂する英司令官
「なにおこいつっ!こそこそ隠れていやがったくせに!言っとくがアメリカのバカ空母みたいに、目の前で中国のクズ原潜が浮かびあがっても気づかないようなスカタンとはわけが違うからな!」
「まあまあこまかいこといわんと、一緒に楽しいことをしないか?」
尻込みする英司令官
「突然BLか?そんな趣味はないぞ」
「おまえといっしょにするな!甲板を見ろ」
巨大な潜水艦の甲板には、ブラジルから連れてきた数十人の美女と、山と積まれたバーベキュー用の肉や酒が。
おおおおー!大歓声の上がるイギリス艦隊。
おやおやという間に、潜水艦のまわりは艦隊から漕ぎ寄せるボートでいっぱいに。
みんなでサンバパーティーだ!美女と踊り狂い、バーベキュー食べ放題の楽しい親睦が始ったのでした。
ちょうどその横を、日章丸がそそくさと通過していったのに誰も気づかず。
サンバパーティー
https://www.youtube.com/watch?v=fVidhHZfbrw
無事にイランについた日章丸。石油メジャーにいじめられていたイランの人々から大歓迎を受け、ガソリンをたくさん積んで、日本に帰ってまた大歓迎を受けたのでした。
怒り狂ったイギリスは日本をいじめようとしましたが、ホワイトハウスから「石油はみんなのものだよ?そうだよね?」と無言の圧力があり。みんな、つまりアメリカのものである石油はイギリス資本が独占できるものではないことが明らかになり。
ホルムズ海峡(出展はhttps://www.nikkei.com/article/DGXKZO46145120U9A610C1EA2000/)
アメリカも、自分は表舞台に出ないでイギリスの独占に風穴を開けることに成功したのでした。
これは決して荒唐無稽な作り話ではなく。もちろん面白おかしく脚色していますが「日章丸事件」として本当にあった事件をもとにしたフィクションです。
日章丸の航海は想像を絶した困難なものだったそうで、「日本輸送船の墓場」では「夜明けになってなにげに航跡をみたら、沈没船のマスト二本の間を通過していた。沈没船の残骸に船底をひっかけてこちらも沈没にならなかったのは奇跡だった」みたいな「まさに戦没の英霊が日章丸の壮挙に呼応して加護した」結果の成功だと思います。
一方で、米英の駆け引きにも否応なく巻き込まれたと考えます。出光さんや日章丸の勇気、世界政治・経済状況が絡み合っての結果だと考えています。
真面目な日章丸のお話はこちら→日章丸事件(Wikipedia)
ではでは。。。
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