以下、二つの対照的な滑走路を提示します。あなたが軽飛行機パイロットだったら、どちらが着陸しやすいとお考えでしょうか。
その1 小さな飛行クラブの滑走路。ときどき飛行学校の練習機が飛んでいるくらいで、トラッフィクがなく閑散としている。諸元は以下の通り
標高3200フィート、960mくらい。
全長600メートル、全幅6メートル。
滑走路番号03‐21
*この番号は、滑走路がどの方角に伸びているのかを示しており。03-21というのは、コンパスの30度から210度、つまりほとんど南北、という感じになっています。
https://www.asahi-net.or.jp/~TX6F-NKMR/map/map-02.html
その2 ジェネアビの重要なハブ空港。エアラインは乗り入れてないけど。諸元は以下の通り。
標高3300フィート、1000mくらい。
全長1499メートル、全幅18メートル。
滑走路番号14‐32
*こちらは140度から320度ですから、東西に延びている感じ。
さて、軽飛行機パイロットのみなさんにとって気になる風向と風速ですが、サーマルで風が強くなった時で20ノットくらい。卓越風の風向は110度、南東から北西へ吹いています。南半球の滑走路です。
その1は丘陵地の底から丘の頂上に向かって登っていくような、かなり勾配のある滑走路で、離陸は滑走路番号03から谷底に向かって真っ逆さまに落ちていく感じ。着陸は21の方から坂道を登っていく感じで降ります。
ちょっと左右にそれるとたちまちコースアウトしそうな滑走路
誘導路に入ったところ。
彼女の身長は155cmです。滑走路の幅は3人分もうちょいで6メートルとしました。
田舎過ぎてだれも正確な寸法を知らないのだった。
ぼくが乗っている軽飛行機(LSA)の全幅が10メートルなので、翼は滑走路からはみ出してます。ははは
こんな飛行機に乗っています
その2は、平べったい大豆畑の端っこみたいなところにあり、東西どちらからでも離発着できる勾配の少ない平らな空港です。
全幅18メートルなので、それほど広いというわけでもないけど、その1に比べたら3倍。飛行機がとても小さく感じます。
見渡す限り伸びてゆく滑走路と格納庫群。
ここまで書くと、絶対その2の方が離発着しやすいよねー、だって
その2は、その1の2.4倍の長さ、幅に至っては3倍の広くて長い滑走路で、その1みたいな急こう配・谷底に降りていくような着陸は不要。視界の開けた平原だし、その1が常時真横からの横風着陸になるのに比べて、その2はほとんど機首からの向い風を利用できる。
というわけで、その2の圧勝だ!と思われるかもしれません。
でも、正直のところ、その1の方が降りやすかったりするのです。
えええどうして?
まず、その2から説明していきます。
SIQEというのがこの空港の名前です。画像で空港の直上は藪みたいな感じ。空港の直下を道路が走り、畑や住宅が見えています。
これが何を意味するのかというと、空港の下側は確かに平べったく。しかし、上側はちょうど平野の境界線、言い換えれば崖になっていて、がけ下からの乱流が吹き上げてくるのでした。ははは
そして、滑走路自体は広くて長いのですが、写真の滑走路左端すなわち滑走路番号14、季節風に従って通常の着陸を行う端っこの先が、これまた変な窪地になっていて、こちらは吹き上げるというより、ここを通過すると浮力がなくなって急に機体が落ち込むので、わああー?とスロットルをふかして沈下を止め、そのうえで今度はスロットルオフ、機首下げですべりこみ、いい感じで滑走路番号を通過してラウンドアウトを始めたころあいで、今度は左のがけ下から吹いてきた乱流で、うあああ?と機体が持ち上げられてしまい。
画面の左から中央下が谷みたいになっていて、
乱気流が滑走路(白い箱つまり格納庫がいっぱいみえるところ)に吹き上げています。
ここで慌てずに操縦かんを止めればよいのですが、行き過ぎてつい前に倒してしまい。
その結果、乱流が終わった地点で今度はすとーんと落っこち。
そこで、わあああー!と機首上げ(迎角増による揚力増大。滑走路上なのでエンジンはほどんどオフ)してしまうのですが、これで下降が止まった、と安心した途端に、第2波の吹き上げ地点に差し掛かってしまい。
ぎゃああー!とつい機首下げをしてしまったときに、今度は揚力を一気に失って、どちん!と落着になってしまいます。
へんな機首下げを繰り返していると、スピードが落ちずに地面にぶつける感じになり、びょーんと跳ね上がったところで揚力を失って前輪で地上に激突、という、要すればポーポイに陥ってしまうのでした。
何度も離着陸を繰り返し、降下経路のここで沈み込み、滑走路上ではこことここが吹き上げだな?とわかって、沈み込みのところはちょっと高めで通過し、滑走路端を主脚でこするつもりで、心持ち機首上げで通過、吹き上げが来ても機首は下げないで、すとーんと落ちたときはぐっとさらに機首を上げてこらえる。これを計2回(3回の場合もある)繰り返すと、ちょっと機首を上げすぎか?みたいなかんじで、どしん(うまくいけばすとん)と主脚から接地するので、あとは操縦かんを引ききってなるべく前輪が落ちるのを遅らせることで、ぶざまだけどまともな?着陸ができるようになりました。
ただ、これは早朝の気流が穏やかな時の話で、10時から午後2時の、サーマルが荒れ狂う時間になると、滑走路上で木の葉のようにもまれてしまい。中心線上に着地するために、カニみたいに斜めになって風上の主輪での1輪着陸せざるを得ず、主脚によくないので、寝坊した日は来れない空港になってしまっています。
もっとも、これは空港が悪いのではなく、飛行機が小さすぎるのです。
こちらの空港に着陸が想定されているのは、ビーチクラフトのターボプロップ機とか、要すればハイソサエティーの乗る、ずっしりした高級なやつで、多少の吹き上げなんか気にしない、みたいなのばっかりなので、文字通り吹けば飛ぶような布張りのピストン機なんて知らないよ~ん、ということらしい。
ハイソサエティーの自家用機ビーチクラフト https://merkmal-biz.jp/post/40506
かなり乱気流のあった日にこいつがぐわーんと降りてきて、滑走路の端っこに接地したと思ったら、プロペラの向きを逆にしてぐわーんとすごいブレーキをかけ。例の吹き上げが始まる地点の前で無理やり停止しやがったのは、やっぱりこれだけでかくて重い飛行機でも、この滑走路における乱気流は嫌だったのかもしれん。
脱線しました。ではその1が意外とらくちんだぞ?について説明します。
こちらは、以下の着陸動画がすべてを語っていますが。。。。
https://www.youtube.com/watch?v=rImSZuVaHFA
一番わかりやすいのは(といって動画だとあまり地形の起伏や遠近が伝わらないのですが)、01:03のファイナルレグで、左側の小山にぶつかるようにして降りていきますが、滑走路末端はまだはるか下にあり。要すれば谷というか山というかの斜面をこするようにして降りていくところです。
言い換えれば、滑走路の末端が三方丘に囲まれているということであり。
崖の上にあるその1の滑走路が下からの乱流吹きさらしになっているのに比べ、こちらはこれらの丘がいいぐあいに乱流を遮って、滑走路上はたいてい穏やかになっているのでした。
降下中はこれらの丘に気流がぶつかって、わあああー!と揺れますが、スロットルの押し引きで乗り切り、滑走路末端に滑り込めば、そこから先は楽になるということである。
というわけで、こちらは滑走路の幅が飛行機の翼の幅より短いというふざけた滑走路ながら、ぜんぜん逸脱せずにふつーに着陸できているのでした。
また、谷底というかすり鉢の底というかが滑走路端ということは、そこから先はきつい登坂になるわけで。うまく着地さえできれば、ブレーキなしでも自然に飛行機の行き足がとまって、停止してくれる。乱気流で接地点を先延ばしにしなければならないような日には、特にありがたいです。
クラブの仲間が滑走路の末端(下のほう)での写真を持っていました。飛行機と滑走路の大きさに注目。
素敵女子とお散歩した時の写真はこちら。
この勾配が幸いして、離陸は、下り坂の上から下へ滑走路が飛行機を放り投げて加速してくれ。いい感じで離陸できています。
こういう話は、じっさいに飛行機を操縦しないとわからないだろうなーなぜアメリカがジェネアビに力を入れているのかがこういうところに出ていると思います。日本にも、既定路線のエアラインだけじゃなくて、へんてこな滑走路でいろいろくふうして飛んでいるジェネアビの関係者がもっといれば、航空産業全体の発展に寄与すると思っています。
ではでは。。。。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。