突然ですが、ちょっとつぶれたうぐいす餅の画像です
なんか「ひよこ」みたいなうぐいす餅だなあ。
銘菓「ひよこ」
さて、この「うぐいす餅の絵」は売りに出されているとのことで、調べてみたら
1億6000万円
だそうです。
えっ?あれ?
160円じゃなくて、1億6000万円?
リート等に投資して、配当年率6%達成できたら、年間で900万円が不労所得で自動的に入ってくる金額、ということですよね?
あはは?あはははは?
ひゃらひゃらひゃらひゃら。。。。
ううーむ。
気を取り直して、続けます。
この「緑のひよこ」はうぐいす餅ではなくて、エルズワース・ケリーという人の作成による「緑・白」という作品だそうです。
エルズワースさんは、他にもいろいろなのを発表しており、
Ellsworth Kelly: White Curves, 2001. Photograph: courtesy Fondation Beyeler, Basel
Ellsworth Kelly photographed in March 2006 at the Serpentine Gallery in London with the painting Green Relief over Blue, 2004. Photograph: Eamonn McCabe/The Guardian
Ellsworth Kelly: Red Yellow Blue II, 1965. Photograph: Milwaukwee Art Museum
Ellsworth Kelly: Yellow with Red Triangle, (1973). Photograph: courtesy Corcoran Gallery of Art
ううむ、非対象絵画ですね(オブジェもあるけど)。
非対象(対称ではない点に注意)絵画と言えば、ぼくだったらこれです。
マレーヴィチ 黒の正方形(1915年)
たしかにこっちだったら、1億円の価値があるんでしょうねえ。
買いますか?買いますよ。ただし、100億円の金融資産があったらですけどね。ははは
とここまで読んだみなさん。
「なんで電車色の四角形に1億円の価値があり、うぐいす餅の絵には1億円は出さないと言えるんだ?狂ったか猫機長?」
と思ったのではないでしょうか。
昔の電車はこんな色でした。出展:https://2nd-train.net/topicsphotos/id/9211/
たしかに似たような絵ですよね。。。
四角いから1億円、丸いのはだめ、ということではなく。マレーヴィチの絵を1億と言ったのは、相応の理由があるのです。
マレーヴィチさんが生まれ育ったのは、帝政が崩壊して共産主義革命が荒れ狂った時代のロシアでした。
この当時、マレーヴィチやカンディンスキーといった「絵画の革命家」たちが、「抽象画」という新たな美術ジャンルを開拓し。それまで、神様なり、有名人なり、歴史の物語なり、なんらかの対象を描写した具象画から、対象ではなく絵そのものが美術となっている「非対象絵画」が生まれました。
具象画(左)「真珠の耳飾りの女」と抽象画(右)「連続」
具象画か?それとも抽象画か?日本人にしか描けない一枚。
すみません写楽さんのは脱線です。
抽象画は、これまでにない形での表現としての純粋美術に道を開くものであり。世界の美術史にコペルニクス的転回をもたらした恐るべき絵画でした。
美術史の大事件の中に「最後の未来派絵画展0.10」があり。
1915年、ペトログラード、現在のサンクトペテルブルグで行われた「最後の未来派絵画展0.10」において、「黒の正方形」は、ロシア人から見て室内で一番神聖な場所である、壁の対角線の天井すぐ下に展示されました。
この絵画は、「写実からすべてをそぎ落として純粋な美術の核のみが残ったその結果だ」として、「新しい絵画の0地点」と呼ばれるようになりました。
しかし、ソ連が建国されると、「共産主義の推進が唯一の絵画の存在価値である」そして、絵画によって「労働者を社会主義精神に添うように思想的に改造し教育する」、そのためには絵本のようにわかりやすい写実的な絵物語としての絵画、すなわち「社会主義リアリズム」の時代となり、マレーヴィチなどの「ロシア・アヴァンギャルド」は弾圧されてしまいました。
このへんは、ソ連の仇敵ナチス・ドイツでも同じような軌跡をたどり。革新的な芸術は「退廃芸術」と弾圧され、やっぱり「絵本のようにわかりやすい、教育(洗脳)のための道具」に退化してしまいました。
強圧的な独裁政権が、いかに美術を破壊するかということですね。なお、ソ連の場合は「旧ソ連ポスター」のように、美術的にもすごいぞ!というのが弾圧を上手にかいくぐり多数作成されましたが、それはまた別の記事にします。
退廃ではない芸術。
アドルフ・ヒットラー 「ウイーン国立歌劇場(1912)」
マレーヴィチさんは投獄の憂き目にあい。なんとか釈放され、体制と妥協した絵を描いたりして生きのびました。でもやっぱりうまく弾圧をかいくぐりすごい絵を描いたりしています。
さて、「黒い正方形」に戻ります。
この絵は
◎世界の美術史において、抽象画誕生というターニングポイントを刻んだ記念碑的な作品であること
◎作者であるマレーヴィチが、弾圧、投獄を生きのび、最晩年の作品「自画像」にまで「黒い正方形」の精神(魂)を表現していること。
などから、ぼくにとっては、1億円の価値はあるのではないかと判断する、ということです。(もちろんオリジナルであればです。複製は、現代の技術だったら簡単ですよね。。。)
一方、「緑・白」の方は、1億6千万というにはそれなりの理由があるのでしょうけれど(オリジナリティーとか、哲学的、政治的、歴史的価値)、めんどいので調べませんでした。
絵画の価格が決まるというのは、まあそういうことである。
ちなみに、世界の金持ちがなぜ高い金を出して美術品(ここでは絵画)を買うかというと、
◎持ち運びしやすい。邸宅とかは持ち運べず、共産主義者が革命を起こし、占拠されたら終わりです。絵画であれば、額から外し、くるくる巻いて(巻けない絵もある)、共産主義者が襲ってくる前に脱出し高跳びが可能です。
◎しっかりとした資産価値がある。バンクシーみたいな、今どきのやつはともかくとして、ゴッホだのフェルメールだのという永きにわたって名声を得ているのは、純金と同じく、オリジナルであれば価値を失うことはない。表面の額面は変動しても、本来の価値に見合った金額と必ず交換できる。
◎当然ながら腐らない。牛や馬がオークションにおいて恐るべき高値で落札されたりしますが、せいぜい何年かで死んじゃい、消滅します。クラッシクカーやスーパーカーはもっと長持ちするが、やっぱりメンテが大変。この場合絵画は、劣化防止などには気を使うが半永久的に保存が可能である。
つまり、絵画とは、価値基準、流通手段、価値貯蔵の3機能があり、かつ世界のどこでも通用するオールマイティで、かつインフレによる目減りもないというすごい貨幣つまりお金そのものだったのです。
というわけで純金やワインなどとならんで大富豪好みのコレクションアイテムになっています。
でも、フェルメールさんやマレーヴィチさんがこの状況を見たら、ふむむなんかずれてる?というかもしれません。
だって、絵画って、本来は投資用の金融商品じゃないもーん。
というわでけ、お金じゃないんだ!この絵が好きだから、値段に関係なく買うんだ!という、絵そのものの価値を見てほしい、認めてほしい、見つけてほしい、というのではないかと思います。
そして、美術の本当の価値とは?については、別記事(美術の実用性)で書いたので、ご訪問ください。
一方、現在は、投資対象としての絵画とは別に、インターネットなどで多数の作品が同時多発的に多数の人たちに共有できるようになっており。つまり、美術館で2mX2mもある巨大な作品を、おおおこれが点描図法か!なんて現物を裸眼でみてはじめて価値がわかる巨匠の大作の他に、新たに、勝るとも劣らぬアートとして、アメブロやはてなブログで、ふつーのOLやアートインストラクターさん、市井の画家さんとかが描いた水彩や、油彩、パステル画などなどが発表されており。こうした絵を見つけて、すごい優しさいっぱいだ!思わずいいね!と「ぽちって」しまう。この方が、エルズワースさんの「緑・白」よりずっと美術品として「いいね!」と思います。
くどいけど
エルワーズさんの方は:貨幣。金融資産。ふむふむ。
mi.kaeruさんの絵は:美術。絵。わくわく!
ということだと思います。
mi.kaeruさんて誰?アメブロでフォローさせていただいている「パステルシャインアートのベーシックインストラクター」の人です。
あと、ここには書かない秘蔵っ子として、「えみにゃーさん」がおり。秘蔵っ子なので、気が向いたら公開するかも?しれません。
mi.kaeruさんの作品を掲載して、本稿の結びといたします。
ランタン
いやしのパステルアート☆ミカエル(mi.kaeru)
https://ameblo.jp/yoko201305/entry-12643559355.html
ではでは。。。
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